日々燦句 (石﨑志亥)

 

寒夕焼ほそぼそ流る川にまで(黒滝綾子)

2020/1/22 水曜日

 

 雪国の冬の川は水量がぐんと減る。雪解けが始まるまでは、特に小さな川は細々とした流れがあるだけ。〈寒夕焼(かんゆやけ)〉は無彩色の中に暮らす者への贈り物である。空一面に映える夕焼けは神の業。それは〈ほそぼそ流る川〉までも赤く染める。そんな時間も束(つか)の間、そろそろ今日も日が暮れる。『青森県句集第30集』所収。

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葉牡丹の渦の緩びて姉の忌来(横野てつ)

2020/1/21 火曜日

 

 肉親ならずとも、忌日を迎えるたびに寂しさは募るもの。姉は〈葉牡丹(はぼたん)の渦の緩びて〉の頃に亡くなられたのだろう。その時季になると決まって姉のことを思い出す。その喪失感はこれから先もずっと続く。決して忘却の彼方(かなた)へなど去りはしない。「秋めくや姉の居ぬ町遠かりし」の句も。『青森県句集第30集』所収。

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大寒や見張りの鴉落ち着かず(田中空水)

2020/1/20 月曜日

 

 きょうは二十四節気の一つ〈大寒〉。これからは寒さの最も厳しい時季に入る。〈見張りの鴉(からす)落ち着かず〉とは鴉に一体何があったのか。心配になる。いつもは人間様を見下している狡猾(こうかつ)な鴉にしては珍しい。一句を貫くのは控え目なユーモア。作者は鴉の怪しげな挙動に関心を持ち始めた。『新青森県句集第27集』所収。

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雪ゆきゆき音立てぬもの怖ろしや(敦賀恵子)

2020/1/19 日曜日

 

 時々お伽噺(とぎばなし)のように降る雪なら楽しくもあり、風情もあるのだろうが、津軽の雪はそんなに生易しくはない。〈音立てぬもの〉には得体(えたい)の知れぬ恐怖が募る。音もなく降る雪はいつ止(や)むとも知れず、まさに〈怖(おそ)ろしや〉を肌で感じる。雪国人の持つ雪への潜在的な恐怖感を巧みに描き出す。『新青森県句集第27集』所収。

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母語る寒落日の松花江(須郷権太)

2020/1/18 土曜日

 

 松花江(しょうかこう)は中国東北部を流れる大河。冬季は凍結するという。母が語るのはかつて所謂(いわゆる)「満州」で見た〈寒落日〉の風景だろう。作者は美しい極寒の落日の話を何度となく聞いた。恐らく満州からの引き揚げの苦難とともに語られたもの。抑制を効かせた吟詠に真実の持つ重みをひしと感じる。『青森県句集第30集』所収。

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