検証 弘前’13豪雪

 

2013/3/30 土曜日

 

 観測史上最高153センチの積雪を記録した弘前市。除排雪体制や除雪困難者への対応など、多くの課題が浮き彫りになった今冬を踏まえ、豪雪への備えにどのような取り組みが必要かを関係者への取材などで検証する。

 

 

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「153センチ」に市内大渋滞=上

 

 
弘前市で観測史上最高積雪の153センチに達した2月25日、市内各地で大渋滞が生じ交通まひに陥った=同市大原1丁目

 2月25日、弘前市内の各地で大渋滞が発生し、交通がまひ状態に陥った。同日には観測史上最高となる153センチの積雪を記録。除雪能力の限界を超えたために十分な道路幅員が確保できず、車両の往来が困難な状態となった。今後の除雪体制の在り方に大きな課題を残した事例と言えよう。
 同市の積雪は19日の115センチから24日までの5日間で148センチに。この間で計69センチの降雪があったことに加え、最高気温が平均で氷点下2・4度と低温で推移したため、雪かさが減ることなく累積。道路の拡幅除雪により側道の雪量が限界に達していた。
 「除雪をしても雪壁に押しやる格好となり道幅が確保できない、あるいは逆に幅員が狭まる状況になっていた」と板垣宣志市道路維持課長。市街地や住宅地では雪を寄せるスペースがなく、除雪作業自体ができない路線もあった。十分な道路幅員が確保できないまま、通勤・通学の往来に加えて弘前大学の前期試験日も重なる25日となった。

 「もうパニック。止まったままで夕方まで配車ができない状態だった」とタクシー会社の担当者。幹線道路でも交差できないような路面状況で、路線バスも機能しなかった。弘南バスの天内済営業路線課長は「その時にいつ発着のバスが運行しているか分からない状況」と振り返る。片道で最大2時間の遅れが生じ、結果的に市内路線で21便が運休となった。
 弘前地区消防事務組合管内には36件の出動要請が寄せられた。入電から現場到着までは平時で7・23分(2011年度、同管内平均)だが、同日は救急案件で最長1時間を要した。工藤弥司広警防課長は「人命に関わる案件がなかったことが不幸中の幸い。こちらでは容体の把握や応援による救急手当てなどの措置は取れるが、豪雪そのものには打つ手がない」と話す。

 除雪作業に携わる相馬土木の相馬正代表取締役は「積雪がひどく機械が無理に入ったり作業自体ができない状況が続き、能率は低かった」と振り返る。「除雪では左右に雪を寄せることしかできない。コストを抑えつつ効率的に作業するには雪をためないことだ」と、排雪のタイミングや工法に一考の余地があるとした。
 市では12年度、市民と共用の雪置き場のほか、業者専用として市有地10地点を開放。昨年より6地点増やしたことで運搬の回転率が大幅に向上したと、ほとんどの業者から評価を得た。しかし平年の約2・5倍にもなった今冬の雪量は、現在の処理能力を上回るものだった。「機械除雪の限界に至った」と板垣課長は語る。
 最深積雪深は、124センチを記録した12年から2年連続で平年を大きく上回った。板垣課長は積雪60センチを指標に策定する除排雪計画について「今後は積雪1メートル級を基準に対策を練ることも必要になってくる」と話す。「今冬は市民の雪片付けにも雪置き場がなく、住宅地の雪かさが増し、結果として効率的な除排雪ができなかった。町会ごとに融雪槽などを設置するような、新たな方策を検討しなければならないだろう」。機械除雪だけでは対応できなかった今冬。豪雪に対しては積雪量を上げないための「消雪」体制の構築が待たれる。

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除雪支援の輪広がる=中

2013/3/31 日曜日

 

 
除雪困難者への支援など除雪ボランティアの役割は重要性を増すばかりだが、高齢化や担い手不足も深刻な問題だ(写真は弘大ボランティアと市職員の除雪ボランティア)

