弘前高OB産官金座談会 津軽の“創生”へタッグ

 

 

一戸さん
鈴木さん
三浦さん

 人口減少によりその存在自体が危惧される地方。地方創生、地方再考が叫ばれる今、青森県、そして津軽地域はどう進むべきか。弘前高校を1992年に卒業した同い年の3人が、産官金のそれぞれの立場から地方創生に取り組む思いを語った。

 

 ―地方創生への取り組み。それぞれの立場でどう考え、取り組んできたか。
 一戸さん
 青森県は人口減少と健康問題が大きな課題。人口の減少が激しい地域で、かつ医師も絶対的に不足している。その中でいかに安全・安心な医療が受けられるかというのが、ここ青森で生活していくかどうかの判断の大きなポイントの一つになると思っている。病院の再編は、弘前大学を卒業する若い医師が積極的に青森の病院に残ってもらえるよう、また全国各地の研修医が是非とも働きたいと集ってくるような病院を作り、地域の活性化にもつなげていくべきだという考えから。それは医療に限ったことではなく、ここで働きたい、こういうことをやりたい―という雰囲気をこの土地につくらないと地方創生にはつながらない。
 鈴木さん 人口減少対策は金融機関でも取り組みをしていかなければならないキーワード。働く場が少ない地域から首都圏へ人が流れるのを食い止めるには地元に雇用の場を増やしていかなければならない。そのお手伝いをする中で、1社でも2社でも最終的に上場するような県内企業が出ればうれしいし、それを実現したい。
 三浦さん うちの会社もそうなれればと思う。弘前大学にオフィスを構えさせてもらってベンチャーを立ち上げ8年。私たちが提供する化粧品に使用しているプロテオグリカンは、2011年から文部科学省「地域イノベーション戦略支援プログラム」に採択されて弘大を中心に青森県の産学官が連携して取り組んできた結果、今では5億円市場に成長した。新規化粧品素材市場は1500億円規模。青森県はいろいろな可能性を持っている県。資源が豊かで大学には各分野の研究者がたくさんいる。資源を生かして生産技術を確立することで、インパクトのある地場産業を創出することができる。「健康産業」という切り口でこの青森県からどんどん発信していく企業にしたい。青森から発信できるという確証はこの数年間で得たし、こういうベンチャーができるという部分をお見せできればと思い取り組んでいる。
 ―本県では若い世代の流出が続いている。どのように変えていかなければならないか。
 鈴木さん
 高校時代は青森にいいものがあってもそれに気づけないものだが、鯵ケ沢高校では青森銀行と楽天が一緒に授業を行って鯵ケ沢のものを商売としてどう売っていくかなどを学んでいて、このほかにも五所川原農林高校がグローバルGAPを取得するなどまさしく仕事づくりに取り組む学校も。地域の再発見に向け勉強以外の取り組みの機会を支援することも考えられると思う。一例だが、高齢化が進み作付け面積が減っているリンゴ産業でもAIなど取り入れ盛り上げている人もおり、そういった試みを高校で見せられれば、大学で学び地元に戻って就農するなど可能性も広がるのではないだろうか。
 一戸さん 今ある産業の経営について近代化・集約化する必要があると思う。若い人たちがここ青森に残らないのは、働く場そのものが少ないことと、給与水準が低く生活への懸念から夢を持ちにくいということだと理解している。私が関わってきた医療・介護・福祉は、労働集約型産業であり地方での雇用の創出に効果が大きいため、小さい個人事業主が乱立するより、大規模な法人に集約した方が若い人たちも安定した将来を見据えることができるのではないか。またこの話とは別に、ちゃんとした準備を行うことが前提であるが、新しいことを始めるにあたり足を引っ張る文化を変えないといけないとも思う。
 三浦さん 自分自身も初めはぼんやりした夢だった。不安もたくさんあった。でも夢は思い続けているとどんどん具現化して集約され、目標になる。そうなるとつかめそうに思えてくる。高校卒業時に「夢を追う」と書かれたOBのルポライター鎌田慧さんの色紙をもらった。今見るとぐっとくる。子どもは格好いい大人に憧れる。大人がきちんと自分の言葉で語り行動して見せ、地元、ふるさとを好きになってもらわないといけない。戻りたいと思えるような。
 ―今考える、目指す将来・地域の姿とは。
 三浦さん
 企業人としては企業を大きくして雇用を生み出すというのが何よりも第一だと思っている。青森県だからできる企業、郷土の誇りとなるような企業にしたい。
 鈴木さん 昔とは違い銀行も融資するだけではなく、お客様と一緒に売り上げをどう伸ばすかなどを考え取り組んでいるし、そうならないと県内企業の成長は見込めない。個人的には、我々がつなぎ役になって、大学にあるいろいろな研究シーズを商売につなげるところをやりたいと考えていて、大学も民間も一緒になった仕事ができればいい。
 一戸さん この地域では自分の暮らしに満足している方が少ないように感じる。それに比べ以前出向していた福井県は、大学進学で県外に出た若い優秀な人材がどんどん戻ってくる。それは(1)上場企業があり雇用がある(2)三世代同居による生活の安定と、子供に対する教育がある(3)ふるさとに誇りを持ち、平均寿命も長く、幸福度も1位―と、生活や故郷そのものに住民が満足しているからだと勝手に理解している。結局は今住んでいる県民が、将来自分の子どもにも同じ状況を残したいと思えるかということが重要な視点で、役所も産業界もそれぞれが残したいと思える故郷を実現すべく知恵を出すことが大事。そして何よりも教育が大切。県全体の教育の底上げをしレベルを引き上げることが、他の課題、例えば健康問題などの解決にもつながると確信している。
 ―直面している課題も多い青森県だが、皆さんが考えるいいところは。
 三浦さん いいとこだらけの場所。自然や資源、ないものを探す方が大変。他県の人からもそう言われるし、自分も一度県外に出て気付いた。もっと自信を持つべき。勇気を持って一歩踏み出せば、情報や支援などにどんどん結びついていく。
 鈴木さん あって当たり前だと思っていたものが実はすごかった、ということが本当にたくさんある。宝の山。あとはそのプロモーションをどうするか、発信方法だと思う。
 一戸さん 都会と正反対なところがいいんだと思う。人と人、地域のつながりがある。それがいい方向に向かって動き出すための仕掛けをみんなで考え、どう打ち出していくか。弘高の校風のように自由な発想を持った人が出てきてくれれば。
 鈴木さん みんなが同じ目線で目指すところに向かって取り組むということに尽きる。弘高ねぷたのように。
 三浦さん クリエイトできると思う。新しい地方のあり方も。

 

◇一戸 和成さん
(厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全企画課課長補佐)
 今年3月まで県健康福祉部長。本県が抱える健康課題、医療課題に注力した。
◇鈴木 淳司さん
(青森銀行地域振興部地域振興課課長)
青森銀行で地方創生に向けた産業育成や地域振興に取り組む。
◇三浦 和英さん
(ラビプレ代表取締役)
弘前大学との共同研究により、プロテオグリカンなどの地元の天然素材を使った美容商品の開発・販売を行う。


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