80年の歴史を持つジャズの名門レーベル「ブルーノート」。そのツイッターが先月末から紹介する近作の楽曲群には共通項がある。いずれも警官による黒人への暴行がテーマ▼黒人音楽として生まれたジャズは、米国をむしばむ人種差別問題と向き合ってきた。1939年のスタンダード「奇妙な果実」の題名は、リンチされ木につるされた黒人の遺体を指す▼先月25日、黒人男性が白人警官に暴行され死亡した事件。抗議デモは全米に広がり略奪や放火も相次ぐ。犯罪行為は許されないが、単に横暴と切って捨てきれないのは背景に黒人差別の長い歴史があるから▼対岸の火事だろうか。中傷を受けたレスラーの木村花さんが亡くなった問題。あるいはコロナ禍における県外ナンバーをめぐるネット炎上。米国ほど問題が激化しないのは人種国家としての成り立ちの違いで、「いじめ」の差別意識はわれわれにもある▼差別克服のヒントをジャズに求め、音楽家菊地成孔さんが価値観の相違を信仰心になぞらえた言葉を思い出す。「21世紀を平和にしたければ道は一つ。異教徒を愛するしかない」。