日々燦句 (石﨑志亥)

 

山笑う前に家中の靴磨く(川村英幸)

2018/4/14 土曜日

 

 〈山笑う〉は木々が一斉に芽吹き始め、華やかな春の山の趣をいう。中国の古典を出自にする季語。作者は〈山笑う前に家中の靴磨く〉と。季節の移ろいを肌で感じとる。長い冬を抜けて、本格的な活動期に入る喜びを全身で受け止める。じわりと「滑稽」が溢(あふ)れ出る。俳趣が濃い。『新青森県句集第28集』所収。

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漱石の一句を想ふ菫かな(須郷権太)

2018/4/13 金曜日

 

 春の草花は視線の低い所から始まる。〈菫(すみれ)〉も可憐(かれん)でかわいらしい。物事の記憶は別の何かによって呼び覚まされることも多い。何かの理由に関連付けられているせいだろう。菫を見て〈漱石の一句を想ふ〉人は多いのでは。〈菫程な小さき人に生れたし〉は熊本時代の漱石30歳の句。『新青森県句集第28集』所収。

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たんぽぽや訛りを真似る転校生(坂本幽弦)

2018/4/12 木曜日

 

 たんぽぽの黄色が眩(まぶ)しい。転校生も新学期から1週間ぐらいたって、学校にも慣れてきたのでは。転校経験者はよく分かると思うが、多かれ少なかれ新天地に馴染(なじ)むまでは苦労がある。〈訛(なま)りを真似(まね)る〉は彼らなりの順応への方便みたいなもの。甘酸っぱい思い出でもある。『新青森県句集第28集』所収。

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春暁や蟹田の海は真平ら(築舘秋水)

2018/4/11 水曜日

 

 〈春暁〉は春の夜が明けようとしてまだ暗いころ。地名などの入った俳句からは詠み人の対象への「挨拶(あいさつ)」の意志が読み取れる。「挨拶句」は俳句のジャンルの一つ。単なる春暁の情景のようだが、〈蟹田の海〉には作者の敬意が込められている。真平らな蟹田の海が好きなのだろう。『合同句文集森のしづく』所収。

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辛夷咲き一手も空かぬ千手仏(佐々木一湖)

2018/4/10 火曜日

 

 青空に映える〈辛夷(こぶし)〉は間違いなく千両役者。木を覆う如(ごと)くに咲く白い花は豪華で贅沢(ぜいたく)。遠くからも目立つ。〈一手も空かぬ千手仏〉は言い得て妙。比喩の巧拙は俳句の命だが、千手でも足りない感じがよく伝わる。日々の暮らしの中の多忙さなどにも思いを馳(は)せているのかもしれない。『新青森県句集第27集』所収。

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