弘前市有漆林で植栽などを解説する福田取締役(手前右)

 中南地域の漆林を「TSUGARUうるし」と称し、津軽産漆の生産増強を目指す県事業が今年度から本格的に始まった。国産漆需要の高まりや、津軽塗などへの地元産漆の供給といった意義を背景に、津軽地域での漆栽培で新たな産業価値を生み出そうとするもの。4日は弘前市内の市有漆林で津軽塗職人、行政担当者らを対象にした研修会を開催。「造成の仕方次第では国内でも指折りの漆産地になる」との可能性が示された。
 国内で使われる漆の大部分は海外産で、国産は1・8トン、自給率にして約4・9%(2018年度)にとどまっている。一方で国は国宝や重要文化財の保存修理には原則で国産漆を使用する方針を打ち出し、年間平均2・2トンの需要があると見込んでいる。
 中南地域では17年に津軽塗が県内で初めて国の重要無形文化財に、18年には弘前市有漆林が「ふるさと文化財の森」に指定。これらを受け、県中南地域県民局では18年度から、民間主導の漆林造成に向けた基盤整備事業を行ってきた。
 今年度からは同県民局の重点枠事業として「TSUGARUうるし」造成モデル実証事業に発展。関係者への施業技術の習得を目的とした研修会や、同市有林への植樹などを行っている。
 同日は小西美術工藝社(東京都)の福田達胤取締役を講師に、13人が参加。同市東岩木山の市有林での実地研修などを行った。
 市有林には1600本余りの漆が自生するが、長年管理されていなかったことで漆の生産能力は高くないのが現状だ。福田取締役は「千本単位のまとまった本数がある漆林は国内でもまれ。育て上げれば有数の産地になるのでは」と展望。周辺のリンゴ園跡地も緩やかな傾斜と樹木が育つ土壌を備えており「大きな潜在能力、地の利がある。漆への転作も比較的容易では」と好材料を挙げた。
 弘前市の津軽塗職人・今年人さん(62)は「産業を次世代につなげるため、原材料の確保はしなければと痛感して参加した。自分は漆をかくことはできるが育てるとなると素人。勉強になった」と話していた。