聖愛 甲子園の軌跡

 

2013/8/23 金曜日

 

 第95回全国高校野球選手権記念大会に出場した聖愛は、初の甲子園ながら堂々ベスト16入りを果たした。甲子園常連校として名高い青森山田や光星以外の本県代表校で、全選手が県内出身の聖愛が活躍したことにより、本県の野球のレベルの高さを改めて全国に知らしめた。聖愛の甲子園での活躍を振り返るとともに、来年に向け今度は県内で追われる立場となるチームの意気込み、県内高校野球界の今後を展望する。

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3年生トリオ存在感=上

 

甲子園初出場で16強入りを果たした聖愛。日本一の目標に向け、さらなる飛躍に期待が掛かる

 弘前勢の甲子園出場は1996年の弘実以来17年ぶり。夏の2勝は弘前勢では第49回大会(67年)の東義以来46年ぶりで、初出場校としては県勢初の快挙だった。
 聖愛の初戦の相手は玉野光南(岡山)。大観衆の視線が集まるマウンドに「気合が入った」主戦の小野憲生は堂々とした投球を見せ、散発4安打に抑え完封。打線は二回に佐々木志門の適時打で先制すると、その後も効率よく得点を重ね計6得点。主将の一戸将には弘前勢で甲子園初となる本塁打も飛び出し、快勝で初戦を突破した。
 続く沖縄尚学(沖縄)戦も小野が先発。初回に1点を失うも、二回から投球フォームの乱れを修正し、凡打の山を築いた。打線は1―1で迎えた四回、今季初の公式戦スタメンとなった外川和史の2点二塁打などで3点を勝ち越し。終盤には好投を続けていた小野が本塁打などで1点差まで詰め寄られたが、冷静に後続を断ち2戦連続完投勝利を挙げた。
 りんごっ子旋風が注目を集めた3回戦。勝てば8強となる試合の相手は、後に大会決勝まで駒を進めた延岡学園(宮崎)だった。この試合は一戸が県大会決勝以来の先発。上々の立ち上がりで四回までを1点に抑えたが、五回の先頭打者に長打を許すと小野に継投。しかし小野もつかまりこの回結局、4点を失った。さらに六回にもピンチで一戸が再びマウンドに上がったが、相手打線の勢いを止められず、五、六回で計8失点。県大会を突破する原動力となった二枚看板が倒れ、中盤で試合を決められた。
 打線は主砲の成田拓也が2安打と気を吐いたものの、延岡学園の奈須怜斗らの前に安打を集中させることができず、0―10の完敗を喫した。
 甲子園で存在感を見せたのは、聖愛の軸となる小野、一戸、成田の3年生だった。3回戦で打ち込まれたものの、小野は1、2回戦の2試合で被安打9、自責点3の好投。長い腕で右横から放つ最速138キロの直球に左右の変化球を織り交ぜ、的を絞らせなかった。マウンド度胸も備える主戦は、聖地でも実力を遺憾なく発揮した。
 一戸は玉野光南戦で放ったバックスクリーン右に飛び込む豪快な一発や、沖縄尚学戦の決勝打などで4打点。抜群の長打力と勝負強さを見せた。成田は1打点ながら、打率5割4分5厘と打席での安定感が光った。3、4番の2人が打線をけん引し、チームの飛躍を支えた。

 

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最後まで礼儀正しく=中

2013/8/24 土曜日

 

試合後、スタンドにいるベンチ外の選手たちと共に、相手側に向けて礼をする聖愛ナイン

  目標の日本一には届かなかったが「本県出身者だけでも通用する」と手応えをつかむ原田一範監督。大会前の甲子園での公式練習では、少ない観衆にもかかわらず雰囲気にのまれたが、試合では「満員の観衆の中で、いつも通りのプレーができた」。初の大舞台を踏んだ経験と、鍛え上げた精神力への自信は、聖愛野球部にとって確かな糧となる。
 8日の大会開幕前の4日、聖愛が公式練習を迎えた。練習後のグラウンド整備を含め、各校が使える時間はわずか30分。投手陣はマウンドの感触、外野陣は両翼の広さなど、確認すべきことは多岐にわたる。前日から入念に練習メニューを考えたが「ボロボロだった」と振り返る原田監督。ナインの緊張はピークで、メニュー通りにこなすことができなかった。
 そこで聖愛は試合前にグラウンドに立つことができる開会式のリハーサルと式当日を生かした。選手たちは甲子園の土を踏みながら、試合での個々の役割をしっかりイメージ。「公式練習で緊張は出し切った」(原田監督)ナインは、体調や戦略とともに心の準備も万全に。「歓声を味方に気持ちよく投げることができた」(主戦・小野憲生)と迎えた初戦では聖愛らしい笑顔を見せながら、存分に実力を発揮した。
 初戦の玉野光南(岡山)戦、聖愛は小野が完封し、主将の一戸将の豪快な本塁打などで快勝。投手力や打力、緻密な走塁戦略といった強さのほかにも、試合前後の一糸乱れぬ「礼」に注目が集まった。野球に対する誠実な姿勢と、野球部で育まれた人間性が表れる礼に、聖愛スタンドはもちろん、バックネット裏や外野席からも盛大な拍手が送られた。
 「野球以外の部分で負けないように」と、日常生活から全力を尽くす聖愛。礼はチームの心を一つにするため完璧にそろえ、頭を下げる角度(45度)や発声のタイミングを冬などに練習している。年々改良を続け、昨年のチームから現在の形になった。
 初戦を終えて甲子園で初めての校歌を響かせた後、自校側スタンドの前に移動したナインは、まず相手側、次に本塁側、最後に自校側に一礼。心を込めて3度頭を下げる姿は全国で話題となった。
 同校のホームページにはOGらの応援のほか、全国各地の観戦者から聖愛の礼儀正しさを称賛する声が続出。3回戦で延岡学園(宮崎)に敗れ、悔し涙を拭いながらもきびきびと頭を下げる姿には「笑顔と礼儀は日本一」「感動をありがとう」といったメッセージが相次いだ。原田監督の人間教育を根底に置く指導が実を結び、強さと人間力を兼ね備える聖愛の名は確実に甲子園に刻まれた。

