太田俊
助教

 弘前大学大学院理工学研究科の太田俊助教(36)らの共同研究グループが、大気汚染などを引き起こす有害物質を吸着する新たな結晶性材料を開発し、吸着のメカニズムも解明したと発表した。排気設備のフィルターなどへの応用に加え、他の吸着材料の開発につながることも期待される。
 山形大学理学部の石﨑学講師、長岡技術科学大学大学院工学研究科の戸田智之助教らとの共同研究で、成果は20日付の米国化学会「Crystal Growth&Design」のホームページに掲載された。
 開発したのは、ニッケル化合物が水素結合によるネットワークを形成した結晶性の材料。アセトンや酢酸エチルなど極性のある揮発性有機化合物(VOC)を吸着する。2018年9月から19年9月にかけ、弘大がこの材料や関連物質に関する特許を出願した。
 大気中で気体となるVOCの多くは、健康被害や大気汚染を引き起こし、現在は活性炭が吸着材料として排気設備のフィルターなどに広く使われている。しかし活性炭はVOCの一種「揮発性カルボニル化合物」に対する発火の危険性や、再利用時に吸着効率が下がるなどの課題があり、これに替わる新材料の開発が求められている。
 研究では、こうした課題に対し水素結合ネットワークを使った解決策を模索。分子間を同ネットワークでつなぐニッケル化合物の結晶を開発した。
 この結晶を「揮発性―」の蒸気にさらしたところ吸着が確認され、減圧条件下で加熱した場合には「揮発性―」の一部の有機化合物に対し吸着効率が下がらないことも突き止めた。吸着前後の結晶構造を解析し、結晶が水素結合の組み合わせを柔軟に変化させることで「揮発性―」の吸着と脱離を行っていることを明らかにしたという。
 今回の研究発表により、太田助教は水素結合ネットワークを使ったニッケル化合物以外の結晶の開発や、新材料の開発が国内外で進むと推測。今後に向け「ガソリンや天然ガスなどから有害な化合物を取り除く材料が開発できるか研究を進めたい」と語った。