日々燦句 (石﨑志亥)

 

叱られし子の泣きに来る芒原(土田紫翠)

2018/10/10 水曜日

 

 芒(すすき)は秋の七草の一つ。私の中の〈芒原〉は少しおどろおどろしいもの。一面の芒原には昔からそんな印象がある。狐(きつね)の妖怪が棲(す)む異界。叱られし子の泣きに来るがぴったりの空間。現実世界との往来ができると見えて、今日も色々な人が泣きに来る。作者の異質な世界観が覗(のぞ)く。『新青森県句集第29集』所収。

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かりがねやかぎ裂きひとつ繕ひぬ(橘すなお)

2018/10/8 月曜日

 

 きょうは二十四節気の一つの寒露(かんろ)。そろそろ今年も雁(かり)が北方から渡ってくるころ。古来、雁は「声の鳥」と言われてきた、〈かりがね〉とも。漢字で書けば「雁が音」。北方からの音信を伝える鳥との中国の故事もある。〈かぎ裂きひとつ繕ひぬ〉には冬支度の意味合いも込めているのだろう。『文芸弘前第28号』所収。

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山河あり運動会の赤と白(成田千空)

2018/10/7 日曜日

 

 〈運動会〉は秋の季語。今時の運動会はメニューも盛り沢山で賑(にぎ)やか。昔は徒競走が主。紅白に分かれて点数を競い合っていた。ただ走るだけなのだが、本気で走り、声を限りに応援していた。運動会は意外に皆の力を結束させ纏(まと)め上げる。〈山河あり〉の感覚は田舎育ちの私にはよく分かる。句集『忘年』所収。

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色鳥やついそこまでの男下駄(千葉禮子)

2018/10/6 土曜日

 

 〈色鳥〉。秋になって、色の美しい小鳥を目にするようになった。囀(さえず)りと共に澄んだ秋の空によく映える。最近は下駄(げた)のある風景も珍しくなった。〈ついそこまで〉の感覚はどこか懐かしい。女性が一寸(ちょっと)だけと突っ掛ける〈男下駄〉が作り出すリアリティ。さりげなさが更に臨場感を醸す。『新青森県句集第29集』所収。

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星月夜岩木にすべて星揃う(乳井光昭)

2018/10/5 金曜日

 

 〈星月夜〉。秋の夜は空気も澄んでいて星空が美しい。月のない夜の星の明るさはまるで月夜の如(ごと)く。中天を流れる天の川の輝きがその大役を担う。〈岩木にすべて星揃(そろ)う〉は言い得て妙。替えは利かない。俳人は難なく岩木山に星を揃えてしまう。発想の豊かさということに尽きる。『新青森県句集第28集』所収。

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