津軽開業 第4部 広域連携(2010・7・20~7・24)

 

活性化へ動き急=1

2010/7/21 水曜日

 

 昨年4月、県内8市町が提案した「新たな青森の旅・十和田湖広域観光圏」が国の観光圏整備法に基づき認定を受けた。東北新幹線のターミナルとなる青森、八戸の両市とサブターミナルとなる七戸町に加え、十和田、三沢、六戸、東北、おいらせの5市町の地域資源を結び、連泊が可能な「観光8の字ルート」を形成。これにより、2013年の圏域観光客数と宿泊者数を07年比でそれぞれ6%、15%増やす計画だ。
 県観光統計によると、同圏域の宿泊客は年々減少し、07年は203万人。一方で日帰り客は1726万人と、新幹線八戸駅開業(02年)を境に増加した。
 宿泊客の減少は県全体の傾向で、入り込み客数に占める割合は05年の9・2%に対し、09年は8・6%に低下した。新幹線の新青森駅延伸で移動時間が短縮されれば“日帰り化”が一層進むことが懸念され、経済効果は限定的となる。8市町の観光圏づくりは、そうした危機意識が背景にある。
  ◇    ◇
 観光立国を目指す国は、08年10月に観光庁を新設。柱の一つとなる観光圏整備法を施行し、40%を上限に国庫補助金を交付するなど複数の自治体による滞在型観光圏づくりを促す。08年度から10年度の3年間で認定した観光圏は、本県の「新たな青森の旅―」を含め全国45地域に上る。
 「国際競争力の高い魅力ある観光地づくりを推進することで、産業活性化と交流人口拡大による地域発展を図る」と同庁。
 観光産業はすそ野が広く、交流人口の拡大で雇用が生まれ、地域活性化の切り札になるとの期待が大きい。一方で地方経済は過疎化や第1次産業の衰退、長引く不況で疲弊し行政の歳入が減少。観光関連に充てる予算も縮小傾向にある。
 JTB東北青森支店の鈴木雅之支店長は「小さな枠では誘客に限界がある。『おらが町』の意識を取り払い、広域的に連携することで大きな効果を発揮する」と説く。
  ◇    ◇
 陸奥新報社の調べによると、新幹線開業を目前にして広域観光を柱とした組織の立ち上げが相次いでいる=表参照。従来の行政区域にとどまらず、津軽と県南地方が手を携えたり、秋田県北が参画する動きが出てきた。一方で、地域によって取り組みへの意識や実績に差がある。
 鈴木支店長は「青森県の豊富で新鮮な食材に観光客の期待は大きいが、地元の取り組みは十分と言えない」とし「広域観光を商品化し、旅行客に訴求するにはストーリー(物語)が必要」と指摘する。
 地域間競争が激しさを増す中、発信力の強い地域ブランドやイメージづくり、スケールメリットを生かした効率的な事業運営のため、複数の自治体や民間組織、事業者らが足並みをそろえた戦略が不可欠となっている。
  ◇    ◇
 第4部では、新幹線開業を契機に活発化する広域連携について、津軽地方の現状と課題を取材した。

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中弘南黒地域(上)=2

 

6月4日に黒石市内で開かれた津軽地域観光団体事務局連絡会議

 「新幹線効果を最大限に持続させるには、一つの街だけでは限界がある」。今年1月、弘前市内のホテルで開かれた初の津軽地域観光協会会長サミットで、清藤哲夫弘前観光コンベンション協会長は地域連携の必要性を訴えた。
 同協会は昨年から周辺地域の観光協会に声掛けし、連携の在り方を模索してきた。サミットは、中弘南黒地域と秋田県大館市の各観光協会長ら9人が出席し、清藤会長が「それぞれの素晴らしい観光資源を線で結び、お互いの弱点を補い合って有効最大限に生かしたい」と呼び掛けた。各会長は、観光振興と地域経済発展へスクラムを組むことを確認し合った。
  ◇    ◇
 現在、サミットの流れを引き継いで津軽地域観光団体事務局連絡会議(仮称)が継続的に開かれている。各観光協会の事務レベルの会議で、津軽を周遊する観光プランの創出、観光情報発信の一元化、コンベンション誘致、新幹線全線開業当日に合わせたイベントなど、共同事業実施へ調整が続いている。
 第5回会議は6月4日、黒石市内で開かれた。大館市観光協会は石田雄一会長が自ら出席し、「市民のほとんどは観光資源のない街という意識だが、皆さんと地域の魅力を磨き上げ、PRし合えればいい」と述べ、津軽との連携に期待を込めた。同協会は今月から観光案内人の育成をスタートさせたほか、新たな観光資源の発掘も進めており、意欲的だ。
 津軽・秋田県北エリアにある観光資源の合計は500以上あり、会議ではそれらを組み合わせた複数の観光モデルコースの設定に入っている。9月をめどにコースを完成させ、モニターツアーも実施する。
  ◇    ◇
 会議事務局の弘前観光コンベンション協会の今井二三夫専務理事は「今やっていることは全線開業だけのためではない。函館、札幌まで新幹線が延びたとき、津軽地域が観光で生き延びていくことが最終目標」と語る。
 津軽と秋田県北は、東北新幹線と秋田新幹線の終着駅の間に位置し、地域連携することで双方から訪れる旅行者に地域の魅力を一体的に提案できる。旅のコースが確立されれば、函館、札幌まで新幹線が延びた際に、北海道側からの誘客にも生かせる。
 今井専務理事は津軽・秋田県北の連携を「地域が生き残るための10年計画」の一環と位置付ける。「開発した旅行商品は北海道にも売り込んでいく。観光客を津軽に呼ぶための戦略を打っていく」とし、仙台、盛岡からの新幹線を利用した日帰り旅行の誘客にも力を入れる方針だ。

