自民党の岸田文雄政調会長が9月の自民党総裁選に出馬せず安倍晋三首相を支持する方針を表明した。これにより、総裁選は3選を目指す首相と石破茂元幹事長による、事実上の一騎打ちが濃厚となった。首相優位との見方が大勢だが、最大の焦点は地方票の動向だろう。
 今回の総裁選では首相の出身派閥で党内最大の細田派(94人)、第2派閥の麻生派(59人)、第5派閥の二階派(44人)が首相支持を早々と表明。さらに第4派閥の岸田派(48人)が加わり党所属国会議員405人の6割を固めたことになった。
 菅義偉官房長官も無派閥約30人を首相支持で取りまとめると見られている。第3派閥で態度未定の竹下派(55人)も「ポストが欲しければ首相を支持するしかない」(党関係者)。そうなれば8割の圧倒的勢力となる。
 ここで注目すべきは、今回の総裁選から党員・党友の投票を基に算出される「地方票」が、より重みを持つ仕組みに改正された点だ。1人1票の国会議員票と同等の比重にしたほか、決選投票にも反映される。
 改正前、地方票は「300票」に固定されていた。改正後は、党所属国会議員数に応じて地方票も変動する形となり、今回は議員、地方各405票の計810票で争われるとみられる。
 石破氏陣営にすれば、地方票で首相に圧勝し、それを追い風に決選投票で議員票を呼び込むしか手がない。石破派幹部は森友・加計問題を念頭に「国民は首相に飽きている。来年の参院選でどちらが党の顔になるのかを問う」と意気込む。党内でも地方で人気の高い石破氏が「地方票の7~8割を取れるのでは」との観測もある。
 それでも議員票の不利をはね返すには足りない。さらなる追い風を期待し、国民に人気の高い小泉進次郎筆頭副幹事長との連携も模索している。
 首相優位の情勢が強まる中、党内の関心は早くも総裁選後の内閣改造・党ポストに移っている。いち早く首相支持を表明した麻生太郎氏は引き続き副総理と重要閣僚を兼務し、二階俊博幹事長は続投、3年後の「禅定」を想定する岸田氏も党三役留任が濃厚だという。
 また、菅官房長官が24日の講演で、河野太郎外相と小泉氏の名前を挙げて「自民党や日本にとって大事な政治家だ」と発言したことも注目を集めている。
 首相の信頼が厚い菅氏の発言だけに、河野、小泉両氏の処遇がサプライズ人事になるとの見方もある。特に小泉氏が初入閣となれば、「選挙の顔」としての役割も期待できるという。
 首相が人事権や公認権をフル活用して総裁選で圧勝し、悲願の憲法改正に向かうことは既定路線になりつつある。そのシナリオ通りとなるのか、地方票の動向がカギを握ることになりそうだ。