冬夏言

 

2017/3/7 火曜日

 

車座になって酒を酌み交わす者、花札やトランプに興じる者、いてつく景色を船窓から物憂げに眺める者、ひたすら眠りをむさぼる者―。これが青函連絡船内の原風景だった▼戦後、日本の高度経済成長を支える大動脈となった青函連絡船の開業は、1908年3月7日。本県と道南の小学生は修学旅行で津軽海峡を渡った。つまり大半は小6で連絡船を初めて利用した▼営業距離113キロ、片道の所要時間3時間50分の旅は楽しく、強烈なインパクトを与える。だからこそ88年の廃業から30年近く経過しようとしている今も、青函連絡船と聞くだけで郷愁を誘う▼54年の台風15号による洞爺丸座礁転覆事故を機に、世紀の海底トンネル計画が具体化。80年代に入り青函トンネルが貫通した頃は、青森駅前のホテル高層階のラウンジバーから、出港する連絡船を見送るのが若者のトレンドだった▼北海道新幹線開業から間もなく1年。新函館北斗駅までは新青森駅から1時間と近くなったが、石川さゆりの「津軽海峡冬景色」の世界観はそこにはない。古き良き時代を懐かしむのは齢(よわい)を重ねた証拠か。

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2017/3/6 月曜日

 

「金の卵」という言葉がある。高度成長期に都市部で貴重とされた若年労働者だ。本県の中卒者や高卒者も活躍した。弘前市出身の井沢八郎が歌った「あゝ上野駅」は、彼らのテーマソングといえる▼子だくさんの時代、長兄への教育費集中のあおりで、進学を断念する子がいた。彼らは地元よりは賃金の良い都会に出て慣れない仕事に汗を流した。大変な時代だった▼時は流れ2017年。県内の就職事情は活況を示す。青森労働局によると、1月の県内有効求人倍率(季節調整値)は1・23倍で過去最高を更新。本県の都道府県別順位は35位に上がり、1963年1月の統計開始以来最高▼県内企業にとって若人は現代の金の卵だが、金銭面で都市並みに処遇することは困難だ。結果、労働力が都市に流出しさらに人口減少が加速する。昔と違う意味で大変な時代といえる▼行政は高校生への地元のPRなどに注力するが、それだけで十分とも思えない。個別の企業努力が不可欠だ。給与面での厚遇は無理な場合も、時代に合った企業風土の醸成など、できることは少なくないはずだ。

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2017/3/5 日曜日

 

ラジオで「3月は本当に春なのか?」がテーマとなっていた。ラジオパーソナリティーの宇多丸さんは「現に寒いじゃないか!」と語気を強め、リスナーから「春だ」「いや冬だ」などとコメントが寄せられた▼5日は二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」に当たる。漢和辞典を引くと、「啓」は戸を手で開くさまと「口」からなり、「開く」の意味を持つ。「蟄」は閉じこもる意味を持つ「執」と「虫」からなり、土中に閉じこもる虫を表す。文字通り、冬ごもりの虫が出てくるという意味だ▼雪国にとっての3月は、時折春めいたものを感じる冬、というのが実感だろうか。2月より気温の高い日は増えたが、本日の津軽の虫は土中でじっとしていることだろう▼暖かい日があったかと思うと冬の寒さに逆戻りし、昼間と夜間の気温の差が大きいのも3月。「服装に困る」と思い始めたら、春かもしれない▼ラジオのリスナー投票は多数決により、「3月は冬」との結論になった。小欄としては「世間は春だと言って薄手の春服を売り始めたが、まだ寒いので冬気分を捨てず体調に気を付けるべし」と結ぶ。

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2017/3/4 土曜日

 

本県の人口は1980年代をピークに減少が続き、2016年4月に1950年以来初めて130万人を割り込んだ。08年4月に140万人を割ってから、わずか8年で10万人減。国立社会保障・人口問題研究所によれば、40年の推計は93万2000人と100万人を割る▼人口減は本県が直面するまさに「最重要課題」だ。各自治体が発表した新年度予算案をみても若者の移住・定住促進、子どもを産み育てやすい環境づくり、交流人口への取り組みなどを目玉に据えて対策を講じている▼2月下旬から、津軽地域の新入学児童を対象に陸奥新報社主催の新一年生おめでとう大会が開催されている。きょう4日は西海岸大会。今春、小学校に入学する子どもたちを祝う大会だ▼入学を前に交通ルールなどを学び、安全で楽しい学校生活を送ってもらうという趣旨で、弘前大会は45回、津軽南大会は38回、西海岸大会は32回を数える▼少子化であっても子どもたちが自然豊かな魅力あふれるまちで元気に過ごし、郷土に愛着と誇りを持ちながらよく学び、地域への愛情が育つよう願いを込める。

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2017/3/3 金曜日

 

弘前大学農学部を卒業した岩木一麻さん(40)=埼玉県出身、千葉県在住=の作家デビュー作「がん消滅の罠 完全寛解の謎」が1月の刊行以来、都内書店の売り上げランキングで1位に輝くなど好評を博している▼国立がん研究センターや放射線医学総合研究所でがん研究に携わった経験を生かし、秀逸な医療ミステリーに仕上げた。宝島社が主催する「第15回『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞受賞作品だ▼岩木さんは念願の作家デビューを果たした現在も医療系出版社に勤務しており、本名は非公表。ペンネームの「岩木」は秀峰・岩木山にちなんだもの。弘大卒業後もたびたび弘前を訪れているという▼同賞はミステリーとエンターテインメント作家の発掘・育成を目指す新人賞で、東山彰良(直木賞作家)や海堂尊らを輩出しており、注目度が高い。岩木さんも今回の受賞で一躍注目される作家となった▼「岩木」の名が全国に広まることは、われわれ津軽人にとって誇らしいこと。さらなる活躍を期待してしまう。気が早いが、次回作の発表が今から待ち遠しい。

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