「真実と正義と美の化身」と聞き、はっとする好事家は多いのでは。成田亨氏による、自身がデザインしたウルトラマンを描いた油彩画▼青森市に育ち、旧浪岡町の画家阿部合成氏に師事。円谷プロ所属時代に誰もが知るヒーローの原型を手掛ける▼しかし当時は映像化に伴うデザインの変更、さらに著作者の表記を削除されるなど、成田氏にとって不本意な形で世に出てしまった。前出の作品は当時実現できなかったウルトラマン本来の姿であろう▼映画「シン・ウルトラマン」が大ヒット中だ。企画・総監修の庵野秀明氏は「真実と正義と美の化身」の映像化が今作の根底にあると明言。デザイン資料集を見ると「成田さんっぽく」など庵野氏によるリテークの指示書きが各所に確認できる。オリジナルへの真摯(しんし)な愛情は、スクリーンからもひしひしと感じる▼本作を成田氏が見たら、なんと感想を言うだろうか。そんな思いを抱きつつも、童心に帰って楽しんだ。郷土の不世出の芸術家が見た夢は、今をもってようやく形になったのだろう。