虐待で子供の命が奪われる悲惨な事件が後を絶たない。今年だけでも兵庫の5歳女児(2月11日、継母逮捕)、福岡の3歳女児(同20日母の夫逮捕)奈良の5歳男児(3月4日、両親逮捕)、大阪の生後2カ月の赤ちゃん(同16日、母親逮捕)が犠牲となった。
 具体的な暴行事実には触れないが、なぜ、それほどひどいことができるのか理解に苦しむ。奈良の男児は死亡時の身長が85センチ程度、体重は6キロほどだったという。身長なら2歳程度、体重にいたっては1歳以下である。
 子供を守るのは親しかいない。子供が頼るのも親だけだ。唯一無二の存在であるはずの親に拒絶された時、子供の心はどこに向かえばいいのか。
 事件が表面化するたび、児童相談所をはじめとする関係機関の連携強化、周囲の目配りの重要性が声高に叫ばれるが、虐待は一向に減らない。
 2008年に全国の警察が検挙した児童虐待は前年比2・3%増の307件、被害児童数は同1・3%増の319人で、いずれも統計を取り始めた1999年以降で最多となった。
 事態を重視した警察庁は「匿名通報ダイヤル」の対象に児童虐待も追加した。摘発や被害者保護に結び付いた情報に最高10万円を支払うもので、児童相談所などへの通報件数が少ないため対象拡大に踏み切った。
 子供の命を救うためには監視・通報は有効な手段だ。手法をめぐって異論もあるだろうが、命を守ることが最優先であることは論をまたない。
 実際、今年発生した虐待事件では、付近住民が気付いていながら、果ては一時的に保護しながらも最悪の結末を迎えている。もし虐待に気付いたならば、後悔しないためにも関係機関に通報する勇気を持ちたい。
 監視・通報と両輪である、社会全体で見守る環境づくりはどうか。本県を例に考えると、県は2010年度予算案の編成に当たり、戦略キーワードに「子ども総合支援」を新たに加え、子供の支援体制構築に取り組む。
 ここでも課題は関係者間の連携。ワークショップなどの機会を設け、想定ケースで連携を確認するという。また「望まない妊娠」や高リスク妊産婦の対策として、モデル圏域で妊産婦の情報を共有するシステム構築も目指す。
 県健康福祉部は「虐待防止のための“地域資源”をシステム化できれば、みんなで子供を見守ろうという機運が醸成されるはず」と意義を強調する。
 国、県、市町村の担当者は真剣に取り組んでいる。継続的な取り組みが実を結ぶことを切に願う。
 私事ではあるが、息子がまだ1歳に満たないころ、熱を出した彼を抱き上げようとした際、はっきり「パパ」と口にした。満足に言葉もしゃべれないはずなのに、あまりの愛(いと)おしさに胸が熱くなった瞬間を生涯忘れない。