11月の米大統領選に向けた最初の直接対決となるテレビ討論会が29日に行われ、共和党候補のトランプ大統領と、民主党候補のバイデン前副大統領が激しい舌戦を展開した。これまでのトランプ氏の言動を見ると、ある程度予想されたとはいえ、両氏が繰り広げた非難、中傷の応酬には、各メディアも「見るに堪えない」「史上最悪」などと一斉に批判した。
 約90分の討論会では、新型コロナウイルス対応、黒人差別問題など、米国が抱える課題について互いに意見を述べた。現時点で劣勢とみられるトランプ氏は形勢逆転を狙って、バイデン氏に目を向けて激しく攻勢をかける。対するバイデン氏はトランプ氏の資質を批判するが、カメラの先の視聴者に向けるように語る。スタイルの違いを印象づける「動」と「静」の構図だが、それも次第に崩壊していった。
 新型コロナについてバイデン氏は、深刻さを認識しながら国民に知らせなかったとし「彼(トランプ氏)がパニックだったか、株式市場を気にしていた」と対応を非難。トランプ氏は自身でなければさらに被害が広がったと主張するとともに世界的流行は「中国のせい」とし「(民主党を含む)州知事の大半は私が素晴らしい仕事をしたと称賛している」と実績を強調した。黒人差別問題で「差別的憎悪をあおった」と詰め寄られたトランプ氏は、反論とともにバイデン氏を「過激左翼の言いなり」と批判した。
 トランプ氏はバイデン氏の発言をたびたび遮り、司会者にいさめられるほどヒートアップ。バイデン氏も「いい加減に黙ってくれ」「史上最悪の大統領だ」「道化師」などと吐き捨てるなど、いら立ちを隠し切れなくなっていた。トランプ氏の挑発的発言を、バイデン氏から冷静さを奪う策略とみることもできなくはないが、多くはいつもの「トランプ節」と見たのではなかろうか。
 討論会のはずだが、議論はかみ合わず、当選後の政策を訴えるよりも相手を蹴落とすことに終始。国民無視の泥仕合に、メディアや識者は「司会者はプロレスのレフェリー役を担った」「有権者にとって災難」などと酷評した。熱狂的支持者を除けば、米国民の多くも品位のないショー、あるいはエンターテインメント番組のように思ったのではないだろうか。もし日本で同様なことがあれば、有権者は双方に「不適格」の烙印(らくいん)を押すのではないか。
 米CBSの世論調査によると討論会の勝者はバイデン氏48%、トランプ氏41%。トランプ氏の反転攻勢、バイデン氏の支持固めとも不発に終わったようだ。米国でのことではあるが、誰が大統領に就くかは、同盟国の日本にも少なからず影響する。討論会は10月15、22日にも行われる。次回は「本当」の討論を見せてほしい。