冬夏言

 

2019/11/28 木曜日

 

弘前の自宅近くにスーパーがオープンした。以前は病院があった場所。周辺住民の一人として、跡地がどうなるのかと気をもんでいたのだが、大規模なスーパーが開店し、住民たちからは歓迎の声が聞かれる▼何よりも良かったと思うのは、スーパーの営業によって夜が明るくなったこと。病院の建物が壊され、更地になってからというもの、夜の暗さが深くなり、不気味にさえ感じていた▼コンビニのように24時間、あるいは深夜営業とはいかないまでも、ある程度の時間までスーパーの明かりがあることは、防犯上もありがたい▼「街は生きもの」との言葉を時折耳にする。今回の身近な変化を見てなるほどと思った。街とは明かり一つでこうも変わるのかと▼弘前に移り住んで20年。当時、酒屋を兼ねたスーパー、病院、ビデオレンタルができる書店もあり、重宝した。それが閉店したり、移転したりで住環境は大きく変わった。「こんなはずじゃ…」と嘆くこともあったが、それも「街は生きもの」の証しなのだろう。今新たにともった明かりに感謝しつつ、スーパー通いを楽しんでいる。

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2019/11/27 水曜日

 

天皇陛下のご即位を祝った先の「国民祭典」で、陛下は半年間を振り返るとともに国民の幸せと世界平和を改めて願われた。きょうは「親謁(しんえつ)の儀」で神武、孝明両天皇陵を、あすは明治天皇陵を皇后さまと訪問される▼令和元年も残り1カ月余り。春は新元号に列島が沸いた。一方で〈昭和といふ熾火の中の朧かな 泉風信子〉。「昭和」がよりおぼろげになってしまったような寂しさを覚える▼前句の作者泉風信子さんは小社の元常務。俳人であり、棟方志功といった著名人と親交があった。2カ月前に急逝した泉さんの葬儀。中村和弘現代俳句協会会長の言葉が響いた▼「風信子さん、あなたは死んでいない。あなたは作品の中で生きている」。肉体は滅んでも作品は残ると。特に戦争や平和を詠んだ泉さんの句には、何度胸をえぐられただろう。わずか17音で訴えた言葉の重みは忘れない▼敗戦国から経済大国へと発展を遂げた昭和。多くの価値観が表出した半面、格差が広がったとされる平成。先の時代がかすみの向こうに消えないよう、われわれは新しい時代に教訓を生かさなければならない。

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2019/11/26 火曜日

 

今年も残すところあと1カ月余りとなった。年末にはその年に広まった新語や流行語が話題となるが、個人的に印象に残った“新語”は「ステイケーション」という言葉だ▼「ステイ」と「バケーション」から生まれた造語で、「休暇を近場や自宅で過ごす」といった意味だという。過去の本紙記事を検索したところ、初めてこの言葉が掲載されたのは2010年だった▼恥ずかしながら記憶になく、あるラジオ番組で耳にしたのが最初で、ステイケーションという響きが新鮮だった。遠くへ旅行に行ったつもりで身近な場所の魅力を再発見してみては、と提案していた▼津軽の魅力といえば、農水産物、豊かな自然、温泉などが思い浮かぶ。眺めのいい露天風呂やおしゃれなカフェなど非日常の空間に身を置けば、ちょっとした旅行気分を味わうことができる▼遠出をしたくても、さまざまな事情でかなわない場合もある。そんな時、行きたい場所が近くにあるのは幸せなことだ。地元にお金を落とせば地域経済にとってもプラスになる。「身近にあるいい所探し」をもっと楽しみたい。

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2019/11/25 月曜日

 

配偶者や恋人など親密な相手から振るわれる暴力を指すDV(ドメスティック・バイオレンス)が広く認知されるようになって久しい▼先日、夫の暴力から逃れるため、高知県の実家に戻っていた妻が夫に殺されるという痛ましい事件が発生した。妻は警察に事前にDV相談をしていたが、夫はSNSを使って居場所を割り出し、凶行に及んだとされる▼警察庁のまとめによると、配偶者からのDV相談は2018年が7万7482件(前年比5027件増)で、過去最多を更新。摘発件数も9088件(同666件増)でこちらも過去最多となった。01年にDV防止法が施行されて以降、相談件数は増加傾向にある▼11月25日は「女性に対する暴力廃絶のための国際デー」。1961年、ドミニカ共和国で独裁政権を敷いていたラファエル・トルヒーヨに反対の声を上げた政治活動家のミラバル3姉妹が惨殺された日だ▼暴力は男女ともに許されざることだが、DV相談者の約8割が女性の現状。「我慢すればいい」「自分が悪いから」と己を手放してはならない。その選択は誰も幸せにしない。

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2019/11/24 日曜日

 

混雑した電車の優先席に若者が座っている。よぎりはしないだろうか。「なぜ優先席に座っているのか」「譲る気はないのか」。でもちょっと考えてほしい。見た目には分からない障害を抱えているかもしれないと▼多目的トイレもまたしかり。障害を持つ人は車いす利用など目に見える形ばかりでなく、内部障害などさまざまだ▼先般、弘前市で開かれたパラリンピック競泳女子金メダリストの成田真由美さんによる講演会。挑戦の大切さと併せて訴えたのは、障害者への理解▼義足の友人と電車の優先席に座っていたら文句を言われ、義足を外してようやく収まったエピソード。障害者用駐車場に置かれているカラーコーンに困り、警備員から返ってきたのは「置かないと障害者じゃない人が勝手に止めてしまう。来るなら事前に連絡をくれれば良かったのに」という言葉だった話▼なかなか進まぬ心のバリアフリー。すぐそばに困り事を抱えている人がいるかもしれないという想像力は不可欠だ。来る東京オリンピック、パラリンピック。形だけでなく、意識を変える契機としたい。

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