日々燦句 (石﨑志亥)

 

朧夜や誰か来たよな来ぬやうな(秋元ヱミ子)

2018/3/29 木曜日

 

 「朧(おぼろ)」はうすぼんやりした状態をいうが、掲句は句全体が「おぼろ」を表現しているようで、俳句には珍しいように思う。大概は季語の〈朧夜〉が専ら季節感を担い、それ以外に何某(なにがし)かの措辞が連なる形である。掲句の設(しつら)えはそういう意味では異質。何ともおぼろな雰囲気が妖しく漂う。『新青森県句集第27集』所収。

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蕗の薹ひとつ開けばみな開く(三橋浩二)

2018/3/28 水曜日

 

 思わず合点するではないか。確かに一つ開けばあっという間に満開となる。もう少し「ゆるりと」と願いたいのだが。軽快でリズミカル。作者の俳句は明解で律動のあるものが多い。対象に対峙しての躊躇(ちゅうちょ)しない「切り取り」が鋭いその分説得力が増し感動が直截(ちょくせつ)に伝わってくる。『新青森県句集第27集』所収。

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残る雪街の気配に染まりけり(桜田花音)

2018/3/27 火曜日

 

 あの真っ白な雪が雪解けとともに黒い塊と化す。隠し続けた素顔を晒(さら)すかのように。〈街の気配に染まりけり〉と。薄汚れた残雪の醜さではなく、街の気配に染まるだけという繊細で肯定的な感覚には救われる。この冬、何か月も一緒に暮らしてきた雪へのシンパシーなのだろう。『新青森県句集第27集』所収。

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足裏に確かな大地春動く(増川律子)

2018/3/26 月曜日

 

 春の訪れを五官のどこで感じるかは人それぞれ。春の蠢動(しゅんどう)を足裏からとは、普段から大地を意識し、信頼を置いている人たちの感覚なのだろう。地に足の着いた逞(たくま)しさがある。アスファルト舗装の上からではいかにも心許(こころもと)ない。作者には〈畑打ちの畝の長さを悔ひてをり〉の句も。『新青森県句集第27集』所収。

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ふつふつと声出し初むる雪解畑(三上悠恵子)

2018/3/25 日曜日

 

 雪解畑(ゆきげばた)を〈ふつふつと声出し初むる〉などと捉える感覚には滅多(めった)にお目に掛かれない。雪解時の風景をさらっとなぞるのが一般的。春耕を待つ畑を擬人化することで、雪下の畑の想(おも)いを代弁させた。〈ふつふつと〉した声など聞いたこともないが、何と宣(のたも)うているのだろうか。『新青森県句集第27集』所収。

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