「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案が閣議決定された。政府は「共謀罪」法案が三たび廃案となった反省から、処罰対象をテロ組織など「組織的犯罪集団」に限定するなどした。今国会での成立を目指すとしているが、道のりは平たんではないだろう。
 共謀罪法案は2003年に初めて提出され、05年までに3度提出されたがいずれも廃案となった。当時は犯罪の合意や計画だけで罪に問えることになり、「既遂」や「未遂」での処罰を原則とする現行刑法の体系が覆りかねないことを中心に反対論が噴出した。600余りの犯罪に共謀罪を新設する内容に、「目くばせしただけで犯罪になる」「市民団体や労働組合も処罰される」といった批判が巻き起こった。
 こうした経緯を踏まえ、今回は謀議だけでは犯罪にならないようにするなど要件を厳格化し、対象犯罪を277に絞り込んだ。だが、野党は「捜査権乱用の懸念がある」と指摘し、市民団体からも「国家権力による恣意(しい)的な運用が行われ、市民の政治的自由が侵害される」といった不安が高まっている。
 批判や不安がなかなか払拭(ふっしょく)されないのは、これまでの政府の説明が曖昧なためだろう。組織的犯罪集団をめぐり自民党部会では、大学サークルによる集団婦女暴行事件が例に出された。法務省は「サークルは指揮命令系統がないため該当しない」との見解を示したが、出席議員から「体育会系は指揮系統がある」と指摘されるなど、十分な説明が尽くされたとは言い難い。
 普通の団体でも性質が「一変」すれば、組織的犯罪集団に該当するとの法務省見解も批判を招いている。安倍晋三首相は一変した例としてオウム真理教を挙げた。ただ、どの時点で犯罪集団となったかなど具体的な判断基準は示されていない。
 首相は1月の衆院本会議で「国内法を整備し、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結できなければ、東京五輪を開けないと言っても過言ではない」と断言したが、五輪招致に際し、こうした主張を聞いた人はどれほどいるだろうか。
 その後、テロ対策の重要性が増したことは確かだが、政府が当初示した法案に「テロ」の文言はなかった。「対テロが目的なら反対できない」(自民党幹部)との狙いが透けて見え、法案を成立させるための後付けとの印象が拭えない。
 TOC条約には既に187カ国・地域が加盟しており、未締結国は日本やイランなどわずかだ。テロや組織犯罪から国民を守るため、国際的な連携の枠組みに参加するのは政府の責務と言える。しかし、改正案成立を優先し、国民の疑念を払拭する努力を怠れば批判は免れない。国会審議では丁寧な説明が求められる。