新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、弘前市などは15日、今夏の弘前ねぷたまつり(8月1~7日)の中止を発表した。戦時中の1937~45年に中止されたことがあるが、戦後は初。町会単位の運行についても各団体に自粛を要請する。弘前さくらまつりに続くねぷたまつりの中止は、地域経済へのさらなる打撃が懸念され、ねぷたを愛する市民にとっても厳しい決断だが、櫻田宏市長は記者会見で「命を最優先とした判断」と市民に理解を求めた。
 新型ウイルスの感染拡大を踏まえ、市、弘前観光コンベンション協会、弘前商工会議所、市物産協会、弘前ねぷたまつり合同運行安全会議の祭り主催5団体の代表が15日、非公開で弘前ねぷた運営委員会を開催。ねぷた参加団体を対象に実施した意向調査結果も踏まえて中止を決定し、同運営委員会委員長を務める櫻田市長が会見した。
 現状は新型ウイルス収束の見通しが立っておらず、祭り会期中は150~160万人が県内外から流入して沿道に密集するほか、ねぷた制作期間も小屋内が密集状態になることから、櫻田市長は「参加者や観光客、市民への感染リスクを拭い去れない」と判断理由を述べた。
 祭りの合同運行に比べて人が密集しない町内運行についても「実施が県外に住む方々の帰省を促す可能性がある」と指摘し、各団体に自粛を要請する考えを示した。
 市によると、祭りに参加する予定だった77団体に対する意向調査で、合同運行を「要望する」は27団体(35・1%)、「要望しない」が34団体(44・2%)、無回答は16団体(20・2%)。「本当は要望したいが仕方ない」との記載もあり、現状を踏まえて中止を求める声が多かった。
 櫻田市長は「地方都市でクラスター(感染者集団)が発生した場合は医療崩壊につながりかねない。地方ほど医療崩壊の危険性が高い」と懸念し、可能な限り感染リスクを抑えたい考えを示した。
 既にねぷた制作に着手していた団体や絵師への対応に関しては「関係団体と検討したい」とし、打撃を受ける宿泊業者への支援についても「市民が応援して経済を回せることができないか、具体的なことを早急に検討したい」とした。
 ねぷたが弘前の記録に初めて登場した1722年から数え、2022年は300年の節目を迎える。櫻田市長は「『ねぷたは地域になくてはならない』という市民が多い中での中止。その大切な地域への思いを持ち、一人一人が行動してほしい」と呼び掛け、「来年は子どもたちが笑顔でねぷたを運行する姿が見られることを祈っている」と述べた。
【写真説明】弘前ねぷたまつりの中止を発表する櫻田市長=写真上、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止が決まった弘前ねぷたまつり(写真は昨年の祭りの様子)=写真下