地域に生きる 県内の障害者雇用

 

2013/3/27 水曜日

 

 4月から法定雇用率が引き上げられると、県内では対象企業が約170増える。法定雇用率未達成企業のうち、従業員数が200人を超える企業は納付金を徴収されているが、2015年には100人を超える企業に拡大。雇用要請は大きくなり、企業も関心を持たずにはいられないだろう。しかし求人数に大きな増加は見られず、支援機関の存在を知らない企業も多い。津軽地方を中心とした県内の障害者雇用の現状、課題などを取材した。

 

 

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現状=1

 

弘前公共職業安定所などが開いた就職説明会。障害者への求人情報の提供や企業の雇用促進などを目指している=2012年10月17日
弘前市の津軽障害者就業・生活支援センターの相談室。保護者からの相談が多い(写真はイメージ)

 「障害があるから能力がないといった偏見を持たず、チャンスを与えてほしい」と津軽地方に住む女性。息子には情緒障害があり、周囲に偏見の目で見られることもあった。就労したいという意思はあったが、何が向いているか分からない。「不器用だから農作業などの仕事があればと思った」というが、特別支援学校でいろいろな職場で能力を試す機会もあり、一般企業に就職した。「(息子が働く)企業は理解があるからありがたい。でも一般的にはまだまだ。(息子は)給料をもらうのを楽しみにしているし、働くことが生きがいでもある。いかに生き生きしているか知ってほしい」と語る。

 国は障害者雇用促進法で一定規模の企業などに知的、身体障害を持つ人を雇うよう義務付けている。全従業員に占める障害者の雇用比率(法定雇用率)が決まっており、一般企業では1・8%。従業員56人で1人を雇う計算で、56人以上の企業には雇用義務がある。
 4月からは法定雇用率は2%へと引き上げられ、従業員50人に対し、1人を雇わなければならない。義務の対象が50人以上の企業へと拡大し、より多くの企業に障害者の雇用が義務付けられる。
 だが厚生労働省のまとめでは2012年6月現在の障害者の実質雇用率は全国で1・69%と法定雇用率を下回る。本県は47都道府県中26位の1・7%。法定雇用率を達成している企業の割合は多くの都道府県で5~6割だが、本県は731社中347社と達成企業は半数以下。47都道府県中41位と低く、受け皿は十分ではない。
 青森労働局によると県内の対象企業のうち約3割が障害者を1人も雇っていない。同局は「障害という言葉に身構えてしまう企業もある」と話す。障害の特性を理解することで多くの障害者が働くことができるが、社会の偏見も残り、企業の理解は乏しい。

 「障害者向けの求人だけでは就職者数は伸びない。一般求人を出している企業に雇用してみないかと声を掛けるケースがほとんど」と弘前公共職業安定所の東司所長と津川光也次長は障害者の職業紹介の現状を明かした。
 専用求人は管内外の企業を合わせても80~90人程度。法定雇用率の引き上げに向けた求人数の増加もほとんどみられず、企業の動きは鈍い。一般求人を出す企業に障害者枠の雇用を持ち掛け、雇用機会を拡大している。
 同職安に登録している障害者は1月末現在で1143人。うち632人は就業しており、445人が求職中だ。年1回、津軽地区の公共職業安定所と合同で障害者を対象とした集団面接会を開いているほか、専用窓口で職員が応対し、就職後も定着指導を行っている。
 弘前職安管内の12年6月現在の障害者の実質雇用率は1・88%と法定雇用率を満たした。雇用者数は451人。企業数などが異なるため単純な比較はできないというが、県内の8職業安定所の中で雇用率は3位と高水準。ただ法定雇用率を達成したのは雇用義務がある企業のうちの半数以下だ。雇用はまだまだ浸透しているとはいえず、求人開拓は欠かせない。
 「企業だけの問題ではなく、社員も一体的に(障害に対して)理解しなければ定着していかない」という。
 「仕事を作り出すことが重要」「実習を受け入れて適性を見てほしい」。県内で障害者の就職を支援する関係者は口をそろえる。

 「(障害が)軽度の人が欲しいという声をよく聞く。重度だと働けないという思い込みが多い」と弘前市の津軽障害者就業・生活支援センターの長岡恵美子所長。「障害が重くても、真面目に頑張れる人もいる」と語る。
 同種のセンターが県内5カ所にあり、働きたい障害者と企業を結び付ける就業支援を行う。就職のために働きぶりを見てほしいと、企業には実習の受け入れを積極的に頼む。企業と本人にできること、できないことを理解させることで、能力と職種のマッチングを図っている。
 長岡所長は「(雇おうとする)企業のハードルを下げることが私たちの仕事」という。実習を受け入れた企業からは「意外に仕事ができる」という評価をもらうこともある。「うちには障害を持つ人ができる仕事がない」と言われることは多いが、できる仕事を見つけ出せばよい。「会社や本人が困った時のサポートも必要。支援担当者が定期的に企業を訪問し、継続して携わっている」

 県労政・能力開発課は「200人以下の企業は雇わなくても(ペナルティーが)何もない。県内は中小零細企業が多く、障害者だけ特別に雇うのは難しいという事情もある」と指摘する。それでも「助成金システムや就労後の支援もある。不安な企業は実習を受け入れてほしい」と呼び掛ける。
 県は障害者雇用促進ステップアップ事業として短期職場実習制度などを用意しているほか、県内の各地で雇用優良事業所の見学会も開催。障害者を雇うためのさまざまな支援や制度について知らない企業が多いことから、今年度は、相談機関や助成金制度などをまとめたパンフレットを作成した。法定雇用率の未達成企業を訪ね、財政面の援助などについて伝えている。
 同課は「雇用までの手法の周知も重要だろう。支援があることも知ってもらいたい」としている。

 「社会に認めてもらい、お金をもらう幸せを実現させたい」。関係機関へは障害を抱える人の家族からの相談も多い。法定雇用率が引き上がり、雇用機会の拡大に期待がかかるが、関係者からは「雇用率の数値だけにとらわれてはいけない」「本人を見て納得の上で雇ってほしい」との声も上がる。社内で必要な人材となり、就労を継続していくことが大切だ。障害を理解し、共に働く姿勢が企業に求められている。

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