日々燦句 (石﨑志亥)

 

新米と太き字ありて母の便(浜田十三)

2018/9/29 土曜日

 

 故郷から届いた荷物に〈新米〉と太き字。親というのはいつまでも過剰な程に世話を焼く。子にとっては少々煩わしいが内心は嬉(うれ)しい。荷物の中身はというと、あれもこれもとまるで小さな百貨店の趣。幾つになっても親は親で子は子のまま。親子の絆とはそんなシンプルなものかも。『新青森県句集第29集』所収。

∆ページの先頭へ

百円玉入れて脱穀今年米(鳴海顔回)

2018/9/28 金曜日

 

 今年も出来秋を迎えた。最近「コイン精米所」が目に付く。手軽に好みの精米ができて便利なようだ。多様な食生活を求める現代人の欲求を満たすために描かれた景色なのだろう。滑稽・ユーモアのある句調に好感。〈百円玉入れて〉の感覚は現代俳句の枢要を語る一つの証しと見るが。『此岸第4号』所収。

∆ページの先頭へ

はみ出れば日本海なり稲雀(くどうひろこ)

2018/9/27 木曜日

 

 雀(すずめ)は身近な鳥の印象が強いが、今はその数が減っていると聞く。稲雀(いなすずめ)は実りの秋には欠かせない存在。勿論(もちろん)、害鳥という分類だろうが、あの愛らしさで随分得をしている。〈はみ出れば日本海なり〉が日常の萎縮を一気に解放する。「はみ出る」感覚がダイナミズムを呼び覚ますのだろう。『薫風俳句第6集』所収。

∆ページの先頭へ

立待ちや見慣れし町の屋根低く(かわむら紫穂)

2018/9/26 水曜日

 

 十五夜以後、十六夜(いざよい)、〈立待ち〉、居待(いまち)、臥待(ふしまち)、更待(ふけまち)と続く。古人の月を愛(め)でる思いの深さを思う。〈町の屋根低く〉連なる見慣れた家々の屋根を照らす月光が神秘的で美しい。自然と人工物の取り合わせの妙。作者の視点は、季節は異なるものの与謝蕪村の「夜色楼台図」を思い出させる。『此岸創刊号』所収。

∆ページの先頭へ

十六夜や自己も非自己も夢の中(成田唯央)

2018/9/25 火曜日

 

 〈十六夜(いざよい)〉は陰暦8月16日の夜の月。またはその夜をいう。〈自己〉が単なる自分自身を意味しているのかどうかは分からぬが、〈夢の中〉と言っているところを見ると、未(いま)だその定義が曖昧ということか。〈非自己〉も同様に。十六夜に思うことがあるのだ。独り思索の世界に遊ぶのも悪くはない。『此岸第4号』所収。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 6 7 8 ... 481

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード