日々燦句 (石﨑志亥)

 

寝言また聞かされてゐる竹婦人(小川澄子)

2018/7/12 木曜日

 

 〈竹婦人〉。竹などで編んだ円筒状の籠(かご)の形をしたもの。寝苦しい夏の夜、抱いたり手足を凭(もた)せ掛けたりして涼をとる。如何(いか)にも涼しげで、どことなく艶めいた風情もある。夜通し一緒なら〈寝言また聞かされてゐる〉もむべなるかな。平穏な暮らしが続くことはしあわせなこと。『新青森県句集第28集』所収。

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夜半にふと耳うつ音や梅雨長し(飯塚昭子)

2018/7/11 水曜日

 

 〈梅雨長し〉は鬱陶(うっとう)しい。昔々からの暮らし故ことさら恨むではないが、蒸し暑さには閉口する。何(いず)れ梅雨は明ける。作者の梅雨のどこか肯定的な捉え方には救われる。〈夜半にふと耳うつ音〉を感じ取る覚醒した感覚は、何を思うのか。寝付けぬ夜半も嫌いではなさそうな。『新青森県句集第28集』所収。

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沙羅の花見上げて介護車を待ちぬ(小田桐耕雲)

2018/7/10 火曜日

 

 〈沙羅(さら)の花〉は平家物語冒頭の「祇園舎の鐘の聲、諸行無常の響あり。娑羅雙樹の花の色、盛者必衰のことはりをあらはす」で知られる。夏椿(つばき)とも。本来は「サラノキ」の花のこと。釈迦入滅の伝説に関わりがあるとも。見上げて介護車を待つ作者には何が去来するのだろう。『新青森県句集第28集』所収。

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東京は隙間なき街水中花(木村栄子)

2018/7/8 日曜日

 

 〈水中花〉には自分の意思で花を咲かせる楽しみがある。どこか孤独な営みのようだが、華やかさがぱあっと広がる快感は嬉(うれ)しい。ガラス容器の中の小宇宙は、窮屈で無機質な〈隙間なき街〉に棲(す)む東京人たちにいっとき涼と安らぎを与えてくれる。やはり東京が好きなのだ。『新青森県句集第28集』所収。

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下駄の緒のゆるみてゐたり蛍の夜(花田晶子)

2018/7/7 土曜日

 

 きょうは二十四節気の一つ小暑。わが国では昔から蛍の光に恋の思いを託して詩歌に詠んできた。蛍狩りは浮き浮きするもの。下駄(げた)の緒の弛(ゆる)みは作者には誤算であったろう。今日の〈蛍の夜〉はいつもとは違うのだ。想(おも)いの似た句がある。〈ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜〉桂信子。『文芸弘前第28号』所収。

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