日々燦句 (石﨑志亥)

 

どろどろと海に溶け入る大西日(野呂大蔵)

2019/8/7 水曜日

 

 盛夏の日差しは強烈。夕刻に至っても衰えを知らない。〈大西日〉は耐え難いほどの暑さとともにある苛酷な西日。情緒的な美しい入り日ではない。大西日が〈どろどろと海に溶け入る〉と詠む作者は、そこに阿鼻(あび)地獄に落ちて泣き叫ぶ人間の浅ましさや業を見ているのではないのか。『新青森県句集第29集』所収。

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石仏の石に戻りて原爆忌(泉風信子)

2019/8/6 火曜日

 

 石仏の石に戻りて原爆忌
 人形のだらりと棚に原爆忌
 6日と9日は〈原爆忌〉。6日が広島忌、9日が長崎忌。句集にはこの2句が並ぶ。おそらく意図的に。原爆資料館の光景かと思うが、「石仏」「人形」は原爆の威力もさりながら、人間の無慈悲と愚かさを示す証人なのだ。句集『遠花火』所収。

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家中を所狭しと夏休み(尾﨑半空)

2019/8/5 月曜日

 

 賑(にぎ)やかな様子が伝わってくる。子どものいる風景はいつも明るくて平和。無尽蔵の未来があると思うからだろう。この情景が〈夏休み〉の間だけの非日常的なものなのかどうかは分からぬが、巷(ちまた)に漂う「少子高齢化」などという重苦しい呪縛から一時(いっとき)だけ解放してくれることだけは確か。『新青森県句集第28集』所収。

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ふにやふにやと生きて酷暑のことを言ふ(福士光生)

2019/8/4 日曜日

 

 〈ふにやふにやと生きて〉は生き方への反省か。勿論(もちろん)謙虚の弁だろうが、わが身にもそっくり当てはまる。人間は我儘(わがまま)な生きもの。寒ければ寒いと言い、暑ければ暑いと遠慮なく言う。遠慮会釈なく〈酷暑のことを言ふ〉。これこそが最大の皮肉だろう。それとも最も人間的というべきか。句集『福士光生物語』所収。

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かはせみの影は流さず岩木川(齊藤君子)

2019/8/3 土曜日

 

 ゆったりと津軽平野を貫流する母なる岩木川。〈かはせみの影は流さず〉の風景が今もある。岩木川と「空飛ぶ宝石」と言われる翡翠(かわせみ)は恐らく相思相愛なのだろう。若干異なるが、草田男の「冬の水一枝の影も欺かず」を彷彿(ほうふつ)とさせる。欧米の人たちは「日本の川はまるで滝だ」というとか。『新青森県句集第28集』所収。

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