山端さん(右)考案のこぎん模様の照明と、界津軽の西岡総支配人=8日
山端さん(左)と客室づくりを話し合う界津軽のスタッフら

 宿泊客を客室へと導く照明器具。点灯するとこぎん刺しの模様が浮かび上がった。「照明は(客室棟などに)42ありますが、模様は一つ一つ違うんですよ」。大鰐町の温泉旅館「星野リゾート界 津軽」(以下、界津軽)の総支配人、西岡孝さん(35)=神奈川県出身=が案内する。閑静な高級旅館を演出するオリジナルの照明は、こぎん模様を切り抜いた紙を照明カバーにはめ込んだだけという、こぎん刺しの既成概念を打ち破るアイデアから生まれた。掛かった費用は至って低額という。
 考案したのは、おいらせ町出身で東京都在住のグラフィックデザイナー山端家昌さん(30)。界津軽は今、山端さんと一緒に「ご当地部屋」プロジェクトを進めている。数寄屋造りの離れ(特別室)1室を「津軽こぎんの間」としてリニューアルし、来年3月から受け入れる予定だ。
 星野リゾート(長野県)は全国の旅館、ホテルの再生を手掛けることで知られる。2010年に錦永(同町)から「南津軽錦水」の運営業務を受託し、翌年10月に界津軽へ改称。「敷居が高いという錦水のイメージを払拭(ふっしょく)するとともに、差別化を図る必要があった」と西岡総支配人。
 星野リゾートは全国10カ所の「界」でご当地部屋を展開。石川県山代温泉の加賀友禅、神奈川県箱根温泉の箱根寄せ木細工など、土地に根差した伝統文化とのコラボレーションに力を入れている。界津軽では津軽塗やびいどろ(ガラス)といった「オール津軽」の路線も浮上したが、インターネットサイト「kogin・net(こぎんネット)」を主宰する山端さんを知り、こぎんに特化することに。西岡総支配人は「伝統を踏襲しながらも、布物に刺すという枠を超えた可能性に挑戦する山端さんの姿勢が、界のブランドコンセプトとマッチした」と話す。
 今月8日、特別室に山端さんを囲んでプロジェクトのスタッフらが集まった。山端さんは「こぎんの伝統を知るためのさまざまなアプローチを用意し、津軽らしい場所にしたい」と構想を披露した
 照明カバーのアイデアをはじめ、山端さんの作品は多くが針と布を必要としない。アクリル樹脂など異素材でこぎん模様のオブジェを創ったり、プリントした服飾小物をネット販売したりするなど柔軟な発想で活用の幅を広げている。今回のプロジェクトでは特別室の全面ガラス張りの縁側に注目し、障子を使ったユニークで大掛かりな演出を提案。厄介者とされる雪が待ち遠しくなるようなアイデアも飛び出した。
 西岡総支配人は「早速具現化したい」とうなずきながら、「数寄屋造りの離れの(一般的な)イメージで来られるお客さまは驚くかもしれません。が、批判を恐れずに津軽の風土、気候、文化が表現できる部屋づくりを目指したい」と意気込んだ。