2014暮らし 米づくりの未来

 

2014/1/1 水曜日

 

 減反廃止など日本のコメ政策は大転換を迎える。国はコメ産業の競争力強化を目指し、農地の集約化や経営の大規模化をより一層進める。この変革期に本県のコメ産業はどうすれば生き残ることができるのか。現場の声を通してその未来を展望する。

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新品種に懸ける=1

2014/1/2 木曜日

 

頭を垂れる「特A」候補。県産米全体の評価引き上げも期待し総力戦で挑む=2013年9月、県農林総研

 県産米の全国的評価は決して低くはない。とはいえ、それは業務用需要が中心で、一般消費者に「青森の米」の認知度が高いわけではなく、いかに一般消費者に浸透させるかが長年の課題だった。その鍵を握るのが日本穀物検定協会(穀検)の食味ランキングで最高の「特A」を得られる品種の開発。今年度動き始めた県の「あおもり米『特A』プロジェクト事業」は、県産米の頂点に立つブランド品種の開発を進めるもので、2015年度の市場投入に向け、いよいよヤマ場に入る。
 本県は北海道・東北で唯一、特A米を持たない。本県が特A米を生産できる「米どころ」であることを県内外に示すことができれば「青森の米はおいしい」との市場評価が広がり、さらに現行品種「つがるロマン」「まっしぐら」などの評価を引き上げることにもなる。
 事業はその実現に向けて本腰を入れたことを意味し、つがる市の生産者(38)が「県産米に誇りを持って作っているが、消費者がブランド米に引き付けられるのも事実。特A米の相乗効果で県産米の評価が高まれば」と話すように、多くの生産者も期待感を持って、行方に注目している。
 特Aを目指す候補は2品種ある。県産業技術センター農林総合研究所が開発した「青系172号」と「青系187号」だ。「日本で一番おいしいと言われるコシヒカリに近づけよう」(農林総研)と開発を進めてきた。今年度は黒石市の農林総研と津軽地方6市町村の生産者9人が試験栽培した。
 13年産米は穀検で食味官能試験を行っており、結果は1月中にも分かるが、県など関係者による試食では、少なくともつがるロマンを超える食味だと確認された。栽培面でも耐倒伏性、耐病性に優れるとされ、県と農林総研が、試験栽培した生産者に聞き取りしたところ「栽培上の特別な問題はない」というのが大勢だった。
 食味官能試験結果を踏まえ、関係者による品種育成懇談会を2月ごろ開き、今年度中に1系統に絞り込む計画。農林総研は生産技術についての研究も並行して行っており、14年度は研究成果を取り入れて、この1系統を試験栽培する。
 ただ特A米を得ても市場や一般消費者が評価しなければ意味がない。県農産園芸課の成田勝治課長は「生産から販売まで、関係団体とともに総力戦で臨む必要がある」と強調。生産者に食味を追求する意識を持たせるのはもちろん、購買意欲を誘う名称やPR方法など、多岐にわたる詳細な戦略づくりを急ぐ。
 14年度に具体的な検討に着手し、名称も決定する方針だが、産地を限定するのかなど、本格生産前に解決すべき課題は山積する。他道県では認定生産者に限定した栽培や、一定基準を下回る品質の米を認証しないなど、極良食味米を維持するために特別扱いするケースもあるという。こうした事例を参考にしながら、後発の本県だからこそできるインパクトのある取り組みが強く求められる。

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売れる米づくり=2

2014/1/3 金曜日

 

