「市民に夢を与え続けて60年余り」。県内の宝くじ販売の草分けとして知られる弘前市北瓦ケ町の弘前戸山商事が来月20日で閉店する。1945年の第1回から宝くじの販売を始め、現在は市内五カ所(委託を含む)に売り場を展開。高額当選も数多く出るなど、宝くじファンに愛されてきた。戸山富美子社長(77)は「銀行の営業方針が大きく変わり、宝くじの多様化で売り上げも低下した。のれんを守ろうと必死に頑張ったが、決断した」と残念そうに語った。
 弘前戸山商事の前身は戦前から県内で証券事業を営んでいた青森証券。戸山社長の父の幸次郎さんが、戦時中に国債などを引き受けていた関係で話を持ち掛けられ、45年から宝くじ販売を同市百石町で始めた。その後、53年に現在地に移り、80年に弘前戸山商事を設立。宝くじ販売を主に、本店と下土手町、大町、中土手町、本町の市内五カ所に売り場を設置して営業を行ってきた。
 売り場からは1億3千万円時代のジャンボ宝くじの一等や2006年冬にも二等1億円が出るなど、長い歴史を反映して高額当選も数多く、県内の業者の中でも上位の売り上げを誇ってきた。
 戸山社長は「第1回の宝くじはすごい売れ行きだった。物資不足だったから景品のあめやたばこ、さらし欲しさに朝から長蛇の列だった」と往事を振り返る。
 「前に進め、進め―でやってきた」と語る戸山社長だが、一番の思い出は常連客との交流。「1年に3回も当たった人から商売に良いと凧(たこ)をもらったのは、非常にうれしかった。転勤で野辺地町に転居した人からは毎年注文が届き、もう20年にもなる」と懐かしそうに語ってくれた。
 それでも近年の宝くじの乱立により、売り上げが低下。従業員も高齢化したことなどから閉店を決断した。
 今後は本店でたばこ店を営み、会社の名前は残すと語る戸山社長。「長く続けるのは大変だったが、人との触れ合いがあったのでやってこられた。一斉に店を閉めるのでお客様には迷惑を掛けるが、たばこ店は続けるのでまた寄ってもらいたい」と話していた。
【写真説明】60年余りの営業を振り返り、感慨深げの戸山社長