日々燦句 (石﨑志亥)

 

義士の日に誘ひ合ふ友ありにけり(千葉新一)

2019/12/14 土曜日

 

 〈義士の日〉は元禄15(1702)年、赤穂義士四十七人が江戸本所の吉良邸に討ち入り、主君浅野内匠頭の仇(あだ)を報いた日。「忠臣蔵」でお馴染(なじ)み。同士の結束の固さが称賛を受ける。キーワードは「信頼」か。〈誘ひ合ふ友あり〉は幸せなこと。生涯に良き友のあることは何よりの財産という。『新青森県句集第28集』所収。

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長靴を履き冬帝に拝謁す(郡川宏一)

2019/12/13 金曜日

 

 コミカルな作品。それらは滑稽とユーモアへと繋(つな)がってゆく。冬を司(つかさど)る神〈冬帝(とうてい)〉に拝謁する際のドレスコードは分からないが、〈長靴を履き〉はどう見ても普段使い。冬を迎えるに当たって、作者自身への戒めと心構えを説いているのだろう。春を迎えるまで当分、冬帝との真剣勝負が続く。『青森県句集第30集』所収。

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母の編むセーター母の匂して(橘すなお)

2019/12/12 木曜日

 

 〈母の匂(におい)〉は幼い頃の微(かす)かな記憶に繋(つな)がっている。恐らく一生忘れることはない。アイデンティティーの大事な一部分である。母が編んでくれる〈セーター〉はいつも母の匂いがしていた。今もその匂いが好きで懐かしい。作者は嬉(うれ)しいにつけ淋(さび)しいにつけ、いつも母に会いに行く。『さわやか合同句集第12集』所収。

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倉庫みな鉄の扉や冬の黙(高野万津江)

2019/12/11 水曜日

 

 〈冬の黙(もだ)〉が一句を統(す)べる。「黙」は黙っていることの意。〈冬の黙〉は一見無口には見えても、決して思考を停止している訳ではない。己の命の循環の中であれこれ考えている。〈倉庫みな鉄の扉〉の堅固さも〈冬の黙〉を補強する。そんな中で、作者は同じように種々思考を巡らすのである。『百鳥俳句選集第Ⅳ集』所収。

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風花が別の時間の隙間より(泉風信子)

2019/12/10 火曜日

 

 〈風花(かざはな)〉は空が晴れているのに雪が舞う現象。雪片が風に吹かれて花のように舞うところからの名。この季語の美しさは別次元の趣がある。ところで、風花が来るという〈別の時間の隙間〉とはどこなのだろうか。加えてこのフレーズは極めて詩的である。風信子俳句はその詩性が際立つ。『新青森県句集第27集』所収。

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