消費者が求める食べ方に応じたコメを提供しないといけないと話す荒関さん

 生産者ならば安値よりはより高値で売れる方が良いのは当然だ。ただ、需要がなければ価格も上がらないのも市場原理の一つ。コメの需要量は1963年の1341万トンをピークに年々減少。2011年には902万トンまで落ち込んでいる。
 米価の値上がりが見込めない中、高品質で高付加価値を付けた米づくりに活路を見いだす生産者も県内各地に増え始めた。
 ただ作っただけではもう売れない。消費者が求める食べ方に合ったものを提供しないといけない―。中泊町で特別栽培米を手掛け、消費者に直接販売している農業生産法人ケイホットライスの代表取締役を務める荒関敬悦さん(57)は話す。
 生産者が農協などを通さず直接消費者と契約して販売できる「特別栽培米制度」の誕生をきっかけに1987年、県内の個人生産者で初めて直接販売を始めた。現在は60ヘクタールの水田で農薬や肥料を一切使わなかったり、使用量を5割以下に抑えたりした水稲栽培を行い、独自ブランド「幸の米(ゆきまい)」として販売している。
 田植え後は水田に米ぬかを散布するなど土づくりにもこだわるほか、玄米でも普通のコメと同じく炊ける新形質米「つぶゆき」の作付けもしている。全国から多くの消費者が購入しているほか、県内外のホテルやすし店などとも取引。米粉の加工にも取り組むなど、6次産業を見据えた事業を展開してきた。
 「幸いにして全国から多くの人が買ってくれるようになったが、今でも苦労の連続。新規開拓の日々」と荒関さん。「コメをといで、炊いて食べる人自体が減ってきている。コンビニのおにぎりや弁当、電子レンジで温めて食べるパックなどでご飯を食べている人が増えている」とし「特別栽培米だけ作っても駄目。今の人たちの食べ方に合った物を提供していかなければならない」と話す。
 分厚い冊子に水分量、タンパク質、アミロースなどの数字が並ぶ。その数字がコメの食味を表しており、残酷なまでに順位が付けられ、上位を獲得したコメは1キロ1000円近い価格で高級百貨店に陳列される。
 青森市八ツ役の山田正樹さん(50)は食味の優劣を競う「第15回米・食味分析鑑定コンクール」で国際部門特別優秀賞を獲得した。山田さんはコシヒカリやあきたこまちといった本県では生産数が非常に少ないブランド米を生産する。
 山田さんはインターネットなどで生産したコメを販売しているが、賞を獲得したことで注文が激増した。
 山田さんは「多くの本県の生産者が自分が生産したコメがおいしいかおいしくないか分からない可能性がある」と指摘。「数値で表されることで、生産の改善点も分かるし、次年度はよりおいしいものを作ろうという意欲が湧く」と語る。

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大規模農家の苦悩=3

2014/1/4 土曜日

 

大型機械が複数ある自宅倉庫で「これらの支払いのやり繰りは死活問題」と安定経営の重要性を語る(左から)英樹さんと昭悦さん

 本県有数の水田地帯である西北地域は、コメと転作作物を主体とする大規模農家の割合が高い。現場からは政府が掲げたコメの生産調整(減反)廃止の方針に対する不安に加え、数年ごとに変わる農業政策に振り回され続けることへのいら立ちもにじむ。
 「国の新たな農業政策は、例えれば目の粗いふるい。ふるい落とされた農家は、農業をやめろと言われているようなもの」
 つがる市で父・太田昭悦さん(65)と共に約28ヘクタールの水田で主食用米や加工用米を栽培する英樹さん(38)は、厳しい表情で不安を口にした。
 英樹さんが20歳で就農後、太田さん親子は周囲の農作業を受託するなどして経営規模を拡大。国の補助制度を活用して複数の大型機械を導入し、安定経営を目標に省力化や収量増に取り組んできた。
 しかし減反廃止は将来的に米価下落を招く可能性が高く、減反協力に伴う補助金もいずれ廃止されるとあって、「このままでは経営が立ち行かなくなるコメ農家が出てくるのでは」と懸念する。
 国は減反協力に伴う補助金を廃止する一方で、飼料用米の転作補助金を従来の10アール当たり8万円から最大10万5000円に引き上げて生産拡大を図る。ただ農家からすると、単純に作付け品目を切り替えれば済む問題ではない。
 飼料用米は主食用米と異なり、販売先や保管場所を農家自身で確保する必要がある。また「最大10万5000円」を得るための具体的な情報も現段階では乏しい。英樹さんは「取り組みたい気持ちはあるが、数年は様子を見たいのが正直なところ」と慎重だ。
 太田さん親子はこれまで、大型機械の借入金返済、種もみ、資材、肥料の代金、農繁期に要する人件費を含め、農協の仮渡金や国からの補助金の受け取り時期を想定して資金をやり繰りしてきた。新たな政策に対応しながら、いかに生き残っていくべきか―。まだ先は見えてこない。
 県内でも屈指の大規模経営を手掛ける五所川原市の「豊心ファーム」会長の境谷博顯さん(63)は「国の農業政策が数年ごとに変わってしまうのが、農家にとって一番困る」とため息をつく。
 同社は12年の段階で水稲、小麦、大豆、飼料用米の計102ヘクタールの作付けに加え、153ヘクタール分の作業を受託。役員、社員の計7人が勤務し、防除や土づくり、大型機械維持などを工夫してきた。「先を見据えて作付け体系や作業効率の在り方を検討しているが、政策が数年おきに変わるようでは長期計画を立てられない」
 また大規模農家は水田を集積して農作業を請け負うことで、高齢化が進む地域の水田が荒れないよう維持管理する役割を果たしてきた。国からの補助金を見込んで地代や経費を賄ってきたケースも多い。
 境谷さんは「利益を上げるだけでなく、何とか地域の水田を守りたいという思いが農業現場にあることも分かってほしい」とし、地域の実情に即した農業政策を進める必要性を訴えた。