 屋根にうずたかく積まれた雪、玄関をふさぐ寄せ雪。過去最大を記録した今冬の豪雪は、高齢者や身体の不自由な人ら“雪害弱者”の生活を直撃した。地域住民などで組織する各地区社会福祉協議会が、除雪困難者を対象に行ったボランティア除雪は、最終的に延べ1万6000件近くに上るとみられる。民生委員も見守りを強化し、市は高齢世帯や空き家のパトロールを実施。今冬は新たに若者や自衛隊によるボランティアが立ち上げられるなど、支援の裾野も広がった。一方で近年はボランティアの高齢化が進み、安全面からボランティアでは難しい屋根の雪下ろしをどのように行うかなど課題も顕在化している。

 高齢や身体の不自由により自力での除雪作業が困難な世帯などを対象に市社会福祉協議会が行う除雪支援事業の対象世帯は、今冬1071件。住民ボランティア1606人が間口除雪を中心に行った。除雪回数は集計中だが、最終的には同じく豪雪だった昨冬(延べ1万6553件)程度に達する見込みだ。
 地区内に49件の対象世帯のある藤代地区社会福祉協議会では今冬、50人前後のボランティアが参加し、除雪支援を行った。地区全体では延べ1175回、多い人では50回、1人当たり20回程度は行っている計算だ。
 西沢チヨヱ会長は「昨冬に比べても倍はやった印象。この冬は特別だった」と嘆息する。ボランティアは定年退職者や女性などさまざまだが「勤めなどの関係でやはり若い人はいない」と西沢会長。「高齢化もあり、だんだんボランティアは少なくなる。ボランティア探しが大変だ」と話す。求めの多い屋根の雪下ろしにボランティアでは対応できない点も課題と言う。

 除雪困難者の状況を確認し、地域、行政と結び付ける役割を担う民生委員。市に寄せられた除雪の相談件数は、昨冬(148件)の2倍以上の329件。うち民生委員による報告は56件に上る。
 和徳南地区民生委員・児童委員協議会の大湯惠津子会長は「普段の年は、大丈夫だからと話していた人からもさまざまな要望が届いた。本当に支援を必要とする人との見極めが大変だった」と話す。「一人暮らしの高齢者に目がいきがちだが、高齢者は二人暮らしでも一方が寝たきりなど、支援が必要な場合が多い」と支援対象から“外れる”潜在的な困難者の多さを指摘する。「民生委員だけでなく、隣近所など普段から複数で見守る体制をつくることが重要」と警鐘を鳴らす
 市は今冬、健康福祉部など関係3部による除雪困難者宅や空き家の合同パトロールを実施し、職員による除雪回数を増やした。市福祉総務課の平尾洋課長は「市、社会福祉協議会、ボランティアがどのように連携して支援するか、その役割が外郭的だが形として見えてきた年でもあった。ボランティアでは難しい2階部分の雪下ろしも含め、新年度に策定する市雪対策総合プランの中で市民の力を結集できる仕組みをしっかりつくりたい」と話した。

 弘前大学ボランティア「雪かたづけ隊」に加え、今冬は自衛隊によるボランティア活動も始動した。今冬、市民球団「弘前アレッズ」とともに雪かきボランティアグループ「NEVE(ネーヴェ)」を立ち上げたサッカークラブ「ブランデュー弘前FC」の黒部能史理事長は「若い人たちを巻き込みながら地域を支え合っていく、自分たちはその先駆けになれればいい」と話す。
 急速な高齢化、人口減少時代は除雪困難者の増加をもたらすとともに、ボランティアの担い手不足をも招く。市民一丸の支援体制と行政、地域住民、ボランティアの役割分担をどのように図るか。今冬の豪雪がもたらした教訓は、今後の地域の在り方への問い掛けでもある。

