新型コロナウイルスの影響で自粛が続いていた宴会や会合を、新しい生活様式に合わせた形で再開しようという動きが出始めている。「弘前エール飯」を仕掛けた弘前エールプロジェクト実行委員会は、弘前市の青年団体の集まりであるユースサミット弘前本会議と協力して、新しい宴会の形を提案する「弘前エールサミット」を開催した。さまざまな感染防止対策に工夫を凝らして挑戦した「WITHコロナ」時代の宴席はどういうものか、記者が体験した。
 サミットは1日に同市和徳町のフォルトーナで開かれ、経済団体の青年部・青年会のメンバーや弘前大学の学生の他、櫻田宏市長や市議会議員らも含め計56人が出席した。
 開宴10分前に到着し、入り口での検温や受け付けを済ませて入場すると、やや違和感があった。すでに多くの参加者が飲み物を注文し、配膳済みの料理を口に運んでいる。新様式では感染防止の観点から宴席を短時間化。今回は一般的な会合より30分短い1時間半だった。食事は本来、開会のあいさつや乾杯が済んでからだが、時間の都合上、それを待たずに進行するという訳だ。
 座席の間隔を保つため、10人掛けの円卓を6人で使用。同卓の出席者とあいさつを交わそうとすると、互いに名刺を円卓に置いて交換していた。これも接触を減らすための工夫。ついでのようにしてしまいそうなお酌も、感染防止の面ではNGで、基本的には手酌。テーブル周りには、社会的距離の目安である1メートルを示す紙テープも張られていた。
 飛沫(ひまつ)防止のためマスク着用での来場が呼び掛けられたが、食事中はそのマスクを外すため、置き場所としてマスクカバーも用意されていた。「卓に置かれた他人のマスクを誤って付けて帰ってしまうことのないように…」との説明に笑いも起きる。
 そしてもう一つの飛沫防止策として目を引いたのは、歓談で用いる「飛沫エチケット棒」だ。厚手のボール紙製のもので、口元に当てることでマスクなしでの会話の飛沫を防ごうというアイデア。今回はたか丸くん、扇ねぷた、桜、金魚ねぷたの4種類の型で作られた。手にしてみると、パーティー会場などでの撮影に用いられる小道具の「フォトプロップス」のような見た目が楽しく、参加者も面白がって使っていた。今回はあえて無地のものにしたといい、例えば宴席の性格に合わせたプリントを施したり、広告枠に活用したりと、さまざまな発案がテーブル上で交わされた。
 実行委員長の秋元駿一さんは「当たり前ではない様式にチャレンジしたことで失礼があったものの、これからの時代に合った宴会を作っていこうという点での共感はいただけた。このまま自粛が続くようではいけないという考えが一致した前向きな会になったのでは」と手応えを語った。
 現状では多くの冠婚葬祭に関わる集まりが控えられ、地域の経済活動の大きな足かせになっている。これら
を再稼働させることを目的に開かれた今回の会合では、コロナ時代での集会の在り方が、一つ示されたと言える。
 同日は2020年下半期の初日。櫻田市長はあいさつの中で「この日を契機に経済を回していきたい」と呼び掛けた。今後は官民ともに会合再開への取り組みが本格化していくだろう。
【写真説明】「飛沫エチケット棒」など、新型コロナ感染防止対策を取り入れた宴会の在り方を提案した弘前エールサミット(写真上)、会場には社会的距離の目安を示すための紙テープも設置(写真下)