長内さんと全国手工芸コンクール受賞作(右)
長内さんの刺し子作品のごく一部

 「昨年の冬は寒くて雪解けも遅かったでしょう。それで雪をこぎんで表現したいと作ったものなんですよ」。弘前市の長内レイさん(70)は「津軽の雪解け」と名付けたこぎん刺しの自作に込めた思いを語り始めた。雪の結晶のような模様が見事なその作品は、兵庫県などが主催し今年10月に開かれた「第25回全国手工芸コンクール」で兵庫県議会議長賞を受賞。文部科学大臣賞、兵庫県知事賞に次ぐ賞で、全国から集まった約250点の中からベスト3に選ばれた。
 こぎん刺しは東北各地に伝わる刺し子の中で三大技法の一つに数えられる。長内さんは昨年のコンクールに刺し子を出品したが入選にとどまり、こぎん刺しで再チャレンジ。審査員を引き付けるにはネーミングも凝る必要があると考え、そこからデザインを始めた。
 少女時代から培った洋裁技術を生かし、紺色のウール地で女性用のベストと巻きスカート、手提げかばんの組み合わせにした。全体の印象を決定付ける模様の配置は、仮縫いの後に決める。縫い合わせたり、ボタンを留めた際に模様がちぐはぐにならないよう細かな計算も要する。ベストには白の糸を全面に刺した総刺しで降り積もった雪を表現、巻きスカートは雪解けのイメージで単一模様を散らした。
 コンクールの審査員は関西地方の美術工芸の関係者らが中心。長内さんは「津軽のこぎん刺しも現代風にアレンジできることをお伝えしたかった」と受賞を喜ぶ。
 長内さんのこぎん歴は半世紀に及ぶ。鯵ケ沢高校に通っていた頃、家庭科の先生が持っていた小物の刺しゅうに目が留まり、こぎん刺しと知った。もともと針仕事が好きだったため見よう見まねで覚え、製作を頼まれるまでに上達した。五所川原市の洋裁学校に進み、その学校に就職。26歳で結婚、婚家の協力で自宅別棟に洋裁教室を一時構えたが、夫の転勤に伴って東北各地に移り住みながら刺し子も覚えた。
 洋裁と刺し子・こぎん刺しの高い技術で、これまで生み出した作品は数知れない。これまで3度個展を開催し、2010年にファッション雑誌「レディブティック」のリフォーム大賞を受賞した。古布に刺し子をすることで印象を変え、リフォームする技に高い評価を得た。県展では10、11年の2度優秀賞を獲得している。
 「目標があれば張り合いもある」。そう話す長内さんは、家で過ごす時も外出の時も常に刺し子と一緒だ。再訪した日も、黒地に映えるグリーンの刺し子が胸元を華やかにしたエプロンを着けていた。刺し子と共に生き、「針は分身」という。
 裁縫のし過ぎで肩凝りがひどく、腰を痛めることもある。目を酷使するこぎん刺しは難しくなりつつあるが、「体調が悪くても仕事場(アトリエ)にいれば難なく過ごせる。手だけは休めないつもり」と、柔らかなほほ笑みを浮かべた。

 

 

 こぎんと共に エピソード2013・完