記者会見で手話通訳する山上さん(奥)=写真右、知事の発言を手話通訳する長尾さん=写真左

 県は新型コロナウイルスに関する記者会見などに手話通訳者を同席させている。手話を第一言語としている聴覚障害者にとって、動画の字幕だけでは理解が追い付かない―と県ろうあ協会から要望があったためだ。聴覚障害者は健常者に比べて、情報収集や意思疎通の手段が限られている。協会は県内で聴覚障害者が感染した場合に備え、手話通訳者がタブレット端末などの画面越しに通訳する「遠隔手話システム」の導入も求めている。
 県は4月6日に要望を受け、同22日の新型ウイルスに関する危機対策本部会議から、手話通訳者を同席させた。県の会議や会見では、新たな感染者の情報やそれを受けた対策などが報告される。会議の映像は民放によってインターネットで生中継され、録画動画を県のホームページに掲載している。
 手話は通常の日本語と比べて文法が異なる。例えば「どちらが好きですか?」という文章は、手話だと「好き、どっち?」と疑問詞が最後に付くなどの違いがあり、手話を第一言語にしている人は字幕だけでは理解が追い付かない場合がある。手話が導入されたことで、同協会の浅利義弘事務局長は「会員からは『前よりも理解できるようになった』という声が聞かれた」と感謝する。
 手話は対面でのやりとりが基本だが、新型ウイルスの感染防止のために聴覚障害者同士で集まることができず、情報共有の場を確保することが難しい状況にある。「情報が無く、マスクを着用せずに外出する会員もいた。現在はオンラインでのやりとりや機関紙などを通じて情報を周知している」と浅利事務局長。病院で医師や保健師らと円滑に意思疎通を図るため、遠隔手話システムの導入も求めており、県障害福祉課の担当者は「検討中」としている。
 危機対策本部会議などで手話を担当しているのは、県の手話通訳者の山上美紀さんと県障害福祉課職員の長尾和歌子主査の2人。2人は会議や会見の2時間前に原稿を受け取り手話に置き換える手話は基本的に15分交代で行う。山上さんは「分かりやすく正確な手話を心掛けている。自らの手話で少しでも情報が足りない人の力になれたら」と話す。
 県に登録されている手話通訳者は約120人。長尾さんは「手話通訳者の人数はまだ少ない。動画に写ることで、手話通訳者に興味を持つ人が増えるきっかけにもなれば」と期待を込めた。