安倍晋三首相と欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長が日EUの経済連携協定(EPA)に署名した。「反保護主義」を訴え、2019年の発効を目指すとしている。制裁合戦が続く米国と中国の「貿易戦争」などを踏まえれば、世界経済にとって署名の意義は非常に大きい。
 協定が発効すれば、人口約6億人、世界の国内総生産(GDP)の3割を占める広域経済圏が実現する。日欧は双方の貿易品目の9割超で関税を撤廃するほか、特許など知的財産の保護をはじめとするルールも整備。ワインやチーズなど欧州産食品は値下がりする見込みで、競合する国産品にも価格低下圧力がかかり、消費者は恩恵を得ることになる。
 ただ、喜んでばかりもいられない。協定発効に伴い農林水産業の生産者らが厳しい競争にさらされることになる。
 政府が昨年末に公表した試算によると、協定発効後の年間の生産減少額は約600億~約1100億円に上る。米国を除いた11カ国による環太平洋連携協定(TPP)の影響を含めると、最大2600億円も減少するといい、生産者にとっては死活問題だ。貿易促進の陰で自国の産業が衰退するのであれば、元も子もない。効果的な国内対策が求められる。
 幸い、EUは日本食への関心が高い地域。国産食品の販路を開拓し、輸出を促すことは十分可能であろう。そのためには現地消費者の信頼獲得が何よりも重要だ。昨今は、欧州で発祥した農産物の国際認証規格「グローバルGAP」を取得する動きが日本国内でも数多く見られる。食品衛生管理の国際標準「HACCP(ハサップ)」なども含め、導入への動きを加速させたい。
 協定発効に伴う負の影響は、とりわけ牛・豚肉や乳製品で大きいとされるが、長期的に見れば、その範囲は広がらないとも限らない。リンゴや米、野菜などを主とする本県でも対策を着実に講じるべきだろう。
 県内では一般生産者だけではなく、貿易自由化がさらに進むであろう将来を見据え、五所川原農林高校のように生徒たちがグローバルGAPについて学び、取得している例もある。卒業後に就農した彼らが県産農産物を積極的に欧州に輸出し、高い評価を得る日が来ることを期待したい。
 協定には、地理的表示(GI)保護制度に基づき双方のブランドを保護する措置が盛り込まれ、日本の対象48産品には、「あおもりカシス」「十三湖産大和しじみ」「小川原湖産大和しじみ」が含まれている。
 これは、本県産品の中にEU市場で高い評価を受けているものがあることを示す何よりの証拠だ。本県農林水産業は臆することなく、「攻め」の姿勢でブランド力を一層磨き、輸出を促進したい。