マスク姿の“お地蔵ちゃん”を囲む典子さん(中央)ら
店内には大きなマスクを着けたぬいぐるみの姿も

 弘前市土手町の川越黄金焼店で、店内にある名物地蔵“お地蔵ちゃん”がマスクを掛けている姿が愛くるしいと、周囲の話題になっている。新型コロナウイルスの影響を受け、多くの小規模事業者が苦境に立たされていているが、「休みは元日だけ」と営業を続けてきた同店。国の緊急事態宣言が解除となった今も地域に閉塞(へいそく)感が漂う中、明るく営業を続けるその姿が地域に元気を与えている。
 1885年ごろ創業した同店の黄金焼は白あんの和菓子で、素朴でどこか懐かしい味が魅力。農作業の合間に食べるおやつとしても人気があり、地域住民なら一度は食べたことがあると言ってもいいほど、市民に愛されているひと品だ。現在は4代目の川越道子さん、典子さん姉妹が店を切り盛りしている。
 店内に入り、真っ先に目につくのが名物地蔵“お地蔵ちゃん”。季節に合わせて衣替えし、愛らしい姿で買い物客を魅了しているのだが、今年4月末からは、ピンクの大きな手作りマスク姿になった。地蔵の頭には津軽藩ねぷた村の「アマビエ金魚ねぷた」が桜の花で“巣”を作り、新型ウイルスを撃退する。
 同店は国の緊急事態宣言が本県にも拡大された時期もテークアウト中心のスタイルで営業を継続。「364日営業」を貫くため、「窓口にはビニールシートを張り、店の換気、小まめな消毒など、できる限りの対策を」と気を配る。
 ただ、弘前さくらまつり中止や県外への移動自粛が影響して観光客が減少し、稼ぎ時となるはずの今春の売り上げは例年と比較して8割減だった。
 典子さんは「長年やっているが、こんな事態は経験がない」と話す。一方で、市民からは「こんな時こそ甘くておいしい黄金焼を食べたい」「懐かしい味でほっとする」との声が寄せられ、「励みになる」と感謝しきり。
 マスクは着用することで、自分自身の飛沫(ひまつ)拡散を抑えるなど、今や欠かせない。店内ではお地蔵ちゃんだけでなく、体長約1メートルのトトロの縫いぐるみも大きなマスク姿で感染防止対策へのマナーを呼び掛ける。
 典子さんは地蔵を前に、「子どもが小さかった頃に使った布や、ハンカチなど、あるものを利用した手作り」とにっこり。「今年いっぱいは大変だろうと思うが、来年こそはいい祭り、いい春が来ると信じている。新型コロナウイルスには負けられない」と収束への願いを込める。