日々燦句 (高森ましら)

 

子のいない幸せもあり蝉の穴(須藤千和子)

2020/8/11 火曜日

 

 この句「幸せ」の定義が難しい。一般的には子供の存在は幸福と結びつくことが多いからだ。だから例えば子供には恵まれなかったが、それはそれで自分なりの人生が送れた、との述懐かもしれない。座五の「蝉(せみ)の穴」の暗示が深い鑑賞を要求する。
 『青森県句集』第31集より。

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遠雷の二三に風の募り来し(小杉智子)

2020/8/10 月曜日

 

 低気圧が近づくときの天候の変化がよく伝わってくる。遠雷といっても、雷光や雷鳴が分かる距離だから、ものの十数分で本体がやってくる。その先触れとして暖気を押し上げる冷気が届く。「募り来し」の表現がぴったりしよう。
 『青森県句集』第31集より。

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油蟬母の小言の降りしきる(藤田明子)

2020/8/9 日曜日

 

 セミの仲間でも「油蟬(あぶらぜみ)」はやや大型。その声はうるさく単調だが不快ではない。情緒的でないことが、逆に炎天での気分をすっきりとさせてくれるようでもある。「小言」と言ってはいるが、今はきつかった母からの学びを思い出しているのだ。
 『青森県句集』第31集より。

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虫送り村のはづれの小さき橋(竹浪克夫)

2020/8/8 土曜日

 

 「虫送り」は農作物への病虫害を祓(はら)う行事だが、村民の病魔や悪霊退散をも願っていよう。龍を象(かたど)った人形で練り歩き、村の境界で悪を追い払う。場の設定が的確な句だ。現在進行中の「コロナ禍」も封じ込めたいものである。
 『青森県句集』第31集より。

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七日日の水かけられて鬼を曳く(対馬智恵子)

2020/8/7 金曜日

 

 「七日日(なぬかび)」は青森ネブタでは運行の最終日。「鬼」は先祖の御魂(みたま)でもある。昼の運行だから、むろん掛ける水は暑さ対策だ。それと霊界との交流を意味するこの祭りの場の終焉(しゅうえん)を加速させる意図もあろう。水の浄(きよ)めで現実の世界に戻るのである。
 『青森県句集』第31集より。

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