国会は論戦の舞台を予算委員会に移した。ただ、安倍晋三首相の安全運転に徹した答弁姿勢が際立つほか、閣僚の資質をただす質問も多く本格論戦には程遠い状況だ。消費税の増税など、もっと国民の関心が高い政策について議論を交わすべきではないか。
 まず、論戦を阻害しているのが新閣僚の資質を問うやりとりだ。片山さつき地方創生担当相は口利き疑惑に対して係争中を理由に説明責任を果たしていない。国会答弁でも事実関係を否定するだけで真相は不明なまま。さらなる疑惑も取り沙汰されており、このままでは内閣にとって致命傷になりかねない。
 桜田義孝五輪担当相に至っては、質問内容を理解できないばかりか、答弁書の数字も満足に読めず与野党議員から失笑される始末。首相は桜田氏の起用理由を「適材適所」としながら、「完璧な人間はいない」と苦しい言い訳を強いられる場面も。失格の烙印(らくいん)が押される日は遠くはあるまい。
 ただ、野党も新聞報道や週刊誌報道を引き合いに質問するケースが多い。導入部分で疑惑が事実か否か問うことは仕方ないが、党や議員本人が調査して明らかになった新事実を突き付けるぐらいでないと、いつまでも堂々巡りである。
 国民が国会に望むのは活発な政策論議だろう。その中でも意見が世論を二分する、出入国管理法改正案や消費税増税についてもっと時間を割くべきだ。
 まず入管法改正の理由が「国全体に広がる人手不足感」では納得できない。介護分野や建設業界、24時間営業のコンビニや外食産業で人手が足りないことは生活実感として分かる。しかし農業や水産加工業などは、その事業形態や規模によって必要な労働力も異なる。分野ごとに労働力が不足しているのか、不足している場合も海外の労働力がどれだけ必要なのかデータを示す必要がある。
 最も懸念されるのは、外国人労働者の増加による日本人労働者への悪影響だ。失業や賃金が下がるといった問題は本当に起きないのか。
 政府・与党は見直し条項などを条件とした拙速な審議は避けるべきだ。野党はもとより国民理解が不十分なままでは、文字通り将来に禍根を残しかねない。
 消費税の問題も、増税の必要性は理解しても、税金の使い道の適正化といった歳出改革に加え、国会議員の定数削減など政治家自身が身を切る覚悟を示すことが前提のはず。特に参院は時代に逆行し定数を6増している。期限付きの給与削減でお茶を濁さず、衆院と一体で定数削減に取り組むべきだ。
 1票の格差を解消する制度設計が困難なら、憲法改正の検討も必要だろう。むしろ選挙制度改革を改正論議の出発点にしてはどうか。政治家が身を切る議論なら国民の理解も得やすいはずだ。