5月に入った今も、閑散とした状態が続いている週末の鍛冶町=15日午後9時ごろ

 新型コロナウイルス感染症拡大防止の緊急事態宣言が本県では解除されたものの、外出時の感染リスクはゼロではない。このため、弘前市内の夜の繁華街はいまだ人出が少なく、閑散とした状態が続いている。鍛冶町関係者は「このままでは鍛冶町の火が消える」と危機感を募らせるが、事態の収束が見通せない中、今後の展望を描くのは困難な状況だ。
 「倒産して周囲に迷惑をかける前にと、廃業を決めた店が既に数軒ある。今後も増えるだろう」。鍛冶町で長年営業をしてきた飲食関係者は、重い表情でこう語った。
 鍛冶町から客の姿が消えたのは4月前後。有名コメディアンが新型ウイルスにより死去したほか、秋田県大館保健所管内で新型ウイルス感染を確認された医師が弘前市在住だったとの報道を機に、「それまで人ごとのようだった新型ウイルスへの危機感が一気に高まり、鍛冶町の空気が一変した」という。
 鍛冶町でスナックを経営する女性は「店を開けるだけで罪悪感を抱く、初めての経験をした」と4月当初を振り返る。普段なら週末に多くの客が訪れるが、いまだ人の流れは戻らない。店は開け続けているが、「体力のない店はかなりきついはず。自分の店も今は何とかなっているが、これからどうなるか分からない」と話す。
 多くの常連客に支えられてきた鍛冶町の焼き鳥店の店主は「正直なところ、今がやめ時かと考えている」と心中を吐露。鍛冶町で昔からスナックを経営する年配女性からも同様の声を聞くという。
 鍛冶町では特に、感染すると重症化リスクが高いとされる年配常連客の訪れが途絶えた。前述の焼き鳥店にテークアウトの注文はあるが、収入は4分の1近くに激減。鍛冶町ではパソコンやスマートフォンに不慣れな世代の店主が多く、インターネットを活用した「弘前エール飯」の参加や収入減に伴う補助申請にも苦慮している。
 焼き鳥店の店主は「自分は引退でもいいが、このまま鍛冶町の古き良き文化も途絶えていくかと思うと、どうしたらいいのか分からない」と肩を落とす。
 鍛冶町の居酒屋で飲食していた市内男性は「緊急事態宣言が解除されても“気を緩めるな”とされ、皆出歩くのが怖いはず」と現状を指摘。「出歩こうとはなかなか言えないが、市内感染が確認されていない今は観光客に頼らず、市民が互いに配慮しながら経済を回すしかないのでは」と話した。