新型コロナウイルスの感染が拡大する中で迎えた73回目の憲法記念日。自由や最低限の生活、教育といったさまざまな権利が脅かされている昨今、憲法に対する国民の関心も高まっている。新型ウイルス問題で浮き彫りとなった多くの課題について、国会は冷静に議論すべきだ。
 安倍晋三首相は3日、憲法改正推進派の民間団体のオンライン集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せ、「緊急時に国家や国民がどう役割を果たし、国難を乗り越えるか。そのことを憲法にどう位置付けるかは極めて重く大切な課題だ」と指摘。国会に対しても緊急事態条項創設の是非を議論するよう求めた。
 実際、えたいが知れないウイルスへの恐怖から、政府がもっと個人や事業者の行動を制限する必要がある、との声が一部にある。
 しかし「未曾有の危機」を理由とした議論は避けるべきだ。政府の権限を強化することは私権の制限につながる。民主主義の根幹に関わる問題であり、慎重かつ冷静な議論が必要だ。
 首相と同調し、自民党も「危機下での国会機能維持」を改憲の新たな論点に加え、国会での議論を求めている。
 例えば本会議を開催する場合、憲法は「総議員の3分の1以上の出席」が必要と規定しており、国会議員に感染が広がれば本会議開催の条件を満たせなくなる恐れがあり、条件見直しを挙げている。「感染拡大によって選挙を実施できない場合、国会議員の任期を延長すべき」とも訴える。
 これに対し野党は、与野党の隔てなくコロナ対応に集中すべきだとの立場で、国会での議論に応じる考えはない。国民民主党の玉木雄一郎代表も1日の記者会見で「新型コロナが落ち着いた静かな環境で進めていけばいい」と語った。
 まったく同感である。不測の事態への備えは重要だが、だからこそ平時から冷静な議論を重ねておくべきだ。
 改憲よりも重視すべきは、教育を受ける権利の危機的状況だ。自治体の一部は生徒全員に端末を渡してオンライン授業を導入しており、教育格差が生まれようとしている。文部科学省は早急に均衡策を講じるべきだ。
 教育現場が対応に苦慮していることは理解している。県内は県立学校が7日から再開される見込みだが、地域によって感染者の有無で再開時期が異なったり、再び休校したりする可能性は否定できない。各学校、各教師の取り組みの違いが、格差を生んではならない。
 我慢を強いる「同調圧力」を背景に、自粛要請に従わない行動を非難する動きも問題だ。事業や雇用を守るため、あえて営業を続ける選択もあるだろう。欠けているのは休業への補償であって、生存権を脅かす事態に国家としてどう向き合うのか、議論が不十分だ。