冬夏言

 

2022/8/11 木曜日

 

 正直、怖かった。大雨で岩木川氾濫の危険性が高まり、弘前市に発令された避難情報「緊急安全確保」。最も高い警戒レベル5に、おとといもきのうも「どうなるのか」と不安の中で過ごした▼先週の「線状降水帯」に続く津軽の大雨被害である。今回も全国ニュースになったことから、おととい夜から首都圏の友人、知人らから「弘前は大丈夫か」という連絡が相次いでいる▼断続的に降る雨に不安は尽きないが、余計な心配をかけたくないので「多分大丈夫だと思う」と曖昧に答えている。中には「お盆に帰省するが会えるか」という話もあったが、前線が停滞するというので、それはさすがに「分からない」としか言いようがなかった▼東京に住む小学生のおいっこからは「雨、雨、雨ですが大丈夫ですか」というメッセージが届いた。何やら面白い本を見つけたとかで、冬夏言子に「読んでみてください」とあった▼大雨が続く津軽に宛てた彼なりの激励なのだろう。うっかりして肝心な本のタイトルを聞くのを忘れたが、正直、うれしかった。

∆ページの先頭へ

2022/8/10 水曜日

 

 津軽の田園地帯に恵みをもたらしてきた岩木川は「母なる川」とも呼ばれている。それだけ豊かな川だから、非常時には「暴れ川」へと姿を変える場合もあるといえよう。これは「坂東太郎」こと利根川など他の有力河川も同様だ▼岩木川の水害に関係した伝えも多い。五所川原の地名の由来に、旧相馬村(現弘前市)五所から、長慶天皇のご神体とされる祠が何度も流されてきたからという説もある▼流域に杭止堰という珍しい名を冠した土地改良区が存在するが、600年ほど前の水害時、土地の神官が自らの身を人柱としてささげたことによるそう。これらの伝えも、氾濫が頻繁だった傍証と考えられる▼藩政期以降、代々の統治者は治水事業に尽力。戦後は技術革新も進みダム建設、堤防築造、河道掘削が行われたが被害は皆無とならない▼先人は絶望的状況に何度も打ちひしがれながらも復興を果たしてきた。われわれはまた大きな危機に直面した。希望があれば何度でも人は立ち上がれる。ただ、命あってこそ。今は何よりも命を守る行動を。

∆ページの先頭へ

2022/8/9 火曜日

 

 始まりを告げる花火が上がると、一斉に囃子(はやし)の音色が鳴り響く。躍動的な太鼓と鉦(かね)の音に「ラッセラー、ラッセラー」の掛け声が加わり、ボルテージは最高潮に。奏者やハネトの後ろには迫力ある武者がにらみを利かし、見る者を魅了する▼青森ねぶた祭が2日、3年ぶりに復活し、7日まで県都・青森市を“熱く”盛り上げた▼今年は参加者が密にならないようねぶたの運行方法を変更し、ハネトに人数制限を設け、事前登録制にするなどの新型コロナウイルス感染防止対策を実施した。例年とは異なる開催方式で、人出がどうなるかと心配したが、連日多くの人出でにぎわいほっとした▼実行委員会によると、会期中の人出は105万人。コロナ禍前に比べればだいぶ少ないが、県都の夏に活気を取り戻したことは今後の地域経済活性化に向け、大きな一歩になる可能性はある▼冬夏言子は青森支社に赴任して間もなく6年になる。「あと何回、支社からねぶたを見ることができるのだろうか」。武者たちの行進を眺めながら、ふと思った。

∆ページの先頭へ

2022/8/7 日曜日

 

 1週間前、週間天気予報に並んだ傘マークを見て大きくため息をついたのを覚えている。弘前ねぷたまつりの初日から期間を通して降雨になる見込みだった▼弘前ねぷたと青森ねぶたはきょう閉幕を迎える。ふたを開けてみれば、2日の祭りが雨に当たったものの、おおむね運行は天候に恵まれた。連日びしょぬれになるのを覚悟していたことを思えば奇跡と言ってもいい▼新型コロナウイルス対策を講じた上での祭りは、人が密接する本来の姿からは離れたもの。「心からは楽しめないのでは」と不安な胸中を語ったねぷた衆もいた。しかし3年ぶりに復活した祭りでは、見る者、担ぐ者、奏でる者すべての表情に充実感があふれていたと、冬夏言子には見えた▼祭りを待ち望んできた、津軽の人々の気の高まりが雨雲を晴らしたと信じたくもなる。祭りは青森の夏に欠くことができないと改めて思うところ▼「ねぷたが終われば秋が来る」とは言われるが、今年は300年祭の特別運行が月末に控える。今しばらくは夏の熱風に浸っていたい。

∆ページの先頭へ

2022/8/6 土曜日

 

 8月6日。まず頭に浮かぶのは米国による広島への原爆投下。世界で初めて核兵器を実戦使用した愚挙から、世界がいまだ緊張状態にあるのは悲劇だ▼悲しい出来事といえば、津軽地方では1975年に岩木山百沢土石流災害があった。8月5日からの雨で翌6日未明、岩木町(当時)の百沢地区で土石流が発生。17戸が全壊し死者22人、重軽傷者31人という未曽有の災害となった▼遺族らによる国の防災体制の指導監督と県、岩木町の管理体制をめぐる行政訴訟は提訴まで3年、青森地裁弘前支部の判決まではさらに12年の歳月を要した。結果は「人災」の主張が通らず、原告の敗訴に終わった▼先日の大雨は本県初の線状降水帯により、津軽各地に冠水などの被害をもたらした。たたきつけるような降り方に百沢土石流災害時の記憶がよみがえり、濁流が堤防を越えそうな光景には恐怖を覚えた▼自然の猛威の前に人類は無力かもしれないが、過去の惨事を教訓に減災へつなげるすべは知っている。「一人ひとりの備え」は時代を超えたキーワードだ。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 ... 397

当サイトでは一部、Adobe PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード