よき暇と/よき孤独を持ち/最低ではあるが、食うにことかかぬ。そうだとすれば、申し分ないではないか-。「申し分ない暮らし」と題するこの詩の作者は、旧浪岡町出身の農民画家常田健。今年が生誕110年、没後20年の節目▼年の瀬は毎年のように「あっという間だった」と1年を振り返っている。新型コロナウイルスの流行で暮らしの在り方が変わった今年。慌ただしさにかまけて顧みる時間を持たなかった身に、常田の言葉が染みる▼生涯を農民として生きた常田は、晩年に世間の注目を浴びてもなお、絵を売らずに過ごした。時にユーモラスに力強く表現されるのは、土と共に生きる純粋な喜び▼アートが富裕層の投機対象となる現代に、常田の美学は際立つ。SDGs(持続可能な開発目標)が国際的に求められる今、一人一人が「申し分ない暮らし」を考え直すことの意味は大きい▼常田の作品を基にしたモニュメントが今秋、浪岡にある常田の美術館に設置された。久しぶりに足を運び「よき暇」の中で内省の時間を過ごしてみたい。