日々燦句 (石﨑志亥)

 

行く処あって幸せ秋の雲(蒲田幸子)

2019/9/15 日曜日

 

 雲は季節を先取りする。鰯雲(いわしぐも)、鱗雲(うろこぐも)などの〈秋の雲〉は子供の頃から誰もが知る。しかし後に冬を控えるせいかどこか寂しげ。〈行く処(ところ)あって幸せ〉は帰属が明確なこと故の幸せなのであろう。因(ちな)みに「幸」は刑罰の道具、手枷(てかせ)の形。手枷の刑ですめば僥倖(ぎょうこう)であり「さいわい」なことなのだと。『新青森県句集第29集』所収。

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いくたびも出て見て無月諾へり(山田光湖)

2019/9/14 土曜日

 

 昨日は十五夜だったが満月は今日。〈無月(むげつ)〉は陰暦8月15日の夜、曇っていて名月が見えないこと。それでもどことなく空はほの明るくて満月を感じる。雨天で名月が見えないのは「雨月(うげつ)」。〈いくたびも出て見て〉に残念さが籠もるが納得はしている。無月にも雨月にも名月への拘(こだわ)りがある。『青嶺季語別句集Ⅱ』所収。

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家族みな縁に揃ひて良夜かな(葛西栄子)

2019/9/13 金曜日

 

 〈良夜〉は「中秋の名月」の夜のこと。最近は薄(すすき)や月見団子、枝豆などのお供えをしての観月はめっきり少なくなった。日本人は昔から月を愛(め)でて来たと言われるが、今夜の月は特別。〈家族みな縁に揃(そろ)ひて〉の良夜はかけがえのない幸せな情景。この風習は長く続けて欲しいものだ。『さわやか合同句集第12集』所収。

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束にしてなほも寂しき桔梗かな(岩渕玲子)

2019/9/12 木曜日

 

 〈桔梗(ききょう)〉は秋の七草の一つ。『万葉集』にも「朝顔」として登場。青紫の花はいかにも日本古来の草花という感じがするが、絶滅危惧種と聞いて心が痛む。昔あった煙管(きせる)用の刻みたばこ「ききょう」の包装に描かれていた桔梗の絵が印象に残っている。作者の〈寂しき〉はどこから来るのだろうか。『薫風俳句第6集』所収。

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秋蝶の延命という弱弱しさ(後藤岑生)

2019/9/11 水曜日

 

 秋蝶(あきちょう)は小型で地味なものが多く、草の花を一つひとつ訪ね回る。厳しい冬への意識があるのだろう。〈延命という弱弱しさ〉は意表を突く把握。彼らは延命を選択し、弱々しさを受け入れた。それが彼らの生き方なのだろうが、自然界の「生きのびる」ためのプログラムは強靭(きょうじん)である。『新青森県句集第27集』所収。

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