変わる地域医療

 

2014/3/3 月曜日

 

 県内でも特に医師不足が深刻な西北五地域で、限られた医療資源を活用する自治体病院機能再編成に伴い、つがる市のつがる成人病センターが閉院、サテライト診療所「つがる市民診療所」が3日から診療を開始する。変わり始める地域医療の在り方をめぐり、同市の現状と目指すべき未来に焦点を当てる。

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病床ゼロに残る不安=上

 

大勢の市民が順番を待つつがる成人病センター=2月18日

 閉院を控えた2月のある日、つがる成人病センターでは、朝から大勢の市民が待合室で順番を待っていた。高血圧の薬をもらうため、数週間置きに通っている男性(77)は「待ち時間は短くて3時間」と笑う。開院時間より1時間以上早く訪れ、順番待ちの番号札を取る患者も珍しくない。
 同市木造地区では、同センターを「町立
病院」と呼ぶ住民がいまだ多い。合併前の「木造町立成人病センター」を略した名称だ。
 1953年7月、旧木造町(現つがる市)に開設された木造病院から始まり、これまで木造地区を中心とする住民に医療サービスを提供。機能再編に当たっては、西北五医療圏域の初期医療を担うサテライト診療所に位置付けられた。
 新たに開所する市民診療所は、これまで午前中のみだった外来診療が午後も受けられるようになる一方、時間外診療や救急搬送、入院患者の受け入れが不可能となる。
 地域医療の崩壊を防ぐ取り組みの一環として「やむを得ない」という声が市民の大半を占めるものの、長年親しんできた「おらほの町立病院」が病床ゼロとなったことに対し、感情的なしこりや不安が地元住民にあることも事実だ。
   ■  ■
 機能再編でマンパワーを集約し、より専門的な治療や手術、検査といった高度医療を担うことが可能となる中核病院は、交通の利便性やこれまで五所川原市の西北中央病院が果たしてきた役割なども考慮し、同市に設置された。
 圏域全体で見ると、木造地区と中核病院との距離はさほど離れていない。しかし木造地区の住民からすると、隣接する五所川原市に高度医療が集約され
たという不満が多少なりともくすぶっている。
 「正直なところ、五所川原市民に比べてつがる市民は損をしたという気持ちがゼロではない」と苦笑するのは木造地区の男性(70)。同様の気持ちがあると吐露する別の男性(44)は「こういった気持ちは、町立病院に愛着がある自分たちの代だけかもしれない」とし、「若い世代が圏域内の病院を活用することで、時間とともに解決される問題なのでは」と複雑な心境をのぞかせた。
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 機能再編の運営主体であるつがる西北五広域連合は「圏域の住民が、それぞれの生活圏を大切に思う気持ちは当然のこと」とした上で、「圏域内の医療機関については別々の存在ではなく、機能を分担した一つの病院と捉えてほしい」(成田弘人病院運営部次長)と理解を求める。
 自治体病院が地元住民の命と健康を守ってきた「病院完結型」の医療から、西北五圏域全体で患者を担う「地域完結型」へと、地域医療が変わろうとしている。

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新体制定着は手探り=下

2014/3/6 木曜日

 

3日から診療がスタートしたつがる市民診療所

 つがる成人病センターがつがる市民診療所として地域の初期医療を担うに当たり注目されていたのが、サテライト診療所で受け入れられなくなる時間外診療や救急搬送の在り方だ。同センターは2月で病床をほぼゼロとし、新体制に切り替わりつつあったものの、地元住民の不安は払拭(ふっしょく)されていない。
 木造地区の住民からは「ベッドの空き状況次第で、身内が金木や鯵ケ沢の病院に搬送された場合が心配。バスや列車で通うのは1日がかり」(70歳男性)、「移動手段がない、時間外などとタクシー代わりに救急車を頼む人が増え、消防や病院の先生が逆に振り回されるのでは」(82歳男性)といった声も上がる
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 一方、西北五地域の自治体病院機能再編成に伴い、2013年1月に同市より一足早くサテライト診療所「鶴田診療所」が開所した鶴田町。当初は町民からも不安を訴える声があったため、町の開業医の協力も得て医師3人により1週間の当直勤務を回す夜間の応急外来を一時的に実施した。しかし患者ゼロという日も珍しくなく、同年12月末で終了した。
 同診療所の尾崎一男事務長は「開所後からしばらくして症状に応じ、医療施設を使い分ける意識が住民の間に出てきたようだ」と指摘。また同町の泉淳一健康保険課長は「高度医療を充実させる設備が整う一方、住民の健康づくり意識を高める具体的施策もより重要になってくるのでは」と話した。
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 自治体が連携し、限られた医療資源の最大限活用を目指すという機能再編は国内でも多くは実施されておらず、本県でもモデルケースとして注目を集める取り組みだ。
 各病院が比較的症状の軽い患者の対応に追われ、重篤患者に十分なケアを施せないといった事態を回避するために、圏域の医療機関の機能を分担。また昼夜にまたがる連続勤務や休日取得もままならない状態など、現場の医師が置かれる「ブラック企業」に近い労働環境を改善することで、圏域からの医師離れを防ごうとすることも狙いの一つだ。
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 地域貢献を志し、合併前の旧車力村(現つがる市)時代から、車力地区で唯一の診療所として開業してきた「ファミリークリニック☆希望」の小笠原幸裕医師は、現在も仕事から完全に離れた時間を持つことが難しい状況にあるが、「“サムライ魂”を持ってすれば、現状は想定の範囲内」と苦笑する。
 「ただ、これからの世代の医師にも同じことを強要するのは困難。地域の医療を発展させるのであれば、医師の労働環境の改善は必要」
 つがる成人病センター副院長を務めた岩村秀輝市民診療所長は、診療所化に伴うデメリット、メリットの双方を視野に入れつつ「取り組みは数年先を見据えたもの」と強調「今はやっと種がまかれた状態。われわれはこれを若い医師と共に上手に育てていく必要がある」と述べ、機能再編による取り組みを少しずつだが着実に前進させる意欲を示した。

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