中東海域での日本関係船舶の安全確保を目的とした海上自衛隊の護衛艦が、同海域に向け出港した。新規任務での護衛艦の海外派遣は2009年以来、11年ぶりとなる。
 今回の派遣は、イランの核開発計画をめぐって米国、イランの間に緊張、対立関係が生じる中、米国の強い求めに応じて政府が派遣を決めたものだ。ただ、日本と友好関係にあるイランを刺激しないよう、米国主導の有志連合への参加は見送る形で、日本独自の活動として派遣を決めている。
 そのため、防衛省設置法の「調査・研究」規定に基づくものであり、内容はあくまでも「情報収集」という、ある種の“あいまいさ”を内包したものだ。米国とイランの双方に配慮した結果で、新法制定を伴わないという点でも異例の海外派遣となる。
 今回は有志連合への参加を見送ったものの、バーレーンの米中央海軍司令部には連絡要員を派遣し、活動海域の治安情報を共有するなど、米軍と緊密に連携するとしている。もともと米国の求めに応じた派遣であり、もう一方の当事国であるイランが今回の日本の行動に対し、表面的には理解を示したものの、本心は穏やかならざるものが、あるであろうことは想像に難くない。
 活動期間は1年間で、延長には改めて閣議決定が必要となるが、日本も広い意味で、“イラン包囲網”の中にいる―とアピールしたい米国などは長期の活動を望むだろう。活動終了の時期について、河野太郎防衛相は「日本関係船舶の航行の安全に特段の懸念を抱く必要がない状況」と述べるのみで、具体的な見通しを示していない。活動の長期化を懸念する声も相当数ある。
 そもそも日本関係船舶の安全確保のための情報収集という任務の内容自体、不明確な点が多々ある。例えば、海自が得た不審船や海賊などの情報が連絡要員を通じて米軍に伝わり、それを元に米軍が攻撃した場合、海自も報復の対象となる危険性が包含されているのではないか。また、日本関係船舶が攻撃を受けるなど不測の事態が発生した場合は、護衛艦が自衛隊法の「海上警備行動」で保護する方針だが、武器使用などの強制力を伴う措置を判断するに際し、現場の混乱を招く懸念もあるだろう。
 中東情勢は米国によるイラン側要人の暗殺と、同国の報復攻撃で緊張が高まったが、現在は幾分、落ち着きを取り戻した感がある。今回の派遣は国会での議論も不十分との批判もある。十分な議論を経ない今回の派遣の判断は拙速ではなかったか。自衛隊の海外派遣という、慎重に慎重を重ねて判断すべきものが、既成事実の積み重ねにより、なし崩しになる恐れがある。海外派遣の在り方について、国民的な議論が必要だ。