町会の結束力を空き家解消に生かそう―。人口減少や少子高齢化の進展を背景に、増加する空き家対策が急務となっている中、弘前市の鬼沢第一町会(藤田光世町会長)はこのほど、自らが中心となって町内の空き家処分に取り組んだ。町会と市、業者が連携し、空き家問題解決につなげた同市では初のケース。市は今回の事例をモデルケースとして検証し、空き家対策に生かしていきたい考えだ。
 空き家対策をめぐっては、2014年12月に「弘前市空き家等の活用、適正管理等に関する条例」が施行。15年5月には空き家の活用や処分を後押しする「空家等対策の推進に関する特別措置法」が完全施行され、市も計画に基づきながら対策を講じている。
 ただ、市が16年度に実施した実態調査では1412件の空き家が確認され、解消に向けた取り組みは急務。市は空き家の発生予防から利活用、適正管理、除去に至るまでの総合的な対策を「空き家・空き地対策推進事業」として展開しており、今回は今年度事業化した町会老朽空き家等除去事業費交付金を活用した。
 鬼沢第一町会によると、処分した空き家は通学路に面し、40年以上人が住んでいない老朽化が進んだ1棟。屋根が傾き、冬になると屋根雪が道路に落下したり、強風時にはトタンが付近に飛んだりと、その危険性を懸念する声が上がっていた。
 同町会は「事故が起きた後では遅い」として、市政懇談会で市に空き家処分について相談。19年3月に町会の総会の同意を得て、処分に向け動き出した。
 処分実施までにかかった期間は約1年。この間、町会側は県内外の複数の空き家の権利者との調整や、解体に関わるマンパワー確保に奔走。資金面や法令順守の徹底といった課題については市側が担い、処分ノウハウを有する業者の協力も得た。
 作業当日の4月14日は午前7時から約30人が集まった。トイレや風呂場の処理、家具の仕分けなど、町会の中でも作業に詳しい人が監督役を務め、約7時間かけて空き家を解体した。
 藤田町会長は「仕事がある中だが多くの人が集まってくれた。鬼沢は農民を率いて農村部の窮状を藩に訴え危機を救った義民・藤田民次郎の心意気が根付き、裸参りなど400年続く伝統もある。この結束力が処分までを支えた。今回のことで結束力はより高まった」と語る。さらに「安全が第一と覚悟を決め解体させてもらった。町会のマンパワー、市の後押し、処分ノウハウを持った業者の三者があってこそ達成できた」と振り返った。
 市は今後も町会と連携しながら空き家対策を進めていく考えで、今回の事例をモデルケースとして検証していく方針だ。
 市建築指導課の佐藤久男課長は「今回は町会の熱意、結束力があってこそ実現できた。空き家の規模や予算面、各町会の特性もあり、さまざまな検討が必要だが、1件でも多く空き家解消につなげられたらと考えている」とし「一人ひとりが自身の家について考え、空き家を発生させない努力をすることも重要」とも呼び掛けた。
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