久しぶりに自宅近くの書店へ行ったら、本がほとんど置かれておらず文房具店のようになっていた。雑誌を中心とした品ぞろえだったが、子どもの頃から親しんできた店の変わりように寂しさを感じた▼インターネットで手軽に本を買えるようになり、電子書籍も出回るなど、町の書店にとっては厳しい時代となった。そんな中、新刊が出るたびに話題となる作家、村上春樹さんはまさに書店にとって救世主的な存在だろう▼24日に発売された新刊小説「騎士団長殺し」(全2巻)は、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」以来4年ぶりの長編。発行部数は当初1、2巻各50万部ずつの予定だったが、反響が大きいため計130万部に重版した▼海外でも人気が高まり、ノーベル文学賞の有力候補として注目を集めてきた村上さん。作品の魅力について愛読者の一人は「“私の物語”として没入できること」と表現した▼最近は本を読む時間が減り、雑誌や短編がせいぜいという体たらく。町の書店に足を運び、村上さんの新刊発売という“祭り”の活気を浴びて長編にも挑戦してみようか。