日々燦句 (石﨑志亥)

 

佞武多みな何を怒りて北の闇(成田千空)

2019/8/2 金曜日

 

 津軽では〈佞武多〉が終われば秋風が吹く、とよく言われたもの。作者の〈何を怒りて〉の出自はどこなのだろう。水滸伝三国志神話などの佞武多の題材からくるものか。仮にそうだとしても、恐らく半分は作者が畏怖し通底する津軽の「風土」に、残りは作者の深遠な思想に由来するものだろう。句集『白光』所収。

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沈黙を揺らして去りぬ夏の蝶(森下睦子)

2019/8/1 木曜日

 

 〈夏の蝶(ちょう)〉は春の蝶に比べ、大型で飛翔力があると言われる。空高く上って行く蝶をよく見かける。〈沈黙を揺らして去りぬ〉は夏蝶と作者の対峙(たいじ)の場面。水面に一石を投じて生じる波紋のように、今、無垢(むく)の沈黙が破られた。予定調和を裏切られた作者の動揺が伝わってくる。『青森県現代俳句年鑑2016年版』所収。

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五千歩に更に千歩の大夕焼(秋山邦男)

2019/7/31 水曜日

 

 〈大夕焼〉の景色は比類ない。夏の日盛りが過ぎて少し暑さの収まった頃、全天を蓋(おお)う夕焼けはとてもこの世のものとも思えない。生きとし生けるもの全てを赤く染める。この世の終わりでもあり、明日への序章でもある。〈五千歩に更(さら)に千歩の〉に天地(あめつち)の下に人間の暮らしがあることを知る。合同句集『水羊羹』所収。

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雲の峰青春はみな不定形(須郷権太)

2019/7/30 火曜日

 

 〈雲の峰〉は壮大勇壮な積乱雲のこと。あの真っ白に輝き、むくむくと膨らむ様は、まるで巨大な生きもの。高峰に喩(たと)えることにも合点がゆく。あのダイナミズムを〈青春はみな不定形〉と断定。青春の可能性と有為の未来を象徴しているということ。青春は常に不定形・多様でありたいもの。『新青森県句集第27集』所収。

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噴水のざんと止みたる高さかな(須賀ゆかり)

2019/7/29 月曜日

 

 同じような場面を目撃した人は多いのでは。吹き上がった〈噴水〉の塊がばざっと落ちて〈ざん〉と止(や)む。直後に裏切られた虚(むな)しさが広がり、世の無常を知る。写実を超えた臨場感と展開の鮮やかさは作者の秀逸な俳句力そのもの。〈高さかな〉が眼前の一部始終を見届ける証言者となった。『新青森県句集第28集』所収。

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