日々燦句 (石﨑志亥)

 

いもうとの墓へ秋草ひとつかみ(木附沢麦青)

2018/9/20 木曜日

 

 きょうは彼岸の入り。俳句では春の彼岸を「彼岸」、秋のそれは「秋彼岸」という。また、あの世に住む懐かしい魂たちとの交流が始まる。〈秋草のひとつかみ〉は素朴な供養の象(かたち)。優しさが溢(あふ)れる。何よりも供養する人の思いが大事なのだろう。兄の〈いもうと〉への思いはいつまでも変わらない。『木附沢麦青句集』所収。

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秋冷や居るべき場所に居らぬ人(須藤育子)

2018/9/19 水曜日

 

 〈秋冷〉は秋の大気全体から受ける冷ややかさのこと。落ち着いた季節だが、愁いのある寂しさも抱える。誰がどんな理由で〈居るべき場所に居らぬ人〉となっているのかは不明だが、作者の感じている不在感は大きい。他者には中々(なかなか)理解できなくとも、作者が良ければ、一向に構わぬこと。『文芸弘前第29号』所収。

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煎餅の大の字を噛み秋ひとり(津川あい)

2018/9/18 火曜日

 

 〈煎餅の大の字〉はどんな文字なのか。煎餅を齧(かじ)る時は耳を意識し、絵や文字のレリーフを意識する。〈秋ひとり〉を楽しむのも人生の一コマ。ただ、ここの煎餅を〈噛(か)み〉の感触は一寸(ちょっと)微妙だ。俳句は煎餅でも林檎(りんご)でも自分を刺激するものには食らいつく。食わず嫌いという言葉を知らない。句集『十六魂』所収。

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長生きを良しとせぬ母敬老日(中澤玲子)

2018/9/17 月曜日

 

 〈長生きを良しとせぬ母〉は、まだまだ元気で幸せだという証し。個々の思いは量りかねるが、それらは死生観に由来すること。私の終末への思いは若いころとは明らかに違う。口外を憚(はばか)るほど貪欲である。〈敬老日〉に来し方行く末にあれこれ思いを巡らすことは案外楽しいことなのでは。『文芸弘前第29号』所収。

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目の前を行き来の別れ秋の蝶(秋元ヱミ子)

2018/9/16 日曜日

 

 〈秋の蝶(ちょう)〉は春や夏の蝶のような華やかさはなく、小型で色合いも至って地味。〈目の前を行き来の別れ〉の解釈は難しい。読者独自の感じ方で良いとは言うものの、何故(なぜ)か作者の創作意図に近づきたいと拘(こだわ)る。〈秋の蝶〉は、今、作者が思い悩むことの象徴的な象(かたち)なのだ、と勝手に読む。『新青森県句集第29集』所収。

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