 

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日本一へ新たな挑戦=下・完

2013/8/25 日曜日

 

新体制での練習が始まった聖愛。日本一に向けた新たな挑戦が始まる

  聖愛は国体に出場するものの、3年生は自主トレや「1、2年生の練習に参加」という形となり、チームは新体制に移行する。例年よりも1カ月遅い移行に戸惑いながら、新主将・竹内克哉を中心に急ピッチでチームづくりを進めている。これからは追われる立場となるが「甲子園初出場でベスト16、よくやったではなく、受け止めなければならないのは0―10で3回戦敗退ということ」と原田一範監督。甲子園16強、県王者の意識は捨て去る。この完敗を原点に、聖愛は新たなスタートを切る。
 1996年の弘実以来、弘前勢は甲子園から遠ざかっていた。この間、夏の切符は青森山田(97年以降8度出場)と光星(同6度出場)でほとんどを分け合い、甲子園でも好成績を収めてきた。2強の存在が刺激となり、本県の高校野球はレベルアップを続けてきた。県高野連の村田秀俊弘前地区会長は「全体的にレベルアップしてきた中、いち早く頭角を現したのが聖愛」と成長に目を見張り「原田監督の手腕は本当に素晴らしい。(ベンチ入りが)純粋の津軽出身者だけでここまでやってこれたのは衝撃的なことでもある」とたたえた。来季に向けては「現在の聖愛は1、2年生が主体。今の勢いがこのまま続く可能性が高い」との見方を示した。
 今夏は青森山田、光星も主力に占める3年生の割合が低く、すでに県外の強豪校との練習試合を重ねている。順調に新体制への移行が進む青森山田の佐藤伸二監督は「選手全員に期待が持てる。目の前だけを見て進み、一番上を目指す」と静かに闘志を燃やす。光星の仲井宗基監督は「新チームがどうなるか不安だが、新戦力が楽しみでもある」と声を弾ませ「また一から一生懸命やるだけ」と意欲。共に聖愛を意識するそぶりは見せなかったが、王者奪還への決意をのぞかせた。
 聖愛は飛躍を支えた二枚看板の投手、小野憲生・一戸将が抜けるものの、新体制のほとんどは甲子園を経験したメンバー。甲子園ではベンチ外だった新主将の竹内について、原田監督は「非常に不器用」としながらも「あいさつや笑顔、献身的な姿勢など、人として大切な要素は輝いている」と評価。21日の新体制初練習でも「雰囲気は悪くない。竹内のやる気を感じる」と期待を寄せる。人間力で勝負する聖愛にとっては最適な人選と言えそうだ。
 国体出場により、練習を続ける3年生の支えにも期待が掛かる。一戸は打撃について「どんな場面でもコンパクトなスイングで、ゴロヒッティングを徹底してほしい」と話し、前主将としては「普段の生活が野球につながる。自分たち以上に気を付けてやってもらいたい」と檄(げき)を飛ばす。小野は「バント処理やけん制など、できることから伝えていきたい。それが個々のピッチングにつながる」と話しながら、国体について「もう一度みんなで野球できるのがうれしい」と満面の笑顔を見せた。
 「3年生が抜けた穴が大きいと感じている。不安はあるが、心強い(副主将の)和島光太郎、藤元蓮の2人と一緒に頑張る」と竹内。「今年の夏の悔しさを忘れず、甲子園で勝てるチームを一からつくっていきたい」と力を込めた。周囲の期待を背に、聖愛は再び日本一に向けた歩みを進める。

 

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