新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、開催をめぐる検討が行われていた東京五輪・パラリンピックについて国際オリンピック委員会(IOC)は、臨時理事会を開き、当初予定の今夏から、1年程度延期することを承認した。トーマス・バッハ会長が安倍晋三首相と電話会談を行い、日本側からの提案を受け入れた。これにより、大会は遅くとも来年夏までに開催することになる。
 東京五輪をめぐっては、IOCが予定通りの7月に開幕する方針を示したものの、世界保健機関(WHO)がその後、「パンデミック(世界的流行)が加速している」と表明。新型ウイルスの感染拡大が世界的に続き、収束が見通せない状況にあることから、複数の国内オリンピック委員会(NOC)や代表選手らから、次々と延期を求める声が上がり、IOCが延期を含む検討を行うと表明していた。
 過去に戦争による中止はあったものの五輪の延期は今回が初めてとなる。「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など、さまざまな差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」とするオリンピックの理念をいま一度、かみしめた時、延期という判断をせざるを得ない現在の状況を嘆かずにいられない。世界最高レベルのアスリートたちの躍動に心を躍らせようとしていた国民の一人として率直に残念に思う。また観光、文化、交流と、さまざまな場面での波及効果が期待されてきただけに、返す返すも延期という現実を目にすると、やりきれない思いがする。
 だが、東京五輪は中止ではない。延期である。この違いは大きい。むしろ現在の新型ウイルスに感染しないかどうか、その恐怖に包まれている状況の中で、大会を開催することを良しとする人は、それほど多くはいないのではないか。
 延期承認の報道がなされてから、国際競技団体や選手からは延期を歓迎する声が相次いでいる。選手、観客、大会関係者のいずれもが、最善の環境の下での開催を願っていることに違いはない。今回の延期の判断は、やむを得ないものと理解できる。
 だが、選手だけでも1万人を超える参加が見込まれる世界最大のスポーツイベントである。延期となるに当たって、さまざまな課題や障害が待ち受けることになる。
 競技場の確保や他の大規模スポーツ大会と開催時期が重ならないような配慮といった大会運営面、選手の選考やコンディションづくりといった競技面、さらに宿泊施設の確保や交通機関の対応など、受け入れ態勢も見直す必要がある。関係者の英知を結集して、東京五輪の未来をより良いものにしたい。