自転車の安全な利用を促そうと、県は本県初の自転車条例を今年度内に制定することを目指している。条例では、交通安全教育の充実のほか、自転車保険への加入促進が柱の一つと位置付けられている。
 自転車保険への加入が重要視される理由の一つは、全国的に自転車利用者が加害者となった高額賠償事例が見られること。大きな交通事故といえば、自動車によるものを思い浮かべがちだが、自転車の利用者が事故を起こし、1億円近い賠償を命じられたケースもある。保険に加入していなければ、対応は極めて困難だろう。
 さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「新しい生活様式」が求められる中、国は自転車移動を推奨している。確かに、時間帯によっては混雑し、「密」の状態が生じやすい公共交通機関の利用を控え、自転車で通勤・通学することは感染防止に有効な面はあろう。しかし、一方で、利用者増加に伴う事故多発の可能性を指摘する声もある。
 こうした背景から、県は自転車の安全な利用を促そうと条例制定を目指し、自転車保険への加入も促進する方針を示している。
 自転車保険で代表的なものの一つがTSマークの付帯保険だ。日本交通管理技術協会の検定に合格した自転車安全整備士による点検を受け、マークを貼ってもらうことで、傷害補償や賠償責任補償などが付帯される。
 TSマークについては、弘前市内の学校でも取得、1年ごとの更新を指導するなど定着しつつある。自転車は生徒たちが日常生活で頻繁に使う移動手段。安全に利用してもらうためには、TSマークは必要不可欠なものである。
 ただ、ここで注意しておかなければならないこともある。事故にはざまさまなケースがあり、TSマークの付帯保険だけでは対応し切れないものもある。
 TSマークの付帯保険で補償が適用されるのは、あくまでマークが付いた自転車による事故。自身の自転車が加入していても、マークを貼っていない自転車を借りて事故を起こした場合、補償を受けられないのである。さらに、賠償責任補償の適用は、相手に重度の後遺障害を負わせた場合に限られる。
 自転車を安全に利用するには、まずはTSマークを取得することが大事だ。このように呼び掛けられても、TSマークの付帯保険について、しっかり認識していなければ、その効果を発揮できない恐れもあるのである。
 乗っている自転車に関係なく、契約者が事故を起こした際に補償される保険もあり、業界団体の関係者は自転車店などに相談するよう呼び掛けている。自転車は身近な移動手段。県の条例制定を契機に、保険についても理解を深めたい。