県りんご試験場(現・県産業技術センターりんご研究所)で育成された「千雪(あおり27)」とされるリンゴの苗木が、中国のインターネット通販サイトで勝手に販売されていたことが分かった。
 千雪は2015年、中国で既に品種登録されており、同国内では産技センターの許可を得ずに栽培・販売することが禁止されている。
 商品の苗木が千雪だとすれば、同国へ不正に流出された可能性がある。今後は品種や流出経路を調べることになるだろう。外国人が苗木を無断で持ち帰るケースもあると聞くが、日本人も関わっていたとすればなお残念である。
 他県で開発されたブドウやイチゴの人気品種が、中国など国外で無断のまま生産・販売されていたことは、記憶に新しい。悪びれる様子もなく、逆に開き直った態度を取る当地の生産者たちには、育種に携わった人々の苦労と知的財産権を理解しようとする心を育んでほしい。
 今回の千雪は無論のこと、農産物の知財権の保護は重要だ。幸い千雪は中国で品種登録済みだったため、県側はこれらも根拠に、販売停止などの対抗措置を取ることができる。
 同国へ登録を申請したのは、苗木が国外に流出して、将来的に本県リンゴ産業へ影響を及ぼす事態を防ぐことが目的だった。現段階では“備え”が役立ちそうだが、相手側が対抗措置に従うとは限らない。ブランドを守るための、気が抜けない長期戦が続きそうだ。
 海外への品種登録は費用や時間がかかり、登録に二の足を踏んでしまう事業者も多かった。出願期間を過ぎてしまい、海外での生産・販売を差し止められないケースもあったと聞く。
 現在は、海外への品種登録や品種保護に必要となる技術的課題の解決を支援する、国の総合対策事業がある。日本の農産物の知財権保護と、農産物の輸出拡大につながればいい。
 千雪は、切ってもすり下ろしても果肉が変色しづらいなどの特長を持ち、特に料理や加工用での将来性を期待されている。食味自体も、台湾や東南アジアで人気のようだ。
 08年に当時の名称「あおり27」で一度品種登録されたが、県の登録料未納問題で登録が取り消される憂き目に遭った新品種の一つ。県は次善の策として、同品種の苗木が県外に流出しないよう、業者と協定を結ぶなどしていた。
 千雪は本格的な生産が始まってまだ日が浅く、生産量も多くはなさそうだ。この段階で、同じ名称を冠しただけの粗悪品が海外で出回ってはたまらない。
 県産リンゴの足を引っ張るのは海外だけでない。昨年産の早もぎ「トキ」が台湾で販売不振を招いていたことが先日の本紙報道にあった。一部が目先の高値にこだわると、後に全体に影響を及ぼす。