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中弘南黒地域(下)=3

2010/7/22 木曜日

 

独自カラーを持った旅行商品開発の方針を再確認した津軽南地域新幹線開業効果研究会の総会(5日)

 6月のある昼下がり。黒石市の温湯温泉郷にある集会場で、森勇一さんと川守田健造さんが真剣な表情で高さ1・8メートルのこけし型灯ろうに絵付けをしていた。部屋に並ぶ80体はすべて表情が違う。
 森さんは「こけし灯ろう祭」の発案者。第1回の今年は新幹線開業日の12月4日に開幕する。大小110体のこけし灯ろうがともる温泉郷で、宿泊客に角巻きとわら靴姿で散策してもらい「津軽の情緒の主人公になってもらう」構想だ。地元住民は「お客が戻るきっかけに」と願いを込める。
  ◇    ◇
 「手をこまねいていては埋没する」。黒石市の観光業界には、宿泊客が弘前や青森市に集中しかねないとの危機感が漂う。関係者は「宿泊客がいないと町が潤わない」と独自対策の必要性を訴える。
 弘前さくらまつり、青森ねぶた祭など全国区のイベントを持たない黒石市にとって、広域観光のメリットは大きいが、同時に「単なる通過点に終わらせたくない」(ある飲食店主)のが本音だ。
 同市の山形地区と温泉郷の活性化を目指す協議会などは、旅行に関する調査研究機関の協力で8種類の旅行商品を開発、発売した。のんびり家族連れで地元の自然や食を楽しむメニュー。インターネットの予約システムを導入する宿泊施設は、1年前の2件から11件に増えた。
 予約人数は、プラン開始前日の16日現在100人ほど。協議会の福士拓弥プロデューサーは「もう少し増えてもいい」としつつも、平日の宿泊客の増加やこれ以外の一般客の押し上げにつながったことを喜ぶ。
  ◇    ◇
 「やはり独自カラーを持った旅行商品を打ち出すべきでは」。7月5日に田舎館村役場で開かれた津軽南地域新幹線開業効果研究会の総会。黒石市の担当者が方針の再確認を促すと、平川市と同村の出席者も大きくうなずいた。2年前から取り組んでいたが、情報収集や方向性の見極めで紆(う)余(よ)曲折を経ていた。
 弘前を中心とした広域の枠組みを尊重しながらも、2市1村にエリアを絞ったプランを独自に設けることで、地域の魅力を発信したい意向だ。黒石市の担当者は「コンテンツはそろっている。後は点を線で結ぶだけ」と力を込めた。
 これら誘客対策共通の課題が二次交通だ。特にJRが通らない黒石市は新幹線利用客を呼び込みづらい。広域観光ルートができても、弘南鉄道弘南線を通じて弘前市からどれぐらい観光客が訪れるかは未知数だ。
 業界の一致した見解は「新青森駅から直接呼び込まなければ」。同市などは同駅との間でシャトルバスを運行できないか、可能性を探っている。

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西北五地域=4

2010/7/24 土曜日

 

