県立高校再編-少子化の中の教育を問う-

 

第3次計画の背景=1

2012/8/26 日曜日

 

 高校再編計画「県立高校教育改革第3次実施計画(後期)」案をめぐる地区説明会や市町村長向けの説明会が終了した。県教委は少子化が進む中であっても、充実した高校教育、水準を保とうと一定規模以上の高校の重要性を示し、統廃合を含んだ再編が不可避と訴える。一方、住民や首長は少子化の現状を理解しつつも地域の実情を踏まえた個別の対応を求め、議論は平行線をたどったままだ。8月末の県民意見募集期間の締め切りも迫る中、計画の背景や中南地区を中心とした住民の反応、求められる教育について探る。
 子どもたちの進路意識の多様化など高校教育を取り巻く環境変化に加え、中学校卒業予定者はこの30年間でほぼ半数までに減少する。
 特に少子化の影響は深刻で、県教委の推計で、後期計画期間の2014年度からの4年間で962人減少、その後、18年度からの4年間では2293人減少するという「生徒急減期」が待ち構える。
 こうした少子化の進行に伴い、各高校の小規模化が課題となってきた。県立高校の教員配置数は、募集定員で決まるため、教員が減ることで生徒が選択できる教科や科目数が減り、進路を狭める可能性をはらむ。さらには部活動や学校行事など充実した高校生活を送るということ自体にも影響が出てくると懸念される。
 県立高校教育改革第3次実施計画では、有識者らでつくる「高等学校グランドデザイン会議」の答申を踏まえ、09年度以降の10年間を見通した基本的な考え方を示している。ここでは生徒同士が切(せっ)磋(さ)琢(たく)磨(ま)できる環境を整えるため、一定規模以上の学校の必要性を指摘。「望ましい学校規模」について、弘前、青森、八戸の3市普通高校は1学年当たり6学級以上。その他の全ての高校については1学年当たり4学級以上としている。
 09年度から13年度までの前期計画では、中南地区で弘中央と黒石の定時制のほか、全日制は弘南大鰐校舎、尾上を募集停止して対応。
 生徒急減期に対応し1年前倒して17年度までとした後期計画案では、削減が必要な学級数は県内全体で19学級とし、中南地区は岩木と弘実藤崎校舎を募集停止、弘前、黒石、弘実をそれぞれ1学級減の計6学級減とした。西北地区でも学級減を行い、中里は1学級減を行った上で校舎制への移行が盛り込まれた。
 橋本都教育長は後期計画案について「望ましい学校規模になるよう進め、他の県立高校に通うことが困難な地域があることなどにも配慮し、柔軟な学校配置を行う」との考えを示すが、地域からは「要望書や署名が反映されない」「高校がなくなることは地域経済にも影響を与える」「このまま進めると一つしかない高校がゼロになる」など切実な声も聞かれる。生徒減少に対応するという共通認識を基盤としながらも、それぞれの地域が深刻な問題として個別の対応を望んでいるのが実情だ。

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地域の反応・弘実藤崎=2

2012/8/27 月曜日

 

