冬夏言

 

2017/9/12 火曜日

 

ついに10秒の壁が破られた―。9日、福井市で行われた陸上競技の日本学生対校選手権男子100メートル決勝で、桐生祥秀選手(東洋大)が9秒98(追い風1・8メートル)の日本新記録で駆け抜けた▼これまでの日本記録は伊東浩司さんが1998年にマークした10秒00。9秒台を記録した選手は120人以上いるが、大半を北中米やアフリカの黒人選手が占めるという。東アジアに限ると、2015年に9秒99を記録した蘇炳添(中国)に続く2人目の快挙だ▼9秒台は日本陸上界のみならず、日本中の関心事。桐生選手が高校時代の13年に日本歴代2位(当時)の10秒01を記録した際や、多田修平選手(関学大)が6月に追い風参考ながら9秒台を記録した際は大きく報道された▼桐生選手はここ数年、周囲から9秒台を期待されてきた。相当な重圧があっただろうが、厳しいトレーニングにも耐えて日本記録を塗り替えた。心から祝福したい▼日本陸上界には現在、9秒台が期待できる選手が複数いる。桐生選手を筆頭に高いレベルで競い合うことで、世界トップクラスに着実に近づけるはずだ。

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2017/9/10 日曜日

 

宿題に手を付けることなく、学校から戻ってすぐテレビのスイッチをオン。冬夏言子の子ども時代の日常だ。同じことをしていた人も多いのでは▼9月10日はカラーテレビ放送記念日1960年の同日日本で初めてカラーテレビの放送が始まり、テレビは今日まで各家庭に1台はあるほどまでに爆発的に普及した▼2011年、総務省主導でアナログ放送から地上デジタル放送に完全移行したのは記憶に新しい。ブラウン管テレビを目にすると、すでに懐かしいと感慨深くなるほどに遠い存在となった▼国の主導といえば、すでに開始から10年以上たったクールビズは現在見事に定着夏になるとノーネクタイ、ノージャケットで働く姿がよく見られるようになった。開始当初は定着が不安視されていたが、今では夏の風物詩として認知された▼さて、最近の国主導プロジェクトと言えば、プレミアムフライデーだろう。ここ数カ月はプレミアムフライデーの日にコンビニで特別商品が陳列されているのを見て、それが今日であることを思い出す。クールビズの成功に続くことができるのだろうか。

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2017/9/9 土曜日

 

「か!」「け!」「か!」「け!」。難解で知られる本県の方言が、どこか癖になるラップのリズムで飛び交う。よくある観光PR動画とは一線を画す面白さと質の高さ▼県が制作した「ディス(り)カバリー青森2」が8月9日に動画投稿サイト「You Tube」で公開されて1カ月。昨年12月~今年3月に公開された第1弾の好評もあり、視聴回数は13万回超。この類いの動画としては驚異の数字で、再公開された第1弾は42万回を超えた▼ともに「滑舌悪い芸人」として知られる諸見里大介さんの人気もあるが、反響は津軽弁・南部弁の難解さに集中。標準語の字幕なしでは分からない―といったコメントが並ぶ▼方言は地域の魅力の一つ。本県は全国でも突出した魅力を秘めているだろう。標準語と比べ、単語の違いと訛(なま)りは多く、強いほどいい。津軽弁と南部弁の違いを含め、来県する観光客はそれを聞いて楽しみたいのだ▼とはいえ、動画の方言はかなり強烈。純粋な津軽出身者として意気揚々と視聴したが、津軽人としてまだまだ若輩者で「たふらんけ」だと思い知らされた。

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2017/9/8 金曜日

 

その言葉を初めて聞いた時、インパクトの強さにどきりとした。最近話題となっている「睡眠負債」のことである。日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を及ぼす恐れのある状態を指す▼悪影響とは、病気にかかりやすくなる、注意力が散漫になる、仕事の能率が下がりミスが増える―など。理想的な睡眠時間は個人差があるがおおむね7時間で、負債のある人は休日に早寝をして少しずつ“返済”するのが望ましいという▼元気に過ごすには睡眠が不可欠とは分かっていたが、不足分が負債になるとは知らなかった。なるべく負債をためないようにしたいものだが、中には睡眠時間を確保するのが難しい人もいるだろう▼まず思い浮かぶのは長時間労働の人。睡眠負債はうつ病のリスクが高まり自殺の危険性もある。本県は全国平均に比べ労働時間の長い事業場が多いと聞く。短命県返上のためにも事業主の意識が問われる▼一方で、眠りの深さや質も大事だといわれる。快眠のためには悩みやストレスを一人で抱え込まず、相談したり趣味を楽しんだりすることで健康を保ちたい。

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2017/9/7 木曜日

 

時代小説、大衆文学に新境地を開いた国民文学作家の吉川英治が没したのは、55年前の1962年9月7日。きょうは吉川英治忌に当たる▼代表作は「宮本武蔵」。これを執筆、もしくは大詰めの構想を練った30年(29年説も)、吉川は黒石市から十和田湖に向かう通称・十和田西線沿いにある平川市切明の温川温泉に投宿し、文学碑も残る。平川市はいわば吉川ゆかりの地▼脇を渓流が流れ、雑木林の中にひっそりとたたずむ露天風呂のロケーションが好きだった。残念ながら温川山荘は2014年8月に閉館し、今もかすかに湯煙こそ上がっているものの、建物は傷みが進んでいた▼吉川の名言の一つに「朝の来ない夜はない」がある。これに類似する「明けない夜はない」「やまない雨はない」が、武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で行き詰まった捜査員の合言葉だったことだけは、明確に思い出す▼今さら文学の素養不足を嘆くまい。読書の秋には努めて本も読みたいが、老眼が邪魔をする。「逆境にも希望だけは失ってはならない」との吉川の教えに沿い、せめて文学碑巡りでもしよう。

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