東京五輪・パラリンピック組織委員会は22日、五輪の開閉会式でショーディレクターを務める元お笑い芸人の小林賢太郎氏を解任したと発表した。過去の反ユダヤ的発言を問題視したという。19日には、音楽制作担当だったミュージシャン小山田圭吾氏が、過去の雑誌インタビューで障害を持つ同級生へのいじめ行為を告白していたことが問題となり辞任したばかり。23日夜に開会式が迫る中での異常事態。新型コロナウイルス禍で賛否両論がある中、ようやく開催にこぎ着けた五輪。世界最大のスポーツの祭典は、同時に平和の祭典でもある。これ以上、誰も傷つけられることなく、大会が催されることを願うばかりである。
 問題視されたのは小林氏が「ラーメンズ」として活動していた1998年のコント。600万人が犠牲になったとされるナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺「ホロコースト」をやゆする動画がインターネット上に拡散され、批判が高まっていた。米国の反ユダヤ活動監視団体サイモン・ウィーゼンタール・センターも「どれだけクリエーティブな人物であろうが、ナチスの大虐殺の犠牲者をあざ笑う権利はない。この人物が五輪に関わることは、600万人のユダヤ人の記憶を侮辱し、パラリンピックを残酷にあざけることになる」と厳しく非難した。
 五輪関係者の発言に伴う辞任劇は、今年に入ってから相次いでいた。2月に組織委会長を務めていた森喜朗元首相が女性蔑視発言で引責辞任。3月には大会式典のクリエーティブディレクターだった佐々木宏氏が、出演候補の女性タレントの容姿を侮辱する演出案を出したことが批判され辞任した。今回、開幕直前に辞任・解任となった2氏との違いは、在任中の発言か、それ以前の発言か、だろう。五輪に携わる身でありながら、その立場を自覚せずに第三者を蔑視、侮辱するとあっては、当然ながら批判は免れまい。一方で今回、職務を去ることになった2氏に関しては、20年以上も前の行為である。
 もちろん、被害者に心の傷を残すいじめ行為やそれを自慢げに語ることは決して許されることではないし、多くの命を奪ったホロコーストをやゆした小林氏の発言は論外だ。これがなぜ大会直前の今になって露見し、今回の事態に至ったのか。“身体検査”の甘さを指摘する声もあるだろう。組織委の橋本聖子会長は「後手後手の対応を反省している」とした一方で、自身の去就を問われると辞任を否定した。世界が注目する大会で相次ぐ辞任・解任劇は、日本や日本人に対するイメージを失墜させかねない大きな問題であり、途中登板とはいえ責任は免れない。新型コロナの不安を抱きながら、血のにじむような努力を重ねてきたアスリートたちの足を引っ張るようなことはやめていただきたい。