日々燦句 (石﨑志亥)

 

をりをりの冬日を仰ぎまた歩く(木村秋湖)

2019/12/6 金曜日

 

 〈冬日(ふゆひ)〉は冬の弱々しい日差しのこと。寒さが募ってくると、そんなささやかな冬の日差しが貴重でありがたい。〈をりをりの〉にその辺りの感謝の気持ちが感じ取れる。〈また歩く〉は作者の生き方の一つの象(かたち)であるのだろう。「生きる」とは日常を淡々と繰り返すことだと思っているが。『青森県句集第30集』所収。

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また一人遅れてきたり忘年会(大向美沙)

2019/12/5 木曜日

 

 〈忘年会〉は江戸時代の歳時記に「十二月下旬の内、年忘れとて父母兄弟親戚を饗(きょう)することあり。これ一とせの間、事なく過ぎしことを祝ふ意なるべし」とある。現代の忘年会はこの習俗に源があると。〈また一人遅れてきたり〉にも和気藹々(あいあい)と。何はともあれ、賑(にぎ)やかに祝い楽しむのが良い。『青森県句集第30集』所収。

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冬温し床屋のポールよく回り(秋山範子)

2019/12/4 水曜日

 

 殺風景な冬の暮らしにたまに訪れる〈冬温(ぬく)し〉にはどこかほっとする。張り詰めている分だけ余計にそう思うのだろう。街中の看板〈床屋のポール〉は年中そこにあるものだが、この句で俄然(がぜん)冬景色の中に輝きを放ち始めた。赤・白・青3色の〈床屋のポール〉は確かにくるくるとよく回る。合同句集『水羊羹』所収。

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折込チラシやたらに多く十二月(若井嘉津子)

2019/12/3 火曜日

 

 〈十二月〉は慌ただしく気が急(せ)く月である。新聞の〈折込チラシ〉も多目のようにも。集客チャンネルとしての広告宣伝効果はどれ程のものなのだろう。〈やたらに多く〉からすると、生活の情報源としての価値は大きそうだ。〈折込チラシ〉に〈十二月〉の本質を語らせる作者の感性は鋭い。『青森県句集第30集』所収。

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大根を嬰だくやうに貰ひけり(丹野慶子)

2019/12/2 月曜日

 

 〈大根〉の名称は大きな根の意味の大根(おおね)から。春の七草の「清白(すずしろ)」は大根のこと。〈嬰だくやうに貰(もら)ひ〉という仕種(しぐさ)に昔の日本の懐かしさのようなものを感じる。沢山(たくさん)貰った、ということはあるにしても、そこには控え目ながら品格が漂う。作者にとってはごく当たり前のことなのだろうが。『新青森県句集第28集』所収。

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