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今冬の教訓反映へ=下・完

2013/4/1 月曜日

 

 
2年連続の豪雪を経験した弘前市は雪対策総合プランの策定に乗り出す。実効性のある取り組みが求められる(写真は市が今冬初めて行った複合除雪の様子)

 過去最大の積雪を記録した今冬の弘前市。2月下旬には猛吹雪により市内の交通が一時まひ状態となるなど、市民は過去に例のない体験に遭遇した。一方で、人的被害や家屋の倒壊はいずれも豪雪だった昨冬を下回る結果に。2年連続の豪雪を教訓とした取り組みが一定の成果を挙げる中、想定を超える“雪災害”にどのように備えるかが課題となった。市は新年度、雪対策総合プランを策定するが、葛西憲之市長は本紙の取材に対し、散水や地中熱などを活用した道路融雪の可能性、市内の空き地や都市公園を活用した除雪、雪置き空間の設置などを検討事項として挙げた。

 弘前市は2月25日に観測史上最大の153センチの積雪を観測するなど前年をも上回る豪雪となったが、一方で3月28日現在の人的被害と建物被害は、人的被害が昨冬同期の49件に対し35件、建物被害も住家・非住家合わせて同112件に対し46件と、いずれも減少した。
 減少の要因は複数あるだろうが、今冬は市によるパトロールの強化や自衛隊、若者のボランティア団体の立ち上げといったボランティアの裾野の広がりなどもその一因に挙がる。一方で除雪困難者の屋根の雪下ろしにボランティアの活用が難しい点が課題となった。
 葛西市長は「1階部分はボランティアでも対応できるが、2階は難しい。そういった時はしかるべき行政の出動が必要と思う。かなり限定的なものでないとできないが、除雪事業者への委託、要請なども視野に入れなければならない」との認識を示した。
 猛烈な吹雪と積雪により、市内各所で交通まひが引き起こされた2月25日は「雪災害」への備えが課題となった。
 葛西市長は「あの状況下で1000キロの市道の除雪を体系的に行うことは不可能。次善の対応を心掛けた。ただ、交差点における右折レーン確保のための排雪はやっておくべきという反省点は残した」と事前の情報収集と予防対策を講じることが必要との認識を示した。また危険性の周知など広域的な対応も必要となるため、国や県、市町村、除雪業者からなる協議会設置の必要性を市長会で発言していくとした。

 市は2年連続の豪雪を教訓とした市総合雪対策プランを策定する。雪に対する総合的な計画を目指すもので、他自治体に先鞭(せんべん)をつける取り組みとなる。
 葛西市長は検討事項を今後の議論とした上で、自身の考えとして、整備・管理コストの低い散水を活用した幹線道路の融雪、地中熱や廃熱を生かした生活道路・小路の融雪など「道路融雪という方向にかじを切っていければいいと思う」と述べた。こうした取り組みは財政上の負担も大きいため、まずはモデル事業を進め、市民の合意形成を図っていく考えを示した。
 また今後も増加が予想される市内の空き地を逆手に取り、不動産会社と連携して一時的に借り受け、道路除雪の時間短縮に活用する方法や市内におよそ300カ所ある都市公園に融雪装置を備え、市民の雪置き場として活用するスマートパークの整備、市民の除雪機を活用した除雪ボランティアの登録制度などを挙げた。
 葛西市長は「多種多様なハード、ソフトを組み合わせながら、それぞれの地域にとっての最適解を見つけていきたい。弘前を雪対策日本一の街だといえるような状況をつくり上げることが大事だ」と意気込んだ。

 「自然が相手だから」「想定できないものだから」。雪への備え、対策はともすれば受け身になりがちだ。今の弘前市は雪に対し、何ができ、そして何をすればいいのか、この冬の豪雪ほどわれわれに答えが与えられた年はないだろう。プランをしっかりと血肉の通ったものとし、来るべき“次”に備えることが肝要だ。

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