冬夏言

 

2022/5/26 木曜日

 

 「憲法空語論」。たまたまのぞいた哲学者内田樹さんのブログで見慣れない言葉を目にした。広辞苑によると「空語」は「内容の伴わないことば」。それが「憲法」に付くとは、いかなる了見か▼「憲法というのは『そこに書かれていることが実現するように現実を変成してゆく』ための手引き」「目の前にある現実をそのまま転写したものではない」と内田さん。米国の独立宣言を例に挙げる▼宣言が「万人は生まれながらにして平等」の理想を掲げてから奴隷制度が約80年続き、公民権法の施行に188年を要した現実を示す一方、「独立時点での『現実』をそのまま受け入れてそう宣言に書き込んでいたら、アメリカ合衆国は今のような国にはなっていなかっただろう」と喝破する▼ロシアのウクライナ侵攻に揺れる世界情勢。バイデン米大統領は、中国との対決姿勢を鮮明にする▼わが国の平和憲法に対し、軍事的脅威から「現実に合わせ憲法を変える」ことがどんな未来をもたらすか。内田さんは「憲法が空語で何が悪い」と開き直る。

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2022/5/25 水曜日

 

 ハンガリー生まれの報道写真家ロバート・キャパ(本名・フリードマン・エンドレ)が、40歳の若さで戦場に散ったのは1954年5月25日。第1次インドシナ戦争の取材中、地雷に触れて爆死した▼キャパは日中戦争のほか、第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦なども取材し、世に戦争の悲惨さを伝えた。その功績をたたえ、優れた報道写真を表彰するロバート・キャパ賞が創設された▼この賞に輝いた一人に青森市出身の沢田教一がいる。カンボジアで命を落とすことになったが、この内戦で撮影した難民の写真が評価された。三沢基地内の写真店で働いていた頃、沢田が衝撃を受けて憧れ、戦場写真家を目指すきっかけとなったのがキャパ▼沢田はベトナム戦争で撮影した「安全への逃避」で66年、ピュリツァー賞も受賞。生涯を描いたドキュメンタリーは96年、青森市出身の五十嵐匠監督によって映画化された▼ロシアによるウクライナ侵攻の現場には多くのメディアが駐在。現実を伝える使命感には敬服するが、どうか身の安全を最優先で。

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2022/5/24 火曜日

 

 新緑の時期にぴったりの行事だな、と改めて思った。弘前市の大和沢小学校6年生が岩木山に向かって将来の夢を叫ぶ「決意表明」のこと。先日本紙記事を読み、以前取材した時の記憶がよみがえった▼同市出身のジャーナリスト陸羯南が作った「名山名士を出(いだ)す」で始まる詩にちなんだ行事。詩碑がある鷲の巣山に登り、一人ずつ夢に向かって努力することを誓う。自分の考えを堂々と発表する児童たちに頼もしさを感じた▼鷲の巣山に登ったのはその時が初めて。カメラを首に掛けて山道を歩くのは結構きつかったが、登った後の達成感が心地よかった▼新型コロナウイルスの感染拡大以降、休日をどう過ごそうかと考えた時に鷲の巣山を思い出し、何度か足を運んだ。10分ほど歩くと山頂に着き、岩木山や下界を見下ろすと、なぜかおおらかな気持ちになってストレスが和らいだ▼このほかこどもの森など、身近に自然豊かな場所があることの幸せをかみしめる。クマに襲われないよう気を付けながら、体力に合わせて山歩きを楽しみたい。

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2022/5/23 月曜日

 

 2年前のきょう、プロレスラーの木村花さんが亡くなった。出演していた恋愛リアリティー番組の言動についてインターネット交流サイト(SNS)で誹謗ひ(ぼう)中傷を受け続け、精神的に追い込まれた結果、自殺を図ったとされる▼事件は国内外で報道され、横行していた匿名発信者による私刑、正義感の暴走はとがめられた。誰しもが言葉のナイフという見えざる凶器を手にしていることを認識させられただろう▼しかし現在、SNSを見れば悲しいかな、変わらず罵詈(ばり)雑言が散見される。石を投げるに適当な的が見つかれば大勢で石を投げ、別な的ができればそちらへ移り…。命が散らされてなお、潮流は変わらないのか▼自身が気に入らないものを攻撃することで留飲を下げようとする人は後を絶たない。割合で見れば決して多くないと信じたいが、SNSはそんな人々の拡声器としても働いてしまう▼誰しもが手軽に言葉を大勢に伝えられてしまう社会だからこそ、改めて自身の言葉には気を付けたい。いま一度、2年前の出来事を思い返して。

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2022/5/22 日曜日

 

 県は先日、太平洋側海溝型地震発生時の県内の被害想定を公表した。死者は最大5万3000人、建物被害は最大11万1000棟が全壊すると試算▼死者の9割は津波で、青森市、八戸市で特に甚大な被害が予想された。雪と帰宅ラッシュの混雑が重なる冬・夕方の地震で被害が最大になると見込まれ、雪国の課題が浮き彫りになった▼県は併せて、早期避難による減災効果も試算。地震発生後に浸水域内すべての人が速やかに避難した場合、津波の死者数を県全体で7~8割軽減できるとした▼地震といえば、東北新幹線の脱線を引き起こした3月中旬の福島県沖地震が記憶に新しい。本県で大きな被害はなかったものの、いつもと違う揺れ方に東日本大震災を思い出した人も多いのでは▼福島県沖地震の際、すぐに家の外に出て様子をうかがったが、同じ町内で他に外に出ている人を見掛けなかったことに少し不安を覚えた。万が一の際には早期避難が生死を分ける。大きな地震が各地で頻発している昨今、地震に対する警戒心を常に持ちたい。

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