藤崎校舎で学ぶ齊藤雄成君。リンゴ農家を目指し、自宅の前に広がる畑で実践を積んでいる=弘前市内

 「藤崎校舎でりんご職人を育てよう」―。弘実藤崎校舎父母会会長の齊藤知香子さん(44)=弘前市=は9日、藤崎町で開かれた県立高校教育改革第3次実施計画(後期)案の説明会に手書きのプラカードを持ち込み思いをアピールした。7月に弘前市で行われた計画案の説明会に参加し、「質疑応答の時間が短過ぎる」と感じたからだった。
 県教委は藤崎校舎を2015年度に募集停止16年度に閉校し教育内容は柏農に引き継ぐ方針説明会では「専門的な内容を柏農でやれるのか」と疑問視する意見も上がった。
 柏農は生物生産、環境工学、食品科学、生活科学の4学科があり、どの学科でもリンゴの栽培を学ぶことができる。果樹園の面積は166アールで、このうちリンゴ園は145アールを占める。
 教育内容を引き継ぐ案について柏農の齋藤敏昭校長は「今はあくまで案の段階なので、軽々には言えない」と述べるにとどめた。
 藤崎校舎の存続を求める署名が5万9000人近く集まるなど県教委の方針に反発する動きが目立つ中、少子化に歯止めがかからない現実を見据え、閉校はやむを得ないとの声もある。
 県立高校の教員数は、生徒数に比例して配置される。藤崎校舎はりんご科だけで、定員は1学年40人。以前、同校に勤務した60代の教育関係者は「教員数が少ないため教員の負担が大きい。卒業後、農家になる生徒も1、2割程度」と指摘。「閉校後は農場を活用し、若者に無償で貸し出してリンゴ栽培を学ばせる場にしては」と提案する。
 一方で、藤崎校舎のきめ細やかな教育を評価する人は少なくない。弘前市のある中学校の校長は「生徒に目が行き届き、丁寧な指導ができるとの評判がある」と小規模校の
利点を挙げ、別の中学校長も「柏農は弘前から遠いので、子ども
たちの選択肢に入りづらくなる」と心配する。
 藤崎校舎同窓会(太田昌文会長)は保護者会などに呼び掛け、9月の定例県議会に存続を求める請願を提出する予定。太田会長は「私たちは負けない。チャンスがあるうちは主張したい」と語る。
 齊藤さんの次男雄成君(17)は藤崎校舎でリンゴ栽培を学んでいる。農家だった祖母が他界し、別の仕事に就いた父親に代わって農業の道を志した。
 齊藤さんは「少子化だからこそ、農業を守るために将来の農家をどう育てるか考えなければ。そのためには農業の魅力を伝え、一人ひとりを大切にする少人数教育が必要」と藤崎校舎の存続を訴える。

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地域の反応・岩木高=3

2012/8/28 火曜日

 

8日に岩木地区で開かれた計画案の説明会には約70人が参加。岩木高校の存続を求める声が相次いだ

 小規模校にも良さがある―。1学年2学級の岩木高校。弘前市岩木地区(旧岩木町)にある唯一の高校だが、県立高校教育改革第3次実施計画案では弘前市内に他に通学可能な学校があるとし、2015年度から募集停止としている。県教委は同市の普通高校は1学年6学級以上が望ましいとし、他校への通学が困難な場合を除いて6学級以上になるよう統廃合する方針だ。だが岩木高校には岩木地区外からも多くの生徒が通う。市内の教育関係者らは「小規模校でも良い教育が出来る」と疑問を投げ掛ける。
県教委は6学級以上とする理由について(1)生徒数が減ると教員数が減り、幅広い教科の展開ができない(2)生徒数が少ないと部活動等の教育が困難なこと―などを挙げている。だが弘前市内のある中学校校長は「1学年6学級にこだわる必要はない」との見解を示す。
さらに「学校数が減ると、いずれは一校の中でも学力幅が大きくなり、指導が難しくなる。結果的に教育の質の確保ができなくなるのでは」と統廃合で学校規模を維持することの問題点を指摘した。
別の中学校の校長も「小規模校の方が生徒に目が届きやすい」とメリットを挙げる。同高校PTA副会長の五十嵐清勇さん(48)も「子ども同士の結び付きが強く仲が良い。(生徒数が)少ないなりの良さがある」と感じており「なぜ岩木高校が募集停止の対象なのか」と存続を求めた。
岩木高校は分校から旧岩木村、大浦村の二カ村学校組合立、岩木町立を経て1978年に県立高校となった経緯がある。元教職員の60代男性は「地元の手で育てられてきた地域に密着した学校。地元の声にできるだけ応えてほしい」と願う。
同校の志願者倍率(前期)は2011年度が1・79倍、2012年度が1・38倍と中南地区でも高倍率を維持している。8日に県教委が岩木地区で開いた説明会で真っ先に募集停止について質問した同窓会の舘浦幸彦副会長も「地域と共に発展してきた学校。倍率は高く、岩木地区内には岩木高校に行きたくても成績のレベルで行けない生徒もいる。県に存続を強く主張していきたい」と話す。
同校同窓会は31日に県、県教委、県議会の3者に、存続を求める嘆願書を提出する。
生徒の選択肢が減ることへの疑問の声も上がる。弘前市の公立の普通高校は4校。市内の中学校の男性教諭(43)は「多くの生徒が県立の普通科を志望している。募集停止になると保護者らの金銭面への影響も大きいのでは」と心配した。
「生徒数が今後減るので、今まで以上に生徒と強く関わる体制があってもいいのでは」と、現場の多くの関係者が要望している。

