3月末に閉店した弘前市元寺町のライブハウス「Mag―Net(マグネット)」の元店長高取宏樹さん(41)が、同市土手町に新たなライブハウスを立ち上げようとしている。新型コロナウイルス感染拡大により、音楽・芸能業界はかつてない逆風の中にあるが、「街から音楽の火がともる場を消してはいけない」と決意。ウイルス終息後の本格営業開始を目指し、クラウドファンディング(CF)で開業資金を募ったところ、13~16日の4日間で目標金額の800万円を達成。多くの人の熱意とともに音楽発信の場づくりに突き進んでいる。
 高取さんはマグネットが開店した1997年当初からバンドとして出演し、2001年からスタッフとしても勤務。閉店まで一貫して同店に関わってきた。
 マグネットの営業終了が決定してから新店舗開設の準備を進めてきたが、ウイルス感染拡大の波が襲った。地元から名だたるバンドを輩出したライブハウスの終幕を飾ろうと企画したイベントは半数が中止に。マグネットが不完全燃焼のまま終わった無念さと、その状況で新たな店舗を立ち上げることへの懸念にさいなまれたが、「ウイルス終息後に音楽を発信する場がなければ」と決意した。
 新店舗の名前は「KEEP THE BEAT(キープ・ザ・ビート)」。ロゴマークにはマグネットを思わせるオレンジを配色した。「『生』を感じる心臓の鼓動と音楽のリズムを打ち続ける意味を込めた。そんな場を取り戻せるように」と高取さん。開業場所は土手町のミエダビルに決めた。自身も足繁く通ったレコード店「JOY―POPS」がかつて入居していた縁がある。
 プロの使用に耐える防音・音響設備を施し、感染症対策を念頭に置いて換気空調設備も整える。店舗は7月下旬に完成予定。ウイルスが終息し、安全にライブを開くことができると判断した時点から本格営業を始める。「メジャーバンドから地元の中高校生まで、多くの人に開かれた『箱』にしたい」と話し、来場客が商店街で買い物するシーンなども思い描きながら「『ここには何かがある』と感じて人が集まる場になれば」と展望する。
 工事や空調設備導入には自己資金で賄い切れない費用が掛かることから、13日からCFで支援を呼び掛け、17日正午までに430人以上の賛同者から約860万円が寄せられた。「この状況でライブハウスを開こうとすることに戸惑いはあったが、みんなが活動を自粛している時だからこそ、多くの人から気持ちを託してもらえたのではとも思う」と高取さん。目標金額は超えたが、設備の拡充やスタジオの併設などに掛かる資金を必要としており、引き続き協力を求めている。
 支援はCFサイト「CAMPFIRE」(https://camp-fire.jp/)で、5月25日まで受け付ける。同サイト内で、「KEEP THE BEAT」で検索できる。
【写真説明】弘前市土手町のビルにライブハウス「KEEP THE BEAT」を開設しようとしている高取さん