冬夏言

 

2018/11/3 土曜日

 

「リンゴは自分の子どものようなもの」。県内のリンゴ生産者を取材するたび、リンゴに対する愛情がにじむ言葉を聞いてきた。本県が誇る「リンゴ生産量日本一」は、そういった生産者の思いに支えられている▼木の成長の数年先を見据えて枝を切る剪定(せんてい)、摘花に授粉、実を大きく成長させる摘果、袋掛けやきれいに色づけるための玉回しなど、リンゴの収穫までには多くの手間を要する▼今年は黒星病の被害を抑えるため、薬剤散布に追われた生産者も多かった。また近年の異常気象傾向のためか、大型の台風が相次いで本県に接近。落果を恐れて収穫作業を急ぐ生産者の姿も見られた▼そしてようやく主力品種「ふじ」の収穫期を迎えた中、津軽各地でリンゴの盗難が相次いでいる。数千個が木からもぎ取られるなど、悪質なことこの上ない。被害を受けた生産者の心中はいかばかりか▼盗む側が「この程度なら」「リンゴぐらい」などと考えているならば、お門違いも甚だしい。「日本一」を支えるリンゴ農家の苦労をかすめ取る者は、県民の誇りを傷つけていると自覚するべきだ。

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2018/11/2 金曜日

 

米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」が12月30日に発効することが確定した。11カ国合計の国内総生産(GDP)は10兆ドル超で、世界全体の13%にも達する経済圏が誕生する▼TPP11の合意内容には工業製品や農産品の関税の撤廃と引き下げ、投資や電子商取引などのルールも定められている。TPP11はわれわれに何をもたらすのか▼農産物の関税が段階的に削減されることで、消費者はより手軽に外国産の牛肉、豚肉、乳製品を購入できるように。家計にはありがたいことだが、一方で国内農業に大きな打撃を与える恐れが指摘される▼県が今年2月に公表した、本県の農林水産物への影響試算によると、生産減少額は約25億~約49億円との推計が示されている▼少子高齢化の進展で、農業生産現場は人手不足が深刻化。生産基盤をどう維持するか悩まされている中で迎えるTPP11。政府には、農業者らの不安を取り除くような対策を講じる責務がある。消費者にもできることはある。県産品、国産品を進んで購入し、農業者らを応援しよう。

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2018/11/1 木曜日

 

ビジネス書などに登場する「パレートの法則」という言葉がある。ある事象の2割が全体の8割を生み出しているという状態を示す経験則で、「80対20の法則」「2対8の法則」とも呼ばれる▼例としては「売り上げの8割は、全体の2割の顧客で占めている」「仕事の成果の8割は、費やした時間全体の2割の時間で生み出している」など。実際はどうかは分からないが、「なるほど」と思う例も多い▼記事を書く上でも、必要最低限なことを聞いただけでは文章を構成できない。原稿に盛り込むかどうかは別として、材料は多い方が良く、分かりやすく伝えるためにどうやってまとめるかが重要だ▼ただパソコンに向かってキーをたたき続けるよりも、最初に頭の中で整理した方が筆も進む。パレートの法則を頭の隅に置いておき、自身にとっての2割が何かを考えることで、生産性の向上が図れるだろう▼政府が掲げる「働き方改革」。企業の取り組みは重要だが、個人でできることもある。自分も楽な方に逃げてしまうことが多いが、結果的に効率が悪くなっている。集中と選択を心掛けたい。

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2018/10/31 水曜日

 

先日亡くなった直木賞作家の長部日出雄さんは若い頃、棟方志功が好きではなかったという。なぜか。理由を聞いたことがある。「なんでかね…めぐせんた気がしてね」▼同郷の人間として“津軽丸出し”の棟方が「めぐせ(恥ずかしい)」と感じていたらしい。それが後年なぜ棟方を高評価することになったのか▼きっかけは津軽三味線だった。長部さんは1970年、小説に専念するため東京から弘前に戻り、津軽三味線のことを丹念に取材した▼取材の中で、三味線の腕を上げるには「我流の節」が必要なことを知る。そのため奏者は弾いて弾いて弾きまくる。弾き疲れ、意識がなくなる寸前、誰も弾いたことがない節がす~っとバチ先から出てくるものだ―と聞かされた▼長部さんは驚がくする。これは彫って彫って彫りまくる、志功の板画と同じではないか。「目からうろこが落ちた。めぐせと思っていた志功の板画のすごさが分かった」。それは後に「鬼が来た 棟方志功伝」に結実する。直木賞受賞作品、棟方、太宰治の評伝―。年月を経てなお輝きを失わない長部作品群である。

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2018/10/30 火曜日

 

先日、民放で宮崎駿監督の映画「もののけ姫」が放送されていたのを偶然目にし、つい最後まで見てしまった。1997年に公開され、当時の日本映画の興行収入記録を更新。テレビでの放送は今回で10回目を数えるなど、多くの人に愛され続けている▼恥ずかしながら、同作の舞台の参考地が白神山地と鹿児島県の屋久島とであることを最近まで知らなかった。知人や友人の反応を見る限り、この事実を知らない県民も少なくないのでは▼白神山地の世界自然遺産登録は、本県と秋田県を結ぶ予定だった青秋林道の建設反対運動が発端だった。当時の反対運動がなければ、「もののけ姫」の世界観も今とは違ったものになったのだろうか▼「人間の最も善なる部分を押し進めようとした人間たちが、自然を破壊するところに人間の不幸があるんです」(宮崎駿「折り返し点1997~2008」)▼善悪の二元論で割り切れない、矛盾を抱えた存在である人間がいかに自然や価値観の異なる他人と共生するか。グローバリズムの下で生きるわれわれ現代人こそ、この映画から学ぶべきところは大きい。

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