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求められる制度とは=4・完

2012/8/29 水曜日

 

第3次実施計画(後期)案については弘前市も岩木高校の募集停止などの見直しを求めている(写真は7月25日に、県庁で行われた市の県に対する重点要望説明)

 「少子化や核家族化が進む影響もあり、不登校などの問題を抱える生徒が増えている」と弘前市内の複数の教育関係者は指摘する。少子化は確実に進んでおり、高校進学者の減少は避けられない。県教委は2000年度から教育改革を進めてきたが、今後も大幅な減少が続く。県立高校の募集人数も生徒数の減少に沿うよう変更することが求められているものの、社会情勢に合った教育制度の在り方も問われている。
 「公教育は万人のための教育」と弘前市の中学校の男性教諭。「いろいろな価値観を持った子どもたちにどのようにアプローチしていくかを考える必要がある」と教育の在り方について話した。
 別の中学校の校長は「社会や子どもたちの状況が変わってきているからこそ、地域における学校の重要性が高まっている」と強調。「予算の問題があるという事情は分かるが、生徒数と教員数の関係を見直す時期に来ているのでは」と指摘する。
 高校卒業後の進学率は全国的に増加傾向にあり、大学や各種専門学校等の入学試験にはさまざまな科目がある。生徒の進路を考えると多様な教科の展開が求められ、専門教員を多く配置できる高校が必要となる。
 だが計画案に関する弘前市での地区説明会で、ある高校教諭は「人数が多くても、専門教員がそろうのは難しい。専門ではない教員が教えることもある」と話しており、教員数が多いからといって、必ずしも幅広い科目展開ができるわけではない。
 さらに生徒数によって決まる教員数は条例改正により変更でき、小規模校に現状より多くの教員数を配置することが可能だという。国は公立高校の標準教員数を生徒数に応じて定めており、県はそれに基づき県立高校の教職員数を定めている。だが文部科学省財務課によると、あくまで標準的な数字を示すもので「上回る場合は教育にとって良い方向でもあり、問題はない。自治体による柔軟な配置ができる」としている
 少子化が進む中での教育について弘前大学教育学部の平田淳准教授(教育行政学)は「教育論としては少子化イコール統廃合とは必ずしもならない。むしろ学校数・教員数を維持することで教員1人当たり生徒数が減り、教育の質は高まる。だが自治体の財政面を考えると難しいのが実情だろう」と話す
 ただ「学力や教育内容なども含め、どういった子どもを支えているかなど、各校特有の社会的機能を考える必要がある。また時間がかかっても(統廃合の)当事者がなるべく納得する形で計画段階から意思決定に関わることが重要。統廃合にはそれだけ時間をかけてもよいし、ここで信頼を失うとその後の教育に支障が出る」としている。
 県教委は県立高校教育改革第3次実施計画(後期)案に関する県民の意見公募(パブリックコメント)を31日まで実施している。さまざまな声が上がっており、少子化が進む中で“新しい教育”を県民一丸となって考える必要があるだろう。

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