新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために閉鎖された弘前公園。三つの城門が閉じる、開園以来初めての光景を、市民たちは息をのんで見届けた。「こんな日が来るなんて」「ひたすらに寂しい」。これまで当たり前のように開かれていた城門が閉じた様子を、新型ウイルスに戦々恐々とする非日常の象徴と感じ、閉め切られる「桜の城」を惜しんだ。
 三つの城門のうち先行して閉じられた東門では、午後3時に作業開始。高さ5・45メートルの重厚な扉を、油圧ジャッキで台座からゆっくり引き上げ、市公園緑地課の職員が慎重に閉め切った。北門(亀甲門)、追手門も同様の手順で閉門。最後に閉まった追手門前には市民、報道陣ら50人以上が集まり、その様子をカメラに収めた。
 開園以来、閉鎖されたことがないとされる同公園。三つの門が閉まる瞬間すべてに立ち会った、公園近隣の女性(65)は「あり得ないことが目の前で起こった。全国で起きていることの一つの象徴のように感じる。門が開いていることが当たり前なのに…」と言葉を詰まらせ「時代劇で言えば敵に攻められている時くらい。開く日が早く来てほしい」と願った。
 追手門の閉門を撮影していた弘前市の会社員男性(43)は「ただひたすらに、桜を見られないんだという寂しさを感じる。弘前公園は弘前のシンボルだから」と肩を落とした。その上で「何よりも人命が一番大事。耐える時はみんなで耐えればいい」と話した。
 冬季の外堀を照らす「冬に咲くさくらライトアップ」事務局で同市の福島由美さん(53)は「春の桜にもバトンを渡せなかったのが悲しく悔しい」と涙ながらに閉鎖を惜しみつつ「今年の園内の環境は、200万人以上の花見客が訪れるいつもとは違う。見慣れた公園が違う姿を見せてくれると思うと別の楽しみもある」と語った。
 同市の菊池理井子さん(70)は「東門、北門、最後に追手門が閉まるのを見て、今年はさくらまつりがないのだと実感した。桜も見てもらえなくて寂しいかもと思う」としながら「でも桜にとっては一息つくことができていいのでは」と笑った。
【写真説明】追手門が閉まる瞬間を多くの報道陣や市民らが見守った=弘前公園追手門口、10日午後6時ごろ