中泊町中里地区の「ピュア」による、小泊地区「すくすくしたまえ館」での販売。高齢女性らに歓迎されている=19日午前
民家前で食料品などを売る県民生協の移動販売車=20日午前、板柳町五林平

 新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がる中で、西北地域では直売所やスーパーによる出張・移動販売の存在感が高まっている。生鮮品を含めた多様な商品を定期的に届けることによって、大型店から遠い農漁村部の集落で、高齢化や病気のために遠出が難しい住民の暮らしを支える。不急の外出を極力控える傾向もあってか、このところは売り上げも堅調だ。
 中泊町小泊地区の下前集落。中里地区中心部まで25キロ、五所川原市までとなると50キロもの距離がある。毎月2回、ここで活躍しているのが町特産物直売所ピュアだ。
 販売開始時間が近づくと、会場のすくすくしたまえ館前には近隣から年配の主婦らが続々と集合。顔を合わせた友人や知り合いと「最近どうしてらが」などとあいさつするのもそこそこに、野菜や果物、菓子パンなどを次々と買い物かごに入れていく。
 搬送や受注宅配の取り次ぎを手伝う集落支援員の内海俊美さん(61)=小泊=は「下前にはスーパーというスーパーは無く、食料品店が一昨年に廃業して買い物の大変さが一層増した。ここのところ30人ほど来ているが、外に出たついでのおしゃべりが楽しみという人もいる」と説明。住民の女性(80)も「バスで買い出しに出る日もあるが、コロナや体調の問題もあって、売りに来てくれればとてもありがたい」と顔をほころばせた。
 前田晴香店長(40)は「まだ黒字化にまでは至っていないが、今春は売り上げが伸びている」とし「これからまずトントンまで持っていき、事業を続けていけるよう頑張る」と意欲を示した。
 一方、五所川原市方面で活躍するのは県民生協(本部青森市)の移動販売車「コープスマイル便」だ。3年前に同市東部にある七和地区の地域団体との連携事業として活動をスタート。現在は自主事業へと転換し、近隣にも活動範囲を広げて3コースを週2回ずつ回っている。
 板柳町北東部の五林平地区は、町中心部や同市の大型スーパーから距離がある上に、かつて移動販売を展開していた業者が撤退。ここも1年半ほど前、同地区の民生委員の要望に応じ巡回先に加わった。
 民家の前や庭先に乗り付け、ちょっとした雑談にも応じながら精肉、缶詰、菓子などを販売。住民の女性(70)は「体を悪くして遠出も楽でないので、こうして来てくれるととてもはかどる」とほほ笑んだ。
 販売車を運転し接客も行う同生協の木川優樹さん(34)は「大々的に儲けようとしてやっている取り組みではないが、利益は確保できている。コロナの件もあってか、今春は昨年対比で1・5倍近くに売り上げが伸びている」と語った。
 七和まちづくりネットワークの飛嶋献専務理事(59)は「過疎化の中で地域団体が事業として取り組むのは難しく、今は生協が主体的に活躍してくれるので助かる」と感謝しながら「会話を楽しみ、自ら品定めして買い物すること自体が高齢者にとって大切。移動販売は社会とのつながりを保つツールでもある」と指摘した。
 県西北地域県民局は「青森県型地域共生社会」実現に向け、主に体制構築や勉強会の開催といった環境整備で担い手をサポートしてきた。西村達弘局長は「この地域は高齢化が顕著だが、販売のプレーヤー(各団体)が持続的に活動できれば、地域共生社会へと前進する。こうした取り組みをさらに広げていければ」と述べた。