新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、弘前大学医学部附属病院は11日までに、不妊治療を休止した。背景には、抗ウイルス薬によって胎児奇形が生じる可能性があることや、全国各地の病院と同様に深刻な医療物資の不足、感染者発生時に本県医療の砦(とりで)として機能するためのマンパワー確保といった面がある。弘大産科婦人科学講座の横山良仁教授は「現状を乗り越えて安心した状態で治療を再開してほしい」とメッセージを送った。
 日本生殖医学会は妊娠中の感染リスクなどを理由に、不妊治療の延期を患者に提案するよう推奨する声明を1日付で発表した。これを受け、同病院は新たに開始する不妊治療の休止を決定。既に治療を始めている患者についても、新型ウイルスが全国的に終息した後に治療を再開する方針だ。
 休止の背景には、同学会の声明に加え、全国的に医療現場で懸念されている医療物資の不足がある。地域医療の砦となる同病院だが、マスクをはじめ、医療用ガウンや手袋など、手術や治療に必要な医療物資が不足している状態だという。
 不妊治療は手術用のガウン、マスク、手袋といった清潔な装備を身に着けた“完全防御”の状態で行う。だが「弘大病院でもマスクは供給停止状態で、このままの状況が続けば、半年後は(病院全体の)手術ができなくなる」(横山教授)という。
 同病院の役割上、がんなど人命に関わる病気の手術や治療も多く、医療物資を欠かすことはできない。加えて、重症の新型ウイルス感染患者が発生した場合に備え、マンパワーの確保も必要となる。横山教授は「不妊治療の中止に踏み切らざるを得なかった」と理解を求めた。
 しかし、一般的に年齢を重ねるに従って妊娠率は下がると言われており、妊娠を望む女性にとって治療休止はつらい状況だ。
 同講座では、新型ウイルス感染拡大の観点から「治療を受けられない焦りから、県外で治療を受けて戻ってくることは非常に危険。感染流行地域に行くことは避けてほしい」と警鐘を鳴らし、同時に「不妊治療そのものに制限はない」と、県内に複数ある不妊治療に取り組む医療機関での受診を促す。
 また妊娠した場合は新型ウイルス感染への対応に苦慮することが予想されるため、すべての妊婦に対し「感染予防を徹底してほしい」と呼び掛けた。