冬夏言

 

2017/2/25 土曜日

 

〈髪のみだれに手をやれば 赤い蹴出しが風に舞う〉。ギターの切ないメロディーが耳に残る、星野哲郎さん作詞、船村徹さん作曲の「みだれ髪」である▼美空ひばりさんが長期入院から復帰した記念作。船村さんは、病み上がりのひばりさんにサビで裏声を使う、切ない高音の曲をあえて提供した▼多くの演歌の名曲を生んだ船村さんが16日、84歳で亡くなった。通夜の晩、東京・錦糸町の居酒屋に悲しい「みだれ髪」が響いた。歌い手は南部町出身の演歌歌手琴けい子さん。船村門下生の一人だ▼琴さんは長年、演歌で刑務所を慰問している。そのきっかけを作ったのが船村さんだ。慰問で最後に歌うのは決まって「のぞみ(希望)」。作曲はもちろん、作詞も船村さんが手掛けた。ギターの切ない音色はどこか「みだれ髪」を思わせる。〈ここから出たら母に会いたい おんなじ部屋でねむってみたい〉。歌詞はまるで受刑者のために書いたようだ▼恩師の通夜に出ず、営業に回った琴さん。「みだれ髪」や「のぞみ(希望)」など、「船村魂」を気丈に歌い上げた。やはりプロである。

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2017/2/24 金曜日

 

「旧制弘前高校」という単語を久しぶりに見掛けた。同校出身で、映画監督の鈴木清順さんの訃報に触れてのことだ▼旧制弘高といえば、バンカラの校風。映画人としての鈴木さんも反骨の人だった。1967年の監督作品「殺しの烙印」を日活の社長に酷評された上に、専属契約を解除され裁判で争った。数年で和解したものの、大手映画会社に敬遠され仕事が減った時期も▼ただ、その後も実力で映画界にとどまったのが一流の証し。77年に復帰し、程なく国際的にも高い評価を受けた「ツィゴイネルワイゼン」を手掛け、2005年上映の「オペレッタ狸御殿」まで活躍を続けた。とにかく、極彩色の映像美の印象が強い▼独特の風貌を生かした性格俳優でもあった。ドラマ、映画、CMにたびたび出演。不思議なキャラクターのおじいさん役で、余芸にとどまらぬ存在感を示した▼名声を確立してからの監督作品は多くないが、それゆえにDVDでもチェックしやすい。70年前、肩で風切って弘前の街を歩いていたという大監督の世界観を、いま一度この目に焼きつけたいと思う。

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2017/2/23 木曜日

 

“桜咲く”の声があちこちから聞こえる。春の桜ではなく、合格の喜びの声である。県内私立高校の発表が先日あり、親戚や友人らから「まずはひと安心」の笑顔が見られたのはうれしい限りだ▼2017年度私立高校全日制の募集人員は4100人で1万195人が受験。平均倍率2・49倍だが、1万96人が合格した。ほぼ100%の合格率とはいえ、当事者の喜びは大きいに違いない▼今年は近所の子も高校受験で、遅くまで勉強している様子がうかがえる。仕事を終えて帰宅し部屋に明かりがついているのを見るたびに、頑張っているなとつい応援したくなる▼本県の合格発表が番号で表示されるようになったのは1996(平成8)年3月から。個人的に名前が分からない味気なさを感じるのは当時も今も変わりなく、何より相手に「合格しましたか」と聞くのは気が引ける▼受験しているのに合格か不合格かを知り得ないのもまたもどかしいものだ。ともあれ、県立高校の入学試験は3月8日、合格発表は同14日。再びの“桜咲く”を願って受験生のもうひと踏ん張りに期待したい。

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2017/2/22 水曜日

 

津軽では、雪が耳の穴に飛び込んでくる。横殴りの強風の中で傘を差すのは歩きにくく、フードは手で押さえないと脱げてしまう。それらを踏まえると、女性の防寒着としてかつて使用されていた角巻きは、かなり実用的だ▼今となっては、手に入れることすら難しい。五所川原市金木町で地吹雪ツアーをしている観光カリスマ角田周さんは、ツアーで観光客が使用する角巻きを確保するため、たんすの奥に眠る角巻きを譲ってもらうのに奔走したと聞く▼目の詰んだ厚手の毛織物はずっしり重く、寒風を通さない。雪原で角巻きをまとった観光客から「とても暖かい」と驚きの声が上がった場面を見たことがある▼現代の服装に合わないとされるのは承知だが、弘前実業高校の生徒たちが毎年手掛けるデザイン角巻きを見るたび、角巻きが再び製造される日が来ないかと期待してしまう▼「泣きじゃくる子へ角巻の風切り羽」(安藤五百枝)。母親が羽のように角巻きを広げ、泣く子を包み込んだ場面だろうか。身も心も温めた雪国の角巻きを思い、きょうも耳を手で覆いながら津軽を歩く。

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2017/2/21 火曜日

 

「高校生からの挨拶(あいさつ)、とてもすがすがしい気持ちになりました。この挨拶を聞いただけでも弘前に来て良かったと思いました。同時にこの様(よう)な礼儀正しい高校生がいる日本に誇りをも感じました」▼先日、東京都新宿区在住の男性から届いたメールでの投稿である。旧交を温めるため来弘し翌朝、ホテルの窓から眺めた岩木山の美しさに誘われ、弘前公園を散策した際の出来事▼雪灯籠作りをしていた弘前南高校生とみられる数人から「おはようございます」と大きな声で挨拶され、感激したという。投稿者は「良い景色を見て回るのもいいですが、人から感じることの方がインパクトがあり心に刻まれます」とも記した▼仏教はカネがなくてもできる「無財の七施」を説く。この中に優しい言葉をかける言辞施(ごんじせ)、ほほ笑みで接する和顔悦色施(わげんえっしょくせ)がある。今回の高校生の行動は、言辞施に当たる善と言えよう▼歴史、自然といった観光資源に恵まれる弘前市。その魅力をブラッシュアップし、訪れる観光客に「また来たい街」を印象付けるため、市民一人ひとりが笑顔で挨拶する運動を推奨したい。

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