新型コロナウイルスの感染拡大により、本県経済への影響が深刻化している。弘前大学人文社会科学部の李永俊教授(52)は本紙取材に応じ「さまざまな分析があるが、何も対策を打たない場合、影響はリーマンショックを上回る可能性もある」と指摘。弘前市の経済対策を評価した上で、活動自粛ムードの拡大で個人消費の落ち込みが加速する中、「多くの事業所が倒産すると、ウイルス禍収束後のV字回復が難しくなる。現在ある企業をいかに守るかが重要」と強調した。
 李教授が日本のGDP(国内総生産)と失業率を統計的に分析して導いた推計によると、リーマンショックの影響で日本経済が最も落ち込んだ2009年並みに景気が低迷した場合、日本の失業率は5・1%と予想され、失業者は338万人に上る。本県失業率を試算すると、19年平均の2・6%を大幅に超える6・0~7・3%と予測され、失業者数は最悪の場合、5万人を超えるという。
 李教授はこうした推計を踏まえ、弘前市について「従業員が5人以下の事業者が7割弱を占める弘前では、倒産を最小限にして企業を守ることが重要。まずは雇用を守ることが必要だ」とスピード感のある対策を求めた。
 一方で、弘前市内への影響については、弘前さくらまつり中止やインバウンド(訪日外国人客)減少などを挙げ「宿泊業や飲食業、関連業界を中心に影響は拡散し今後1、2カ月の間に厳しい状態が顕著に見え始めるのではないか」と予想。
 消費の落ち込みが加速する中、「現在の企業をいかに守るかが重要」とし、テークアウトや宅配サービスといった現在できる新たな取り組みへの転換と、回復への長期戦に備え「例えば、老舗飲食店とIT企業が連携して新たな販売方法を見つけるといった工夫など、新しい取り組みを模索し、収束後の準備をしてほしい」とした。行政に対しては「雇用と企業を守る政策を積極的に打ち出し、異業種をつなげるアドバイスも期待したい」とした。
 雇用面では、農業、介護、医療など人手の足りない業種への移行支援や、インターネットを活用した新たな社会インフラ整備への対策も指摘し、「経済的困窮に対するサポートと、次代を見据えた対策を打ち出すためのサポートの両輪で、今を救いながら将来にもつながる対策が必要だ」と訴えた。
【写真説明】「現在ある企業をいかに守るかが重要」と指摘する李教授