日々燦句 (石﨑志亥)

 

どっくどっくと脈打っている大青田(後藤瑞江)

2019/7/19 金曜日

 

 〈大青田〉は穂が出る前の旺盛な青田。〈どっくどっく〉と脈打つ感覚の理解は容易(たやす)くはないが、稲の盛りのことを思えば、少しも大袈裟(おおげさ)ではない。どこか人間臭さがあって共感できる。これは、青田も人間も同じく地球という小惑星で、共に「生きるもの」という思想の上に立つからだろうか。『新青森県句集第28集』所収。

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鍵閉めて出かける娘夏の風(田浦恵美子)

2019/7/18 木曜日

 

 この風景の中の母は少し寂しそうである。母と娘の間に新たな関係性が生じた瞬間。何を言うでもないが、そこには微妙な空気が流れる。母の体から何かが離れ、その分娘が大人になって行く。〈鍵閉めて出かける〉は母と娘の心模様の機微を表して象徴的。母は〈夏の風〉に救われたか。『新青森県句集第27集』所収。

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喉仏無くても美味し缶ビール(榊せい子)

2019/7/17 水曜日

 

 今でこそ女性がビールジョッキ片手に楽しんでいても何の違和感もないが、昔は「女だてらに」の心無い言葉が珍しくなかった。今なら間違いなくハラスメントに当たる。つくづくよい時代になったものだと思う。〈喉仏無くても〉に僅かに時代の残渣(ざんさ)と作者の遠慮があるような気がする。『青森県句集第30集』所収。

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青田風ふところに入れ背より抜く(福士岬人)

2019/7/14 日曜日

 

 青田がそこにあるだけで安心する。稲作は弥生時代前期には本州全土に伝わっていたという。青田は我々の原風景の一つ。一面の“青”が描き出すモノトーンの世界は精神を癒(いや)してくれる。さらさらの〈青田風〉を〈ふところに入れ背より抜く〉心地よさは弥生人が味わっていたのと同じもの。遺句集『数へ日』所収。

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半眼をふつとゆるめて蟇(吉田千嘉子)

2019/7/13 土曜日

 

 半眼をふっとゆるめるのは〈蟇(ひきがえる)〉だと思うが、両者の静かなる対峙(たいじ)が何とも興味深い。少し滑稽な雰囲気も漂う。2人の間には恐らく哲学的な問答があったはず。お互いに何を思うて何を語ったのだろうか。今も時々は彼との2人だけの対話が続いているのだろうか。精神性の高さに魅(ひ)かれる。句集『一滴の』所収。

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