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中小農家の今後=4

2014/1/5 日曜日

 

 
西目屋村では地元産豆腐の生産を目指し、コメ生産者の組合が大豆生産に乗り出した=2013年11月

 40年以上続いてきた減反政策の廃止は、稲作地帯の大規模生産者だけでなく、山間部の中小規模生産者の米作りの姿を変える可能性がある。

 黒石市大川原地区の中山間地域で水田1ヘクタールを経営する高橋久作さん(72)は、これまで30アールの減反に協力してきた。減反した農地には作付けしていないため「減反廃止でも田に戻すのは難しい。他の作物を作るのも大変」と小規模生産者への影響を心配する。
 国が進める農地集積については「傾斜地の多い中山間では大規模化できない。田を貸そうとしても、若い人は借りようとしない」と指摘。「農機が一そろえはあるし、年金を加えて何とか暮らしている。息子は勤め人だから、米を作ったとしても自分で食べる分ぐらいだろう」と見通し「10年後、この地域で田んぼを作る人がどれぐらい残っているか」ともつぶやいた。

 同じく中山間地域にある西目屋村の村市地区集落営農組合は、2012年5月に発足。住民14人が所属するが、ほとんどが小規模経営で、担い手がいる人は数えるほどという。佐藤武由組合長(72)は「ここでは、多い人でも所有田は2ヘクタールぐらい。減反の撤廃で供給過多になり、米価が1俵7000円まで下がってしまうと、諸経費も考えると赤字になる」と話す。
 米作りだけではとても暮らせないレベルといえるが、同地区の農業生産の主力はリンゴなのが救いとなっている。サラリーマンもおり「飯米(自家消費)や縁故米(家族に送る米)を、生活の足しにしている面がある」のだという。
 組合では、経営多角化の一環で、昨年から大豆の生産に乗り出した。村が「白神そば」に続く特産化を目指す「目屋豆腐」の原料として期待されるが、佐藤組合長は「収入があればいいに越したことはないが、人件費を出せるぐらいで、それでもみんなが楽しくやれればいい」と言う。

 村農林建設課の山内啓太主査は「複合経営でなければ利益が出ない時代といえ、中山間で大規模化は難しい。できる範囲での所得向上策を見いだしたい」と説明。具体策として、村は13年度事業で、村内の集落営農組織が農業用施設整備費のために使える上限1000万円の補助金「農業施設整備事業」を新規計上。多角経営に向けた初期投資をサポートしている。
 今後について、山内主査は「国の制度転換に振り回されないようにし、示された方向性の中で有利な制度を活用することで、集落営農を強化したい。今後も農協とも歩調を合わせながら、県のマニュアルが示された場合はそれも参考とし、村としてどうすべきかを考えていく」とした。

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