川崎市多摩区でスクールバスを待つ私立カリタス小学校の児童ら20人が殺傷された事件。防犯対策として集団での登下校やスクールバスが有効と目されていただけに、社会に大きな衝撃を与え、学校関係者は今後の対応に頭を悩ませているに違いない。難題ではあるが、それでも国や自治体、教育現場、警察、住民それぞれが何をできるか考え、社会全体で安全を追求するしかあるまい。
 集団での登下校などは、昨年5月に新潟市で小学2年の女児が殺害された事件を受けて文部科学省が取りまとめた「登下校防犯プラン」で、子どもを極力1人にしないようスクールバスや集団登下校の活用などを推奨した。
 同省の調査では、スクールバスを利用している小中学校は全国で約4700校で、特に地方での利用が多い。学校統廃合で校区が広がる上、防犯プランで推奨されたこともあり、欠かせない通学の足になっている。
 スクールバスを運用する川崎市内の別の私立学校は事件後、バス乗り場に置く教員を4人に倍増させて警戒を強化したという。ただ、教員の安全確保や負担軽減といった課題も抱える。
 地方自治体の担当者からも「正直、予算や人員には限りがある。何をすればいいのか、何ができるのか見えてこない」「新潟の事件を受け、1人歩き対策で安全のためバスを取り入れたが、生徒を集めても危険とは。結局はボランティアや保護者に頼るしかない」などの声が上がっている。
 学校や地方自治体が頼る防犯ボランティアだが、共働き世帯の増加や地域住民の高齢化などにより人員確保もままならないという。
 新潟の事件が起きた地域では、事件後に子どもの見守りボランティアが10人ほど増えたという。ただ、代表者は「地域によっては、ボランティアに対する関心が低い所もある」と、住民による自主的な活動の限界を指摘する。
 人口減少社会にあって、子どもの安全という視点に立てば“死角”は増える。ボランティアに頼らざるを得ない対策では、地域の意識の違い、人員不足といった個別の課題を解消する必要がある。
 文科省は5月29、30日に開いた会議で、全国の学校安全担当者に警察などと連携した安全確保に取り組むよう要請。見守り活動の支援強化などの検討を急いでいるが、具体策は示せていない。
 これについて防犯対策の専門家は「有効対策の一つは保護者の送迎だが、仕事で難しい親が多いのも事実。企業や職場がその影響を許容するよう、理解が進んでほしい」と訴える。
 社会全体での取り組みが欠かせない以上、保護者の送迎を認める仕組みを早急に検討してほしい。特効薬がない中で、一つ一つ対策を積み上げるしかない。