冬夏言

 

2018/5/12 土曜日

江戸時代、初めて実測による日本地図を完成させた測量家の伊能忠敬。学校の授業などで誰もが聞いたことがある名前だろう。忠敬が中心となって作製した地図は衛星写真と比べても誤差が少なく、その完成度の高さには驚かされる▼今年は忠敬没後200年の節目の年となる。50歳で天体観測や測量など暦学を学び始め、55歳から測量の旅をスタート。蝦夷地(北海道)を皮切りに17年かけて第10次まで続く測量調査を行い、全国各地を歩いた▼忠敬が亡くなったのは、当時としては長寿の74歳。商人として成功を収めた後に新たな挑戦を始める生来のバイタリティーに加え、歩くことが健康につながったと考えても間違いではないはず▼12、13日は弘前、平川両市を会場に「津軽路ロマン国際ツーデーマーチ」が開かれる。県内外から集まったウオーカーが初夏の津軽路で自然や歴史、文化を体感することだろう▼ウオーキングの楽しみ方は人それぞれ。忠敬は第3次測量で弘前城下に立ち寄り、土手町に宿泊した記録が残る。偉大なるウオーカー忠敬になったつもりで歩くのもいいのでは。

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2018/5/11 金曜日

 

春の山菜シーズンが本格化し、店頭でタケノコを見掛けるようになった。本県でタケノコといえば、ほっそりとしたネマガリタケ。しゃきしゃきとした食感を楽しめるタケノコは、春の味覚の代表格だ▼冷蔵や流通の技術がなかった時代、雪国の人々は冬の間、なかなか新鮮な野菜を口にできなかった。春の山菜シーズン到来はかつて、今よりはるかにうれしい出来事だったろう▼2016年春、秋田県との県境でツキノワグマによる殺傷事件が発生し、4人が死亡、4人が重軽傷を負った。本県生まれのクマ研究家・米田一彦氏の著書「人狩り熊」によると、この事件の犠牲者に対し、都会の人々から「クマが食べるタケノコを盗(と)るな」などの心ない言葉が浴びせられたという▼山菜採りは、われわれの誇るべき文化だ。経験や知恵がなければ、山の恵みをいただくことはできない。本県の「名人」たちは、この技術で家計をも助けてくれる▼一方、山中でクマに遭遇しない知恵もまた共有し、二度とあのような悲劇が起きないようにしなければならない。山菜は、春の喜びの象徴なのだから。

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2018/5/10 木曜日

五所川原市金木町で4、5日に開かれた第30回津軽三味線全日本金木大会。出場者は津軽三味線発祥の地で迫力ある演奏を披露した。特に個人一般の部A級では大会のキャッチコピー「魂を揺さぶれ!」の通り、魂の叫びが聞こえるような演奏ばかりだった▼個人最高の仁太坊賞に輝いたのは、十数年ぶりに出場した大分県の鈴木利枝さん。小学校高学年で三味線と出会い、中学生の頃には旧岩木町に住んでいたという▼優勝後のインタビューで「津軽の風景が浮かぶような演奏を心掛けた。この金木で優勝できて本当にうれしい」と言った時の笑顔が印象的だった▼ただ「十数年前に出た時、何かの賞をもらった」という言葉が気になったので、後で記録を調べてみた。すると衝撃の事実が。第14回大会でA級に出場し、陸奥新報社賞を獲得していたのだ。鈴木さんとの縁を感じた瞬間だった▼9月に金木町で開かれる「仁太坊祭り」では、その年の仁太坊賞に輝いた人が演奏することとなっている。その時にこのことを報告し、再び鈴木さんの「魂を揺さぶる」演奏に酔いしれたいと思う。

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2018/5/9 水曜日

黒石市には「黒石地酒をたしなむ会」という団体がある。市内にある蔵元が造り出す名酒を気取らずに楽しむことができる会で、さまざまな業種の人が情報を交換する場としても貴重な存在だ▼そばが特産の山形県内には、そば好きが集まるこうした会が、店ごとにあり、盛況だと聞いたことがある。純粋に好きなものを楽しみたいという思いが第一だろうが「地元のものを地元で消費し、応援したい」という地産地消の心がこうした会をつくり、連綿と続く力となっているのだろう▼「地酒をたしなむ会」で供されるアルコールは日本酒だけ。「とりあえずビール」の冬夏言子は、少し戸惑ったが、ちゃんぽんせずに飲む1杯目の日本酒のうまさは自分でも驚くほどだった▼カラオケあり、日本酒にまつわるうんちく話あり―の楽しい会合で「地産地消を」といったある種の〝力み〟はまったく感じなかったが、それが会を長続きさせる秘訣(ひけつ)なのかもしれない▼そういえば、黒石市には「地酒で乾杯条例」もある。街全体で応援する形があってこそ、名産品は名産品で有り続けられる。

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2018/5/8 火曜日

弘前さくらまつりが閉幕した。今年は「第1回観桜会」から100周年の節目。累計来場者数は246万人を記録し、東日本大震災以来、最多の来場者数を数えた前年に次いで多かった▼節目といえば、6日付本紙が平成史に関する本の出版事情を伝えた。各出版社が平成の総括や社史編さんの手引などさまざまなジャンルの本を刊行しているという▼思想家の内田樹氏は自身のブログで、平成の30年間を「落ち目」と指摘し、日本の将来像を「『無慈悲で不人情な社会』が行政主導・メディア主導で創り出されてゆく」と予測した▼1000兆円を超す国の借金と急激な人口減少、バブル崩壊を引き金とする対米自立戦略の失敗―。内田氏が判断の根拠とした事実から未来を浮かべれば、確かに暗たんたる気分になる▼地球規模では人口増加による資源不足や環境問題が深刻化する中、先進国でいち早く人口減少社会へ突入した日本がいかに持続可能な社会モデルを構築するのか。われわれが100年後の桜を本気で望むなら、今こそピンチをチャンスに変える方法を真剣に考える時だ。

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