日々燦句 (石﨑志亥)

 

深空より甘き声曳き白鳥来(中崎良子)

2017/11/12 日曜日

 

 シベリアなどで繁殖し、冬季は温暖な日本各地で越冬する。〈深空より甘き声曳(ひ)き〉の白鳥の到着間近の描写は秀逸。白鳥飛来の措辞はこれに尽きる。ところで、彼らの渡りの生活はどれほど昔に始まったものなのか。あの重量での長旅はさぞ難儀なことだろう。神の配剤と思うしかない。『新青森県句集第27集』所収。

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四辺形出ること知らず冬の蜘蛛(田中広子)

2017/11/11 土曜日

 

 蜘蛛(くも)は実に上手に「蜘蛛の巣」という狩りの仕掛けを作る。〈四辺形出ること知らず〉の把握は示唆に富み感覚的。作者には、我々は意外と狭い世界に生きているのだという普遍的な認識がある。それは蜘蛛に限らず、人間も同じなのだと。しかし、現実の自分が不自由だとは微塵(みじん)も思っていない。句集『小鳥来る』所収。

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一日に用事はひとつ暮早し(尾崎半空)

2017/11/10 金曜日

 

 立冬が過ぎると急に日暮れが早くなる。冬至までは一目散。何かに急(せ)かされる。〈一日に用事はひとつ〉には共感。最近は幾つもの用事をまとめて済まそうにも、必ず何かを忘れる。綿密にコースを決めておいたのにである。もう嗤(わら)うしかない日々が多くなった。これも世の習いなのだろう。『新青森県句集第27集』所収。

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ことわりもなく留守に置く大根かな(春日祐)

2017/11/9 木曜日

 

 まだまだこんな習慣が残っているのだ。いつものことなのだろう。さりげなく大根を置いてゆく心遣いもありがたいが、何よりもそのさらっとした関係性が好ましい。お互い様なのだと思うが、互いの信頼が何よりの財産なのだ。そこにはコミュニティが長続きする秘訣(ひけつ)がありそうだ。『新青森県句集第27集』所収。

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小春日や路地から路地へ猫走る(菊池啓子)

2017/11/8 水曜日

 

 〈小春日〉はいったい何日くらいあるのだろう。精々5、6日程度のものか。ぽかぽかと暖かくゆったりとした時間が流れる。人間だけではなく、猫たちにとっても心地よさそうだ。〈路地から路地へ〉と走り回る。いつまでも続いてほしいと願うのだが、その分、怠惰には拍車がかかる。『新青森県句集第27集』所収。

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