西北五地域の玄関口として各地域の観光パンフレットを取りそろえる五所川原市観光協会観光案内所

 2009年2月、東北新幹線全線開業に備え、JR五所川原駅舎内に五所川原市観光協会の観光案内所ができた。案内所では市内観光施設だけでなく、北は外ケ浜町まで幅広く観光パンフレットがそろう。
 協会では「五所川原市だけを訪れたいという観光客は少ない。サービスとして広域対応は当然」とする。観光サイト「奥津軽の旅案内」を開設し、市と外国語版観光ガイドブックも作製。奥津軽をキーワードに、周辺7市町に協力を呼び掛け、その情報を取りまとめ発信している。
 いずれも同市が「西北五地域の玄関口」という自覚からの働きかけだ。だが、自治体間は温度差があり、脆(ぜい)弱(じゃく)な3次交通の問題もある。同協会からは「広域は難しいね」と本音もこぼれる。
  ◇    ◇
 西北五地域は「奥津軽」と銘打ち、「津軽」よりも神秘的なイメージで売り込みを図っている。「奥津軽の歴史探訪」(県主導)など新たな観光ルート開発を模索するが、そのイメージ像、そして取り組みの中心も五所川原立佞武多や作家太宰治、津軽鉄道と観光資源の豊富な五所川原市だ。
 つがる西北五広域観光推進委員会や西北五観光物産協議会など
も市を中心に活動。今年6月には西北五地域新幹線3次交通連絡会議を呼び掛け、同地域の3次交通について情報共有する場を設けた。
 また、市主催の首都圏イベントに各市町の物産ブースを設けるなど、積極的に周辺自治体を巻き込み垣根を取り払っている。
  ◇    ◇
 一方で、五所川原市を取り囲むつがる市、鶴田町、中泊町、板柳町は「五所川原市が中心」という共通認識を持つものの、脆弱な3次交通や費用対効果から、足並みをそろえられないのが現状だ。
 ベンセ湿原など観光資源が豊富なつがる市の観光協会関係者は、観光産業強化の費用対効果に疑問符を付ける。新幹線効果は「ブランド化する農産物売り込みを第一にする」と独自路線を強調。五所川原市などとの観光ルート模索には光明を見いだしていない。
 各周辺自治体で温度差のある現状に、五所川原市経済部商工観光課の中谷昌志課長は「五所川原が先頭に立って行かざるを得ない。観光ルートづくりや資源掘り起こしはまだまだこれからだ」と課題を挙げる。
 「3日間でも滞在して、この地域を回ってもらいたい」。周辺地域への波状効果も含め、五所川原市が描く滞在型観光への実現に向け、弘前市などさらなる広域連携への模索が続いている。

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西海岸地域=5・完

 

広域観光連携に向け協議会を設立し、3町の観光協会長と町長が握手(6月11日深浦町)

 青秋県境をまたぎ、連携しながら観光客の誘客を図ろうと、6月に広域の観光協議会が設立された。鯵ケ沢、深浦、秋田県八峰の3町をつなぐ国道101号から名称を取った「ルート101観光連絡協議会」だ。3町のうち深浦と八峰両町は同じ生活圏を有しながら県が違うため、これまで観光・産業面での交流は進展しなかったが、東北新幹線全線開業を控えて両町の意見交換が始まり、鯵ケ沢町を巻き込んでの同協議会設立に至った。
  ◇    ◇
 深浦観光協会の飯島正和事務局次長は「3町は県は違っても同じ文化を持っている」と強調。「まずは鯵ケ沢、深浦両町で歴史的に共有する北前船などから、3町のストーリーを作り上げていきたい」と語る。
 八峰町の観光担当者は「立ち上がったばかりで、どのように広がりを見せるかは予想できないが、新幹線全線開業で3町のイベントを通じPRしていきたい。それが函館市への延伸、奥羽線に流れる観光客を日本海エリアに回らせる力になる」と展望する。
 JR五所川原駅の佐々木晃久駅長は「JRとしては『おらほの自慢』で五能線沿線の食・文化などを含めた見どころを集め、情報発信している。協議会も方向性は同じなので、連携して西海岸に誘客を図りたい」と語る。
  ◇    ◇
 ルート101観光連絡協議会は今後、共同のポスターやのぼり旗、パンフレットを作製し、3町の豊富な観光資源を一体化して全国への発信を目指す。また鯵ケ沢・深浦と八峰が互いのエリアで観光PR優先権を懸けたイベント「国盗りあみ引き合戦」を本格展開し、話題性アップを狙う。
 あみ引き合戦は漁業用の網を各チーム8人が横に並んで引き合う競技で、勝った側の「観光的県境」が広がり、相手の道の駅や観光施設を占領して観光PRできるルールだ。
 また深浦町でも、有志団体「いいべ!ふかうら」が観光客の迎え入れに懸命だ。JR深浦駅で列車に手を振る「手を振り隊」を結成、同町のイメージアップに努めている。鯵ケ沢町でも観光客の利便性を考え、駅前に観光案内所を設置し新幹線開業に備えている。
 ルート101観光連絡協議会長で深浦観光協会長の森山文浩さんは「3町が連携し、行政の協力を得ながら特徴的なイベントを行い、観光客の誘客を図って地域活性化につなげたい」と話す。
 県境をまたいだ広域観光協議会はあまり例がなく、新幹線全線開業で結び付いた3町が西海岸への誘客に向け事業を展開しており、その動向が注目されるところだ。

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